パーソナリティトークンによる付加価値配分モデル

自らのマインドセットや行動様式を構築する時、初期設定では親などの自分に影響力を持つ人のトークンが組み込まれているのが、成長し、経験を積むにつれて師匠などの優れたケイパビリティを持つ人のトークンを組み込んで、自分の目的を自らの問題意識に基づいて達成するための方法論の助けとするのだと想定してみる。

そして、他者のトークンをインストールすると、そのマインドセットや行動様式を自動的に適用できるようになると考え、そのトークンの発行者に、複雑で面倒な思考様式や高度な運動能力、あるいは表現力などを代行してもらえることになると考えてみる。

このトークンインストールは、協働比率を設定して行うことにして、その比率が低いほど利用者は自らの負担を軽くしたままトークン発行者のケイパビリティを利用できるのだと考える。そして、トークンへの報酬は比率と反比例することとする。トークン価格はどの発行者のものも同じで期間にわたっても一定とし、トークン収入を増すためには使ってもらう人を増やし、協働比率をできるだけ下げてもらうこととする。ただ、使ってもらう人が増え、協働比率が下がれば、その分トークン発行者の脳や肉体にかかる負担は増すことになる。つまり、トークン発行者にとって、低い協働比率のトークンインストールは自分のマインドセットなどへの干渉が低くなり、比率の高いトークンインストールは共同作業部分が増すために、計算能力負担などが下がるという効果がある。

逆に、トークンの利用者の方は、比率を下げるほどに自動で処理が進み、比率を上げると共同作業部分が増えるために、計算能力や身体能力をそのトークンのために提供しないといけなくなり、負担は増すが、その代わりにその経験によって自らのケイパビリティを上げるとともに、支払い報酬を下げることができるようになる。つまり、自己啓発のために、優秀なトークンの比率を上げて共同作業を行えば、その作業の経験を積むのと同様の効果が得られ、理解が深まり、そのトークンの持つケイパビリティを自らのものとしてゆくことができるようになると考えられそう。

このようにトークンがインストールされた状態では、自分のマインドセットや行動様式プラスインストールされたトークンの集合が現実社会と直面することになり、現象はその集合体と現実社会との接点で発生する事象だと言えそうだ。それに対して、人はそれぞれ自分の世界観を持っており、それに従って目的を設定し、問題意識を確保し、それを解決するための方法論を持ってその現象に対峙して現実社会を自分の世界観に適合させようと、日々努めていることになる。

それを考えると、現象はトークンの入れ替えによって変わるのだとも考えられるわけで、自分の世界観にあったような現象となるように、最適なトークンミックスを探り、そして現象の中に具現化された問題解決のために、その組み替えられた適切なトークンミックスで、さらにはその協働比率を上げ下げしながら、現象を自分の納得のいくように調整してゆく、という問題解決プロセスを想定することができそうだ。

それを社会実装して具体的な姿にするためには、それぞれが自分のケイパビリティレベルを表現し、それによって取り組んでいる目的、問題意識、方法論を明示し、そして用いているトークンとその協働比率も公開することによって、透明性のある非干渉的な目的合理性追求を行うことができそう。公開することのメリットは、それによってそれぞれが何らかの障壁に突き当たった時、相互にその原因追求がしやすくなる、ということが挙げられる。

目的、問題意識、方法論は、複数設定することも可能で、それぞれの進捗状況なども公開することで、相補的なケイパビリティデベロップメントが可能になるかもしれない。その際には、相互承認の下でマインドセットなどの中の一部のケイパビリティだけの協働ということが可能になり、それによって全体の協働では負担が大きすぎるような作業であっても、部分的協働によって分業による作業効率アップとケイパビリティデベロップメントを行うことができるようになる。一方で、それを競争で行おうとすれば相互干渉が激しくなり、力による解決が蔓延ることになる。それをなるべく対話による協調的解決で行うようにするために、基本的な情報公開というのが必要となり、その情報の公開具合、そしてその内容というのがそれぞれの人の信用のベースとなってゆくのではないだろうか。

その信用をさらに強化するために、マクロ的な価値観(目指すべき世界観とも言えるか)、サブマクロ構造構想、そしてその構造上に結ばれるさまざまな社会的関係性という、ミクロ的な目的合理性追求を基礎付けるマクロ的社会観の考え方も明示するということが考えられるのではないか。それによって、ミクロとマクロの整合性などを含め、その総合的パーソナリティトークンの信用性というものが明示的に確認でき、不整合が生じた時にはその都度確認して問題の所在を確かめてゆくことができるようになるのではないだろうか。

現状の選択の自由で構成される社会の範囲では、選択パッケージを典型的には政治によって確保し、その実現を企業の提供するトークンミックスによって近似的に行ってゆく、というやり方になっていると私は観察するしている。それに対して、このように、総合パーソナリティトークンを個別に設定、調整し、自らの目的達成とケイパビリティ開発を自分の手に収めることをできるようにすることで、人が自分の人生、生き方をより主体的に選択、というよりも、構築して行けるのではないかと期待している。それは、選択の自由よりもより広く、創造的な構築の自由の世界を実現してゆくことになりそうだ。

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