見出し画像

海を空のように撮る中村征夫と雪を星のように写す草彅裕−秋田の写真家

雪国生まれで南国の海を撮る写真家、中村征夫

雪国生まれだが、南国が好きでダイバーになった写真家がいる。秋田出身で唯一の木村伊兵衛賞を受賞した写真家、中村征夫さんだ。カバー写真は、中村さんがサイパンで撮った写真。海を大空のように、海中生物を羽ばたく鳥のように撮る中村さんが好き。彼が海に潜って写真を撮ると、魚たちは大空で群れる鳥のようだ。

中村征夫 [なかむら いくお]1945年、秋田県生。
独学で潜水と写真をはじめ、ダイビング専門誌を経てフリーの水中写真家となる。国内外の海や自然、人びと、それを取りまく環境などを精力的に取材。1988年、木村伊兵衛賞、1997年、講談社出版文化賞他。

中村さんは、秋田から上京し、大型家電量販店の販売員、酒屋の店員、お抱え運転手、お菓子の卸売り業など、職を転々としながら独学で水中写真を学び、24歳のときに水中カメラマンとして水中撮影プロダクションに入社し30歳を過ぎて独立した写真家だ。

昨年は長崎の壱岐市立一支国博物館で「海中顔面博覧会」という写真展が開かれていた。(一支国博物館って名前がかっこいい。)

スクリーンショット 2020-04-01 19.34.44

秋田には潟上市に県で唯一の「ブルーホール」と呼ばれる酒蔵を改装して作った写真美術館があり、郷土を代表する写真家たちの展覧会が常に開催されている。

スクリーンショット 2020-04-01 19.42.52

営業時間 10:00-16:30
最終入館は16:00
定休日 8月13日,12月31日-1月3日
展示替え、イベントによる休館日あり
アクセス 秋田自動車道昭和男鹿半島ICから約10分
JR羽後飯塚駅から徒歩約10分
駐車場 あり
駐車場料金無料
料金 一般 300円、中学生 100円、高校生 100円
企画展により別設定の場合あり
カード カード利用可
〒018-1504 秋田県潟上市飯田川飯塚字飯塚34-1

また、東京都写真美術館でも過去に展覧会が行われている。木村伊兵衛賞と土門拳賞どちらも受賞した写真家は、数えていないけれど少ないだろう。

中村征夫写真展
海中2万7000時間の旅
2006.8.5(土)—9.18(月・祝)

スクリーンショット 2020-04-01 19.48.31

マダラトビエイ、サイパン2005年4月 ©中村征夫 2006


バランス感覚を外して撮る写真家、草彅裕

スクリーンショット 2020-04-01 20.22.13

草彅裕の写真って、なんだか不穏だ。とても居心地が悪い。音楽なら不協和音。どこか音が外れている。いや、彼はわざと外している。広告写真では明らかにない、ポーズを決めて構えてとる魅せ方というよりも、誰かがふと見ている「ぶれそうでぶれなかった」けれど心になんだか染み付いてくるような景色を残している。そんな、いわゆる「写真はあのとき撮らなかったけど、なぜか記憶に残ってるんだよな」という瞬間を切り取っているような気がする。だから、写真というよりも、彼の雪を見た記憶の残像をこっそり見ているような気持ちになる。

スクリーンショット 2020-04-01 20.22.50

草彅裕(くさなぎ・ゆう)/写真家。1982年秋田県生まれ。東北芸術工科大学大学院芸術工学研究科修了。秋田で7年に渡り撮影してきた雪のシリーズ「SNOW」で写真新世紀 佳作賞(蜷川実花選)を受賞。フランスの新聞社「ル・モンド」から、KYOTOGRAPHIE国際写真フェスティバルの公式プログラム「ネイチャー・イン・トーキョー」に選出される。角館町在住。

2016年に出版したSNOW。白にSNOWとYu Kusanagiと薄く刻まれたシンプルなデザインが美しい。

そうそう、彼の写真は雪が星のよう。

降り積もる雪の夜、静寂のなか一人ファインダーを覗いていると、
ふと、どこか遠い惑星にいるような錯覚に陥る。
写真に捉えられた雪は、まるで無数に輝く星のようだ。
星の光が数千光年を超えて私たちに届くよう、
雪もまた太古より循環し時を巡り、現在に降り注いでいる。
それは、悠久の時と「いま」が触れ合う瞬間の光景でもある。
草彅裕

スクリーンショット 2020-04-01 20.25.25

これは雪なんだろうか、それとも星なんだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?