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ロッカーの天使、辻井伸行さんのソウルコンサートで

「コインロッカー」は今の時代もはや「コイン」で使えないのが辛いアラカンです。硬貨を入れて施錠できるタイプのロッカーは減少の一途。ふと気が付くと、スマホで決済し暗証番号を入力して使うタイプのロッカーばかりになっていませんか?



日本の事情は良く知りませんが、ソウルの地下鉄駅のロッカーは、ほぼ上記の形になっています涙!使いづらいったらありゃしない~。しかし交通カードで簡単に決済できるタイプのロッカー等も時にはあり、なんとかしのいでいました。大きな駅やバスターミナルには昔ながらの有人の「手荷物預かり場所」があるのでそこを利用したり。



先日ソウルの江南にある「芸術の殿堂」という大きなホールを利用した時の事です。辻井伸行さん初のソウルコンサートということで地方から喜んで駆けつけてました。


会場に入ろうとしたら、私の提げたキャリーケースを見た若い係員アガシが「それロッカーに預けてください、持ち込めません」と言う。同行の友人とロッカー前に移動した。ところがそのロッカーはスマホで操作するタイプのデジタルロッカーだった。ロッカーに貼ってあるQRコードで誘導される先で指示に従い決済を済ませ暗証番号を入れて開ける。



分からないけどとりあえずやってみた。だってこれ預けないと入れてくれないんでしょ?なんでもやります。入れてください!しかし決済のあたりでコケた。銀行振込決済を選んで進んだが、〇〇ペイというのが無いと払えないと出た。うえ~ん、〇〇ペイ無い!と一旦放棄した私に、友達が「自分がやるよ」と自分のスマホでやりはじめてくれた。え~!ありがとう。



しかし彼女も途中で分からなくなった笑 ともかくいつも優しい気持ちがありがたい人!行き詰った50歳超えの女二人が開けられないロッカーを前に日本語で喋ってたら、30代位の男性が、日本語で優しく喋りかけてくれた。「大丈夫ですか?」彼のお友達はこともなげにロッカーを開けて荷物を入れていた。「〇〇ペイがあると簡単なんですけどね」そうらしい。



〇〇ペイもない私らは、彼に手取り足取り教えてもらい友達のスマホでついにロッカーを開けることができた!絶対開かなさそうだった扉が開いたのが馬鹿みたいに嬉しかった。うそでしょ~!大げさだけどまるで天照大御神の岩戸開闢か!位に。途中で彼の日本語より私らの韓国語の方が相当達者なこともお互い分かったけど、なにしろデジタルロッカーの前ではこちとら「赤ちゃん並み!ばぶー」!韓国語だけ出来てもロッカーあきまへん~。



公演時間が迫ってるのにゆっくり丁寧に教えてくれた彼は、笑顔でお友達と去っていった。その場でお礼は伝えたものの、今やどこのどなたかも分からない。お茶の一杯もご馳走できなかった。あれは芸術の殿堂に舞い降りた天使だったのか?日本人アジュンマが困ってる姿を見かねて話しかけてくれたのだよね。なんていい人だったのだろう。あの時、私の気持ちは辻井伸行さんにしか向いてなくて電話番号も聞かなかった。手落ちだった。ようやくそういうことを思ったのも再びロッカーを開錠した時だった。




でもこんな気もしている。あの彼、日本で住んで現地の人に優しくしてもらったことがあったのじゃないかって。だからああいう時さっと「なにかお力に?」って。今まで教えた日本語の生徒さん達(日本語特に上手な人達)からそんな話をいくつも聞いた。言葉も出来ないまま東京に行って語学の学院まで自力でいかないといけなくて、分からなくて途方に暮れてたら、親切な日本人が建物の前まで連れてってくれた、みたいな話。




どこかの親切な日本人が愛を先払いしてくれてたのを、あの日私達がもらったのじゃないかなって。道案内ならず、デジタル道案内笑
本当の所は分からないけど、親切心+韓国人の積極性が良い形で出てる人だった。思ってても言い出せなかったら他人に伝わらないから。最近の韓国の若者が礼儀や情が無いとかいうけど、いやあるよ!たっぷりあると思う礼儀も情もセットで



何故かこの古い歌を思い出した。君の瞳は一万ボルト、地上に降りた最後の天使~笑 一緒にロッカーに頑張ってくれた友達も天使に見えた。彼女の瞳の色は東洋人にしては薄い。鳶色の瞳ってこんなかなとも思えたから。
とにかく色んな人の助けを受けて無事に念願のコンサートを楽しめたありがたい日だった。


私は平素、全羅道という田舎で住んでいる。お年寄りの多い地区だ。ロッカーでヘルプしてくれた彼とはレべチだけど、なんと!ここではこんな私がデジタル強者大笑 
近所のあるハルモ二(おばあちゃん)はスマホに困ったら、私にスマホを持ってくる。一番多いのがカメラ機能を使う時、カメラのレンズ方向がひっくり返ったのを直すだけ、というあれである。笑ってしまうくらい簡単なあれだ。でも分からない人には分からないのだ。私も出来ない事が多いので、ハルモ二がスマホに「分からない!」という気持ちだけは切実に分かる。



あの立派な「芸術の殿堂」ホールは、身体障碍者の方やお年寄りも利用するだろうから、他に荷物を預ける方法もあったのじゃないかと思う。時間に余裕があったらきっとそっちに向かってた。でも切羽詰まったあの時、たまたまそこにいたやさしい彼の親切を受け取った事が、辻井伸行さんのコンサートに更に良い思い出を添えてくれた。コンサートに含まれていないオプションもらった。流石に辻井伸行さんのコンサートに来る人は質が高い!とまで思いそう笑 この話、辻井伸行さんに伝えたい。どなたか伝えてください~!あなたのソウルコンサートのロビーで開演直前にこんな暖かいことがあったのですよって笑 そんないい人があなたのコンサートを聞きに来てたのですよ!って、知らせた~い。



君の瞳は一万ボルト~地上に降りた最後のてんし~
この歌詞には金木犀が出てくる。秋の歌だったようです。
金木犀の咲く道を、銀色の翼の馬で駆けてくる

金木犀が好きな方は是非このエッセイお読みください!金木犀に新しい記憶が上書きされるような内容です笑↑ 私はハルモ二とご縁が深いようで。

 大変ありがとうございました。


















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