大阪ゆらゆら日記③〜女として諸々歪んでいる〜

「絶対あの人たちは、私よりも新入社員のあの子の方が好きだと思うんです」
上司との飲み会で、気がつくとこんなことを口にしていた。
若い頃はたいそうモテたというお偉いさんがサラリと一瞬で話題を変える。
スマートだ。
仕事が出来て浮気症じゃない男とはこういうものなのか。

少し前までいた職場は、私と私の同期の女の子が来るまで、女性社員がいない環境だった。
初めての女性社員ということで入りたての頃は同期の男に比べたら馴染めず、設備も整っておらず、色々苦労をした。
それでもだんだんと慣れてこればちやほやしてもらえて正直楽だったし気分も良かった。

私は田舎育ちで自分の身なりに危機感のないぬぼーっとした感じだけれど、他に女もいないのでのんびりしていた。

一方、私がそこから異動した後で入った新しい女の子はお化粧をしっかりしていて、自分の意見を強く持っていて、明るく賑やかな子。
あの職場の人たちはギャルが好き、と騒いでいたから、きっとこういう子の方が好きなんだろうな。
もやもやとした気持ち。

私は「初めて女性社員を受け入れました!」という実績を作るためだけの駒だったのかななんて思う。
好きで初めての女性社員になったわけでも、褒めてもらいたくてそうなったわけでもない。
女性社員が既にいる職場とは別のところに人事が辞令を出した、ただそれだけ。
男性社員や、女性の先輩がいる箇所にはない悩みを抱えて、陰口を言われて、ストレスで肌がボロボロになっても、それだけじゃ給料は上がらないし褒められもしない。
異動先が決まれば「はい、さようなら」である。

私の話を聞いて「可哀想」と連呼している社員を見て、心配してくれた先輩もいた。
可哀想可哀想言われても仕方ないよねって。

でも、どれだけ幼稚な男に陰口を言われていようと、理不尽なことを押し付けられていようと、可哀想と言ってくれる人すら私にはいなかったわけである。
他の人だって自分が生き残ることに精一杯で、自分が一番大変だと思っているからだ。
初めてちゃんと心配してもらえて嬉しかった反面、こんなんだから自分は弱いんだなと悲しくなる。

帰りの電車で、落ち着きのない男の子と、周りの目を気にせずにその子を叱り続ける男性がいた。
暴言を吐きながら、「座ってろ」と男性は男の子の頭をぐっと自分の膝の上に押し付けて圧力を加える。
止めてあげたいのだけれど、勝てる自信はない。
そっと見やる。
昔はうちの父親もああだった。
今では怒らなくなったけど、若い頃からお父さんが優しくて、たくさんよしよししてくれてたら、私はどんな子に育ってたんだろう。

自分の良さなんてこれっぽっちも分からないのに、他人の悪いところは見えなくて、全てが羨ましく思える。
未熟すぎて、虚しくなる。


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