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ハイヒール人生を生きたい

数年前に別ブログに載せた記事ですが、
よく靴の事に関して御質問を頂くので
加筆修正してこちらにもアップさせて頂きます。




正確には靴の事というより、
靴を作って頂いた職人さんとの思い出話です。
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「会いたい人には会っておこう」


私はハイヒールが大好きです。


でもハイヒールなんて履きこなせない。
9センチとか10センチとか、何それ?。
履けるわけないでしょ~!5センチでも無理なのに!

でも、履きたい気持ちがずっとずっとありました。


家族等、私の周りの女性でハイヒールを履く人はいませんでした。
大人になってもハイヒール肯定派には会いませんでした。



歩き方や足のカタチは生まれ持ってのものだから、もう治らないという考え方をよく耳にしました。韓国で住み始めてもそれは同じでした。



でも私はどうしても「ハイヒールのある人生」を生きたかった。
だってただ素敵だから!ハイヒールって美しい



背を高く見せたい?(身長170㎝です要らない)他の人より目立ちたい?(それもない)そーいうんじゃない!ただカッコいい!って思うからそれだけ!


でも身体を大切にしたい自分にとっては
足が痛くないのが良い。我慢しないのが良い。
カッコよくて快適なのが良い。
片方だけじゃなく両方満たすのがいい。「美」と「健康」。健康の支えのない美は脆い。



と大きく願っていたある日、偶然ネットで知ったのが
大阪の伝説のハイヒール職人中野さんでした。

 オーダーメイドパンプス のラビアンドリーム (labiandream.com)(注:現在こちらのお店はございません)


こちらのお店のハイヒールは身体を調整してスタイルアップするという。そういう靴あるんだ!そんな靴を履きたかった!
 



2016年辺り、私は日本への帰省に合わせて電話予約し、お店に伺い足の型を取ってもらいハイヒールを作ってもらいました。おっちゃんって呼んでな、という気さくな朗らかな方でした。お話がものすごーく面白い。



作ってもらったハイヒールは、履きやすくて足に痛みもなく、背筋がすっと伸びる感じが気持ち良くて。もう嬉しくて嬉しくて、当初は家の中でまで履いてました。我が家の床が傷だらけなのは私のせいです。間違いなく。夫スマンな!



ちなみに、この中野さんへの電話のファーストワンコールが
靴を作ってもらえるかどうかの面接です!
 


7万人の足を見た、といわれる中野さん
この客嫌やねん」と思ったら、
もうアカンそうです。 「声聞いたら分かるねん」と。



私はただ中野さんの存在が嬉しくて嬉しくて。
「足が痛くないハイヒール?なにそれ絶対履きたい!」
一ミリの迷いもなく「私の靴つくってくださーい!!お願いします!」
返答は「いつでもおいで」でした。電話口の向こうの笑顔が見えるような朗らかな優しい声でした。



私の知り合いは、電話中に一瞬迷ってたら、、もう切れてたそうです。。



ご本人曰く「つくってあげよう思うても、そういう人には、ホンマに作られへんねん。作っとる間中、 その人の事考えるわけやから。
こんな靴はいたらあの人似合うやろうなあ、カッコええだろうなあ
そう思いながら作っとるから
この人嫌やな思たら、もう作られへんねん。」

という事で、そのあたりの気持ちに正直な方だったと思います。


元々高級オーダー靴を作ってて、お客さんは常にいたそうです。
その仕事の仕方に疲労を感じたようで、好きな人の靴だけ作るスタイルに移行したそうです。



どういう靴を作るかは中野さんと相談です。
中野さんの「靴スクラップブック」があって、レディガガみたいなセレブや芸能人の靴やパリコレみたいなスナップを中心にばさっとまとめられていました。こちらの欲しいものをいうと、それを見ながら
「あんた、これがええ!」とスパッと。
私は中野さんが選んでくれたことが嬉しくて
「はいはい!それにします~!」
一度も揉めたことがありません笑 すぐ決まった。



「ヒール10㎝と7㎝どっちにしよう~」
「10㎝が一番綺麗にみえんねん、スタイルアップにも一番効果があって身体にバランスがええねん」
「はい!それでお願いします!」


靴に関する色んな話もしてくれた。


「太いヒールあるやろ、チャンキーヒール。あれな、長時間履いとったら身体がものすごい疲れんねん。細いヒールの方がいっそ疲れへんねんで」


「バレエシューズってあるやろ、あれな、まずは歩き方がちゃんと出来てないとあかんねん、そっからあかんねん」


「靴はくるぶしの下のとこが一番大事やねん、おっちゃんも最初はそれが分からんかったんやけど、この頃絶対ココや~!って思うねん」


「この仕事しとったらな、、オカマの人から靴作って欲しいいう電話がくんねん、おっちゃんの靴は女の人を支えてあげるために作っとんや。
男は全部断んねん!女の人の身体はな男に比べて、ここの部分が、、」


