ヴァーチャル美術館・美術商

一人1IP(でなくても別にできるが)になり、自分のコンテンツをそれぞれ自分で管理できるような形になったら、その中で特にお気に入りのものを選んで展示し、ヴァーチャル美術館のようなものができるのではないか。

このnoteでも、まあマガジンという仕組みがあるおかげでかなりコンテンツの整理はしやすくなっているが、それでもその中のコンテンツを並び替えたり、あるいは目次ページを作ったりするのはかなり手間で、実際私も不精なので全然やっておらず、最近は見出し画像すらつけることもせずに、本文中の見出しも省いてどんどん手抜きになっているのだが、人様にみてもらおうと考えるのならばもっと見せ方に工夫が必要になるのだろう。

そこで、個人的にはまだあまり強い関心は持っていないのだが、メタバース的な世界の可能性を考えてみたい。文章なんかはそんなに見栄えのするような展示をするのは難しいのだろうが、画像とか動画、そのほかのデジタルアーツ的なものは、一人一人が自分の空間にうまく展示することで、仮想の美術館のようにできるのではないか、と感じている。

そうすることで、それぞれの人のセンスがわかり、話のきっかけにもなるのだろう。展示された作品はまさにその人のなりを示すことになり、個性が明示化される。個性が明示化されることほど具体的関係性の構築に有用なことはなく、それによってセンスの合う人同士が、仮想空間であってもつながりを作りやすくなる。

自分で作品を作るのはどうも、という人は、人の作品をキュレーションして展示、ということもできるのだろう。それはまたそれでその人のセンスを示すものとなる。幅広い範囲からさまざまな作品を集めていれば、その人の視野の広さを示すものとなり、あるいは個性的なものを特化して集めていればその人のこだわりが見えることになる。

他者の作品を展示するには、やはり権利関係が問題となってくるだろう。その時に力を発揮するのがNFTということになろう。ブロックチェーンによって本人確認ができるこのトークンを使えば、その作品が本人のものであると証明でき、そして個人美術館が一般的になることで、アーティストが作品づくりを通して資金を得るスタイルが定着しそう。

NFT発行の際に、その取引がなされた時のコミュニケーションの内容が一緒に登録されるようになれば、同じ作品であってもその取引唯一無二のトークンということで独自性も現れる。つまり、購入者のコメント自体も付加価値となり、それによってNFTが転売されることになったとしてもそれぞれ価値が変わってくることにもなる。

古来、骨董品の価値というのは、そのモノの持つ物語性、というのが大きな意味を持っているといえる。真作とはその物語、作者やスポンサーあるいは買い手、その後の伝来経緯などについて信頼が置け、それによってそのモノの評価が代々受け継がれてきたことが確保されているモノであるともいえる。それがNFTによって、いわば個別性が大量生産できるようになったという、美術における大革命の時期に当たっているのかも知れない。買い手の方でも、気の利いたコメント一つ入れないと、NFTの価値が下がる、ということで売ってもらえなくなる可能性もあり、鑑賞者側の審美眼も問われることになる。

モノが飽和した時代、それぞれが自分のセンスを大事にしたいと思うようになるかも知れず、その時に個々人がそれぞれのセンスに合わせたアート展示を行い、その取引もできるようにする、というのは、経済の新たな展開になるかも知れない。そしてそれはコミュニケーションの質を高めた上に活性化させる可能性もあり、次の時代の大きなトレンドになるかも知れない。

多分これは別にメタバースでなくても実現はできることであり、むしろメタバース以外のところで作品管理をしっかり行い、展示の場所としてメタバースが一つの選択肢となる、ということになるだろう。

そして、見せるための技術というのはまだまだ発展の余地があり、個人の創作をサポートする方向での技術革新は、テックエリート主導による技術革新によってどんどん高度化・複雑化する技術よりも望ましい物だと思われる。技術進歩の速度が一般の人々の活用レベルとペースを合わせることは、ITの寿命を伸ばすことにもつながると考えられる。

デジタルアートから発展する方向感は多様で、さまざまな可能性に満ちているといえる。

最後に、論語の一文を少し借りると、

創而時伝之、不亦説乎。有朋自仮想来、不亦楽乎。人不知而不慍、不亦創作者乎。

「創作したらそれを誰かに伝える、なんと喜ばしいことか。仮想空間で人がやってくる、また楽しいことだ。人にわかってもらえなくても別に気にかけたりはしない、それこそ創作者たるべきものではないか。」

新しい時代が、人々の交流を活発化させ、心の豊かな時代になればこれほど嬉しいことはない。

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