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【展覧会 予習と復習】♯7 板橋区立美術館「椿椿山展 軽妙淡麗な色彩と筆あと」

R5.3.2 公開
R5.3.30 更新

【予習】 品の良い江戸絵画。春の訪れに、花を愛でましょう。

長い冬を越え、もうすぐ春がやってきますね。みなさん、この冬はいかがでしたか? 私はというと、この冬はなんだか妙に長く感じました。忙しかったからでしょうか? 燃料費の高騰も厳しく、春の到来がこれほど待ち遠しいのも久しぶりです。

春といえば、展覧会シーズン。各地で、「勝負ネタ」の展覧会が開催されます。
今回ご紹介するのは、その中でもとくに春を感じられるであろう東京は板橋区立美術館で開催予定の「椿椿山展」。前回の青木木米に次いで、読みにくい名前が続きますが、これは「つばき・ちんざん」と読みます。その品よく可憐な絵の世界をのぞいてみましょう。

💻 展覧会情報

令和5(2023)年3月18日(土曜日)~4月16日(日曜日)
前期:3月18日(土曜日)~4月2日(日曜日)
後期:4月4日(火曜日)~4月16日(日曜日)

開館時間 午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 月曜日観覧料 
一般650円、高校・大学生450円、小・中学生200円
※土曜日は小中高校生は無料で観覧できます。
※65歳以上・障がい者割引あり(要証明書)

公式サイト→

🚆 板橋区立美術館へのアクセス方法

駅から徒歩→
都営三田線「西高島平駅」下車 徒歩約14分
東武東上線「下赤塚駅」、東京メトロ「地下鉄赤塚駅」下車徒歩約24分

駅からバス→ (詳細は美術館サイトにて!)
路線バス(所用時間約10分、国際興業バス)
【東武東上線「成増駅」から】
北口2番のりばから(1時間に1-2本程度)
「(増17)区立美術館経由 高島平操車場」行き「区立美術館」下車
【都営三田線「高島平駅」から】
西口2番のりばから(1時間に1-2本程度)
「(増17)区立美術館経由 成増駅北口」行き「区立美術館」下車
【東武東上線「成増駅」から】
北口1番のりばから
「(赤02)赤羽駅西口」行き「赤塚八丁目」下車、徒歩約9分

👉アクセス指南👉

都内にあって、とにかくアクセスが悪い。その三指に入るでしょう。どこの駅からも遠い。
ではバスを…と思いきや、これもかなり本数が少なく使い勝手が悪い。しっかりと時間を読み込んで、計画的に鑑賞すればバスも便利かもしれませんが、僕は「帰りの時間が決まってる」のが苦手なので、駅から歩いたことしかありません。
東武東上線「下赤塚駅」、東京メトロ「地下鉄赤塚駅」はほぼ同じ位置。そこから徒歩で24分とありますが体感では(20代の私で)30分近く、アップダウンも多くて全くお勧めできません。
都営三田線「西高島平駅」からでしたら、割と平坦な道のりで、存外大変ではありません。

🍔 周辺情報&ランチ情報

住宅街ですから、あまり周辺の施設には期待しない方がよいでしょう。
赤塚の方ですとまだにぎやかで、麻婆豆腐の名店「芝蘭」などランチのお店にも期待できますが、西高島平だとコンビニすらありませんので要注意です。ただし、美術館の至近距離にそばの「ひびき庵」があり、良いお店のようです。私は未体験なので、レビューを聞いてみたいところ…!
この季節、美術館の周辺で見逃せないのは隣接する公園の桜かもしれません。美術館が位置するのは赤塚城址に設けられた公園の内部。西高島方面から美術館にアクセスすると、桜の並木を見ることができます。展覧会とあわせて楽しみましょう!

🕵️‍♀️ こんな展覧会

椿椿山といえば、美術史の世界ではビッグネームですが、おそらく一般の知名度はほとんどないでしょう。そして作品の画像を見てみても、「奇想」などと呼ばれるクセの強い絵画ほど、印象には残らないかもしれません。
では、どんな楽しみ方をすればよいのでしょうか?

椿山の画には、展覧会のキャッチにもなっているように、「軽妙淡麗」という言葉がぴったりです。そこには、刺激的な部分はほとんどありません。さらりとした、淡彩でそれでいて華やかな画面が特徴です。観る者の視線を一身に集める「奇想」でなく、掛かっていると「なんかいいな」というところを入口にして、見ているうちに心が穏やかな気持ちになる。そんなstand by me な良さがあると思うのです。
椿山はそうした画風を、最初の師である金子金陵からよく学んでいます。金陵さんの絵も、淡々としていて、それでいて小さな華やかさがある。また、椿山の兄弟子であり、のちの師になった渡辺崋山にも大きな影響を受けていて、崋山ー椿山に連なる絵師の系譜は「崋椿系」と呼ばれています。

椿山は、実はプロの絵師ではありません。下級役人、つまり武士でした。この時代、武士がセミプロの絵師になることは珍しくなかったのです。椿山の絵は、売り物ではありませんでした。むしろ、武士としての理想である高潔さを表現した花鳥画を残しています。そんな飾らない魅力を体感してみてください。

🔎 注目作品

椿椿山「歳寒三友図屏風」個人蔵

椿山の代表作であるこの屏風。墨で全面を塗り、白く塗り残した部分で松、竹、梅をあらわしています。
この三つの植物、日本ではおめでたい松竹梅として知られていますね。しかし本来は中国文学の世界で、寒さに耐える植物=逆境に立ち向かう高潔さの象徴として語られてきたものです。
無事である椿山の矜持が現れた一作と言えるでしょう。

【復習】春の心地よい一時

さて、展覧会を拝見しました。
椿山という人は、やはり上手いですね。第一展示室では、清風の清廉な花鳥図が、第二展示室では、冴え渡るデッサン力の肖像画を堪能しました。
いっぽう、山水画はかなり苦手かも?という印象を受けましたね。

ところで、前期で特に素晴らしかったのはポスターにもなっている「玉堂富貴・遊蝶・藻魚」の三幅対。明石侯の注文で制作されたことが資料から追える基準作なのですが、これが頭抜けて素晴らしかった。出来栄えでは、間違いなく今回NO.1のお品でした。中幅の花も素晴らしいものでしたが、左幅の遊蝶図が圧巻でした。精緻に描かれつつも、ひらひらと舞う動きも再現された蝶。靄が立ち込める空気感まで、見事に描き出しています。日本近世の昆虫画の代表と言ってもいいような、まさに抜群の作でした。

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