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猫と関白宣言

夕食後に夫と散歩している。
一時間位ぶらりと。
その日気の向いた方角に足を向ける。



 
雲の加減によっては、
何とも言えない見事な夕焼けに出会える。
ずっと空を見ていたい程美しい。
夫がそこに深く感激しないので長居せず立ち去る。
 



家から徒歩10分くらいの所に
観光地になっている古城がある。
といってもヨーロッパスタイルの古城じゃなく
15世紀の朝鮮時代の城壁が残る城。
 


 
 
古城の前に藁葺きの家が数軒ある。
食堂やカフェとして使われていた建物で結構流行っていたけど、
郡が取り壊しを決めた今は無人の廃屋になっている。
 



 
先日そこを歩いていたら
えらくきれいな黒猫に出会った。
毛足の長く体躯が大きいお貴族様の猫みたいな猫。
おいでと呼ぶと来る。手を出すと舐める。
人に大事にされた人懐っこい猫だ。
首輪もなかった。捨て猫?
 


 
韓国でも都会の人が田舎の観光地に
ペットを捨てていくことがある。
シベリアンハスキーだとか、
ロシアンブルーが普通に捨てられてる。
この子もそのうちの一匹?


 
 
そこに夫の友人が3人通りかかった。
全員動物好きだったので、
皆でこの猫を触った。
「すごい綺麗な猫!」と誰もがいった。


 
三人とも現在家に既に犬か猫が居るということで
私たち夫婦に「飼いなさいよ」という。

 「何よりその猫はあなたの事が好きみたいよ、
見た目もどこか似てるし」
と一番愛猫家の女の人が私に言った。

本当にその黒猫は私にぴったり引っ付いて
私にだけ引っくり返っておなかを見せた。撫でて~!と。
 
 


 
連れていきたいのはやまやまだけど。
動物飼うのは責任が伴う。
「うん!飼う」と軽く言えない。
夫も私に何度も聞く「飼おうか?」
夫も迷ってる。
「この猫が好き!」だけは夫婦で同意。
 
 
 


 
 
一晩寝た翌日
「あの猫が今日も同じ場所にいたら、
本当に捨て猫だとはっきりしたら
もう一回飼う事考えよう」と思った。
 
 



 
うちで飼うにしても、よその愛猫家ほどは
気を使ってあげられないだろうな~。
私は猫を生活の第一には考えてあげられない、きっと。
うちに来るなら猫にもその事は覚悟してもらわないと!
 
 
 


 
自分の猫でもないのに気持ちの中で
もう勝手に名前をつけてしまった。「ルナ」
(多分セーラームーンの影響笑)
 
 



ルナ~!
お前をうちに引き取る前に
言っておきたい、事がある。
かなり厳しい事でもあるが、
おれのホンネをきいてくれ
 メロディはさだまさしさんの「関白宣言」




ああ、どうしよう、
私はその気になると、モノにでも動物でも
「うちの子になる?」ってつい軽く言ってしまう。
 そのときにルナが「にゃあ」と鳴いてしまったら、、
きっと両者契約成立、、、(すずめの戸締まり笑)
 



 
 
そういう風にしてやってくるものに
悪いものはないと思う。
もしそうなったらそうしよう、、と思って
次の夕方夫とその廃屋に向かった。
つまり「飼う」覚悟を半分決めていた。
 
 


 
その夕方もルナはそこにいて
前日と同じ人懐っこさで近寄って来た。
良くみると高いところに
水とキャットフードがおかれていた。
餌あげてる人がいるんだ!
 


 
 

車が入ってきた。
前にそこで商売をしていた主人夫婦だった。
まだ店に荷物を置いてあって
少しずつ取りに来ていたらしい。
なのでその度に餌だけ置いて
猫も店の荷物と一緒に店に置きざりだったたらしい。
 


 
 
夫が店のご主人に「この猫の種類って何ですか?」と聞いた。
ご主人は「知らない」と答えた。
元々ルナは観光地に誰かが捨ててった猫なんだろう。
このご夫婦はそんな捨て猫に餌をあげてたのだと思う。
私が知る限りこの店の裏に何匹も猫がいた。
もし私たちがルナを連れていっても
「ああいなくなったな」と思ったんじゃないかな。
本当に大事な猫だったら、
一日だって廃屋に置いてはいかないと思う。


 
 
綺麗な紫の花を咲かせた鉢が幾つもあって、
夫が「綺麗ですね」といったら
奥さんが小さいのをひと鉢分けてくれた。
 結局猫を連れてかえらず、
私たち夫婦は鉢を抱えて夜道を家に戻った。
正直、 残念と言う思いひとかけら、
ホッとした思いふたかけら、という所かな。



猫を飼うか飼わないかで勝手にどきどきした。
ルナは毛足が長いからどうしようとか
結局ぜーんぶ杞憂に終わった笑
脳内一人芝居だったな。


 
 
ということで
紫の花がうちの庭で朝の風に揺れている。
「それミントよ、葉っぱ食べられるから」と奥さん。



 
結局猫はうちに来なかったけど、
ルナに会ってから頭の中で、
私の快適と猫の快適の丁度良いを考えていた。
猫が来たとして、私はどういう状態が幸せなんだろう?と、
自分の幸せのバランスをとるために
エネルギーだけはいっぱい出したせいだろうか
家に無かったものが増えた。
それも素敵な紫の花が。

 


 
生き物の世話は本当に大変。
そこには「お休み」がない。
動物は毎日おなかが減るし毎日排泄する。
その世話は私には無理だし、
今後無理なことなんてしたくない~というのが
私の本当の気持ちだったので
 



あなたにはこのくらいが丁度イイのではないか?と
やってきたのが
風に揺れる紫のミントのお花だったのかなと。
何かに食べさせるより、自分が食べられる方がありがたい。
美猫のルナが、強く心を揺さぶってくれたけど
なんだかんだ考えながらも
自分の気持ちに正直でいられたな、で〇。
 

 
ルナ~元気でね。
きっとあなたはどこにいっても愛される、と思うよ。

 


ありがとうございました。
 


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