「女の人の中でも『おばちゃん』、ホンマ嫌いやねん」


靴もええけど、、私おっちゃんの話が、、好きやねん笑



靴に話を戻します笑
中野さんの作る靴を履くと足の形が変わるそうで、
私の脚も、どんどん変わっていきました。

 

まず踵の肉がするっと落ちてきて、最初に作った靴はすぐにパカパカに。お店に持っていくとサイズを直してくれました。
「ちゃんと履くと、大体こうなんねん」


足みたら性格がわかるそうです。
私は一度も性格を指摘されませんでしたが、うちの娘がされてました。じっと膝小僧だけを見つけて「あんた頑固やな~!」



「男の靴はつくらん!」と言いながらも、当時高校生だったうちの長男の靴を見て「にーちゃん、その靴歩きにくないか?脱いでみ」と、その場でささっと調整を入れてくれたこともありました。



早く着きすぎてお店がまだ空いてなかった寒い日がありました。
向かいの肉屋さんが私を手招きしストーブの前に座らせてくれて温かいお茶を出してくれました。親切~涙!



「向かいのおじいさんの靴屋さん、なんかしょっちゅう女の人が出たり入ったりしとるけどどういう店?」
「一流の靴職人さんなんですよ!お客さん達も県外から飛行機乗って靴作りに来るみたいですよ。北海道とか東京とか。私も海外からだし」
「ええ~!そんなすごい人やったん?知らんかった!」
そんな話をしてたら、中野さんがチャリに乗って到着したり。


 

その後中野さんとは、数年のお付き合いをさせてもらいました。
最後に作ってもらったのが2019年の頭。
その時でも、もう新規の客は受けないとおっしゃってました。奥さまが亡くなられたり、ご本人の体調も芳しくないと。何しろ既に高齢でいらした。



 お客さんのブログ記事は2019年秋までありましたので

 【ラビアンドリーム 64歳 母のオーダメイドパンプス】 | 【only one life】小野寺帆波の公式ブログ (ameblo.jp)



コロナ中お元気かな、と思っていたら中野さんのお弟子さんのブログで
2020年に中野さんが亡くなられた事を知りました。
ご冥福をお祈りいたします。



ちなみに、2019年秋のブログのお写真からも、
既に調子が大分よくなかったのかなと。なんだかもう服装に力がない。

 

中野さんはお洒落な人でした。
私の出会った頃の中野さんは上下真っ赤のスウェット!に花柄のキャップ

 伝説の靴職人、中野泰三氏は、やっぱりすごかった!その2 | アラフィフ・アラカン女性の美と心のブロック解除!幸せアンチエイジングを実践するマインドブロックバスター (ameblo.jp)

 

作業着の日もあったけど、基本お洒落な方でした。
落ち着いたお洒落というより攻めてる感じのお洒落でした。

でも派手派手しいというわけでもなくどこか品が良くて。
靴の入った宅配の送り状の字はいつも丁寧でした。


この画像の赤いハイヒールも、中野さんに作ってもらったもの

2022年の頭に撮影した写真。この赤い靴は中野さんが「あんたにはキャサリン妃みたいな靴が似合う」といって選んでくれたデザイン。


あんた、脚の形綺麗になったな、って言ってもらいたかったなあ。(ホンマこんな足じゃなかったから)



今やハイヒールを履ける足が出来たので中野さんの靴じゃなくても
既存のブランドのハイヒールでも履ける。マロノブラニクだってジミーチューだって履ける!(ルブタンはちょっと幅が苦しい!)

 
だけどやっぱり中野さんの靴は心地よい。もっと生きていて欲しかった。



コロナが収まって、気楽に日本に帰れるようになったら
この写真もって、次の靴を作ってもらいに行こうと思ってたけれど
中野さんはもうこの世にいない。


人がこの世を去るのは当然の事。私もそのうちそうなる。遅かれ早かれ。だから、、会いたいって思ったら会える時に会っておこうと思います。


伝説の靴職人が生きてる時に靴を作ってもらった。それだけで素晴らしい!手入れしてこれからも大切に履こう。中野さんの作ってくれた靴。



中野さんのお客さんは靴も作って欲しいけど、ただ中野さんに会いたいって人が沢山いたと思う。私もそうだった。

 

中野さんは光ってた。年はいってても、中身が赤ちゃんみたいだった。赤ちゃんなのにおじいさん笑  魅力的な人だった。



このサンダルはスペインメーカーのダンスシューズ
中野さんに調整してもらってより履きやすくして頂いた。


中野さんの靴はもう作れないんだなあ、と思っていたけれど、お弟子さんが技を継承してる。生前中野さんは「もう弟子の方が上手い」とカカカと明るく笑ってました。次に大阪行ったら、弟子さんを訪ねていこうと思います



おっちゃん、成仏してな~!と言わなくても、生きてる時から軽い人って亡くなったらすぐに飛んでいっちゃう。銀河系の外れへとさようなら!


ま、でも会いたい人には会っておこう!って思います。

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以上です。そしてこの後2023年に
中野さんのお弟子さんに靴をつくってもらいました。
またそのことも書きますね。



ありがとうございました。

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