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客の四桁とスーパーレディ

ごく近所に使い勝手の良いスーパーがある。(韓国の田舎町在住です)大都市のeマートやロッテマートとは比べものにならないけど、肉も野菜も果物も魚も揃ってる。パン屋併設で午後10時まで開いてるのでとにかく便利。



何度も経営者が変わり一時廃れたけど、10年位前の再リニューアル後は品揃えが良くなった。その後コンビニか冷蔵庫代わりに使ってる。



レジで計算してくれるのはパートの奥さん達。
古過ぎる客の私は新人パートさんが来ると「あ、新しい人!」と思う。この期間、何人ものパートさんの変化を目の当たりにさせてもらった。レジ台についたばかりの時とベテランになった後では態度が大分違う。



入ってすぐの頃は、どの人も知り合いに挨拶するようにいちいち
「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と言う。
で、段々顔がぶっすーっと不機嫌になり
半年も続くとひとかけらの笑顔も出なくなる人が多い。
買い物後の「ありがとうございました」なんて言葉もなくなる。




お年寄りの多い田舎のスーパーのレジは実にストレスフルで
そりゃ不機嫌になるわなと思える。ちなみに韓国の商店で清算後のお客さんに「ありがとうございました」が無い店は、田舎ではそんなに珍しくないと思う。その辺はかなり日本と事情が違う。



そんな中で働き始めとあまり態度が変わらない女性が二人いた。
「ありがとうございました」が無くならないずっと感じが良い人。この二人の女性には他にも共通点があった。



そのスーパーには利用額に合わせた独自のポイント制度があった。(他のお店もそうだろうけど)お客さんには各自四桁の数字がふられている。品物の清算時にその都度レジ係にその四桁数字を伝えるとポイント加算してくれる。


なのでいつもレジのパートさんが聞いてくれる。
「ポイント番号何番ですか?」
「〇〇〇〇です」
というやり取りを経てポイントが加算される。
四桁の数を口頭で伝えるのは何度やってもちょっと緊張する瞬間。韓国語大丈夫かな?と。



ところがこの親切なレジの奥さん二人は、常連客の四桁をほぼ暗記していた。(または暗記しようと努力しているのが分かった)
こちらが何も言わなくとも顔を見て勝手に四桁を押してくれる。

その番号が合致しているかどうかは客側の液晶に表示される。いつも合ってる!客の顔と四桁数字が結びついている!



先日も何も聞かずにささっとポイント加算してくれたので
「すごい!なんでそんな客の四桁なんて覚えられちゃうんですか?
頭良いですね!」と感嘆して言ってしまった。パートの奥さんは笑ってた。



夜に豆腐買いに走った時、その暗記組のもうおひとりが
四桁を押したが数字一つ間違ってた。悔しそうに聞いてきた。
「ああ!違った~!何番でしたっけ?」
「〇〇〇〇番です。でもすごいわ!三つまで合ってましたもの。
どうしてそんなに覚えられるんですか??」
「一つ間違っちゃったじゃない~」
「それでもすごいわ~!」



ということで店に余裕がある日のレジでは四桁が合ってたら「すごい~!」間違ったって「惜しい~!」と軽くやりとり。合っても間違っても、結局はコミュニケーションが成立。


お客さんの四桁を覚えたところで、多分彼女たちのお給料には変動がない。でも同じように同じ時間仕事するならお客さんの顔も覚えて、ゲーム感覚で常連さんのポイント番号を覚えてる人の方が、働いてても楽しいんじゃないかなと思う。客のこっちだって感じのいいレジの人に列に並びたい。



彼女達の家がどことか、家族構成とか知らない。だけど狭い町なので、今後どこかでこの人達の御家族に出会う事もあるかもしれない。この人達の身内だったら良い人たちなんじゃないかなって勝手に思いこんでしまいそう。向上心のある余裕のある人なんじゃないかって。こんな感じで、時々スーパーのレジでパートの奥さん達にほっこり。



しかし同じスーパーでも、癒されるばかりでもない。
パン屋の奥さんにムカついた事もあった。

買ったパンを食べようと手で割ると長~い髪の毛が出てきた。
パン生地の中に焼き込まれていた。
その日のうちに店に持って行って現物を見せた。
パン屋の奥さんは「うちのせいじゃない」とぐずぐず言う。「このとおりパン生地の中に毛が入ってるんですよ!後から故意には入れられないっ!」それでも交換にも返金にも応じてくれず気分悪い。 

交渉しても時間の無駄だと見切りをつけ、でも腹が立つのでスーパーの店長を探して事情を話し弁償してもらった。そんなこともあって当時はこんな店潰れろ!と思ったが、近くにパン屋もないせいかずっと店はある。
随分前のことなので、そんなに腹も立たなくなった。


「ほっこり」もあれば、「ムカつき」もあり、
その辺も品ぞろえが多様な店だと言えるかもしれない。あまり従業員さんが辞めない店なので、働きやすいのかなと思う。店員さんがすぐやめる店ってある。それこそ四桁数字なんて覚える暇もなく。



昼前に切れた調味料を買いに走ったら、お店は空いてて店員さん同士が世間話してて楽しそうだった。暗記組の奥さんがレジにいたけど私の買った牡蠣ソースはポイント対象外みたいで四桁の入力は無く、そういえば今日は「ありがとうございました」も無かったかもしれない。



昔の自分だったら「お客にありがとうも言わないのかい!まったく!」と湯婆婆みたいに吐き捨てたかもしれない(心でね笑)
でもなんだか今はもう客への「ありがとうございました」を自分も求めてもない。それにお昼ご飯前にあった事は「昼前ってお腹空くわよね、ぼーっとしちゃうよね。人間だものね」で特にひっかからなくなった。


この暗記組の奥さんたちへの私の好感ポイントがたまりすぎていて、
今後何かあっても特に腹も立たない気がする笑



人に対して何があっても基本的に感じ良く接する事が出来るって、一見地味にみえるけどすごいスペックなのかも。
あ、彼女達はスーパーのスーパーマンならずスーパーレディなんだな!
たゆまずコツコツと仕事をこなして日常を照らす人が、一番すごいんじゃないかと思えてならない。       ありがとうございました。























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