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【小説】山田家嫁姑のソラの虹①

(トウルルル……)
私の携帯のベルがなる。横浜の山々に日が沈む頃だった。

主人のお母さん、しーちゃんと 主人と 私で、箱根にドライブへ行った帰りの車の中でのことだ。いきなり、しーちゃんの凍りついたような声が聞こえる。

「ねぇ、えみちゃん、冷たくなって、〇〇が 冷たくなって……死ん……」

〇〇の部分は聞こえない。
私は、(何か ペットは飼っていただろうか? 冷たくなったって……? 死……? )と、考えた。

しかし、しーちゃんのマンションでは、動物は飼っていない。しーちゃんを帰路の途中で、マンションに帰した私たちは、何事かと耳を疑う。

「え、えみちゃん、えみちゃん、……ミツが、死んじゃったの」
(え……? )
私は、凍りついた。運転席の主人、ひでに知らせを告げ、車を急いでUターンさせ、急スピードで走り、しーちゃんと、義理の弟 ミツにいにの住む郊外のマンションへ向かった。
ミツにいにに何かがあったのだ。

ミツにいには、自室のベッドの中で冷たくなっていた。
私たちが願っていたことは、裏切られた。
後でわかったことだが、昨夜のうちに亡くなって、しーちゃんが気づかずに、私たちのドライブに 家を出たらしい。死因は、まだ分からない。
うつろな目を開け、口を微かに開き、手元にはスマホがあった。
警察が、もう来ていて しーちゃんの事情聴取がなされていた。
マンションに来た 私たちも、事情聴取される。

「はい、はい、昨夜は 私と同じものを食べて 変わったものは食べていないです。持病ですか……? 糖尿病が、ありました」
しーちゃんは、涙ながらに訴える。
不審死で 警察は、一応のこと疑いの目で見ている。

やがて、事情聴取が終えられて、亡骸を警察が 運んで行った。

隣の市に住んでいる長男のヒロさんにも 連絡が行った。「今日中にそちらへ行く」と、義兄は言う。

しーちゃんは、ショックで呆然としている。

隣の市から、義兄のヒロさんが到着した。色々、しーちゃんと話したうえ、私たち夫婦に告げた。

「ねぇ、今夜は、母さんのところへ泊まってやって」

私たちは、その晩 しーちゃんと 義理の弟ミツにいにの住んでいたマンションに泊まることにした。

マンションの居間で、私たちは雑魚寝した。
そのときは、これからどうなるのか、考えもつかなかった。姑である、しーちゃんと同居するとは。

とりあえず、私は翌々日のパートは出るが、今度の土、日曜日の休暇はとった。4日後以降だが 多分、この日に通夜と告別式だ。翌日のパートは、人がいなくて休めなかった。

私の主人のひでの兄弟は、義兄のヒロさん、義弟のミツにいにの3人兄弟だ。
お嫁さんのいないミツにいにが、義理の父の死後、郊外のマンションを買って、姑 しーちゃんと一緒に住んでいた。

普段から とても、静かな 静かなマンションだった。


              つづく

©2024.3.2.山田えみこ


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