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踊るDNA

少し前、小学生の女子に誘われて、ダンス動画を見ながら「踊ってみた」ことがありました。

自慢ではないけれど、わたしのダンスのキャリアは子どもの頃の盆踊りと、中学校の体育でやった創作ダンスで止まっています。
親戚や友人のバレエの発表会に行き、やってみたいなと考えたこともありました。
ところがおとなの事情か、娘の才のなさを見抜いてか、家族はあまり乗り気ではなく、わたしの熱もすぐに冷めて実現しませんでした。

そんな「踊れないアラサー」はいきなり踊ろうと言われても、なんて!?と声が裏返りそうになる始末。
課せられたのは、ダイエットに効果絶大と言われるダンスでした。楽しげな音楽とともににこやかに笑うお姉さんが画面に映し出され、ハードな動きを繰り広げていきます。
さあ、見ながら一緒にやってみよう!と女子たち。


き、きつい!というか振り付けがわからないー!!


音楽についていけない。足の動きをなぞろうとすれば手の動きが結びつかない。

鏡を見なくても、自分の動きがお姉さんや小学生たちとかけ離れていることはわかります。
例えるならば、おそらく逃げまどうタコの動きに炭坑節の風味が加わった感じ。
あとで家族に見てもらったら、笑いながら「滑稽」の一言で片付けられました。

そもそも踊るという行為は、かつてのわたしにはハードルの高いことでした。
人前で踊るなんてもってのほか。音楽の授業の歌のテストでひとりずつ歌わされるのが嫌だったのと同様、身体での表現というものに免疫がなかったのです。

時はたち、習い事としてのダンスはすでにメジャーな地位を占めており、ジャンルも細分化しています。
生まれたときからネットや動画に親しんできた世代は、振付も自分で覚えられるのです。
もちろん人によるけれど、現代の小学生は踊ることに対する抵抗感があまりないのかもしれません。

思い出したのが、ある大学生が披露した「どじょうすくい」の動画です。
子どもの頃フィギュアスケートを習っていたという彼女は、やはり動画を見て独学で覚えたというその躍りを外国の子どもたちの前で演じたのでした。

首の動き、腰の落とし方、そして目の表情の豊かさ。どじょうをすくって嬉しい。失敗してがっかり、など。
情景がその場に浮かびあがるようで、子どもたちは釘付けになっています。
まるで無声映画を見ているような、ひとつの物語ができあがっているのです。完璧すぎる。
いや、今までどじょうすくいをちゃんと見たことがないから、何が完璧なのかわからないけど。
踊りの奥深さを実感したのは、そのときでした。

日本国内はもちろん、世界各地に無数の舞踊が存在します。
音楽に合わせてしなやかに身体を動かすことができるって楽しいな、うらやましいな。

憧れつつ、ダイエットダンスを3セット終えたわたしに待ち受けていたのは、その後3日間続くふくらはぎの筋肉痛なのでした。



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