Emiko (シモハタエミコ)
行きたいところに自由に行ける喜び
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行きたいところに自由に行ける喜び

Emiko (シモハタエミコ)

社会人2年生の息子が、通勤に使っている自転車。

息子は肢体不自由なので普通の自転車は運転できません。そこで障害者用のものを、息子の障害に合わせて特注で作ってもらいました。

作って下さったのは、東京・足立区にある堀田製作所です。

今から10年ほど前、息子が中学生になった頃、この堀田製作所で息子の自転車を作ってもらいました。

この出会いには、とても不思議ないきさつがありました。

ある晩、夫の夢に知らないおじいさんが出てきて、「この子に自転車を買ってやってほしい。」と言われたそうです。

夫は夢から覚めても、ずっと「自転車」のことが頭から離れず気になり、ネットで「障害者 自転車」で検索してみたところ、上記の堀田さんのサイトがヒットしたそうです。

そこで、すぐに堀田さんに連絡して問い合わせてみたのですが、「実際に現物の自転車に乗ってみて、どういうタイプのモノが合うのか試してみてほしい」とのことでした。

そこで、私たちは足立区の堀田製作所に行くことにしました。

夢から一週間ほどのうちに、息子が自転車を得るための道筋がスーと出来たのでした。こうして私たちの運命が動き始めたのです。

◇◇◇

東京には、息子の身体を診てもらうために毎年一回、都内の小児病院での検査・診察のため定期的に上京しているので、行き慣れてはいたのですが、足立区に行くのは実は初めて・・・。どんなところかな?と思っていたら、実際に行ってみると、どこか懐かしい風景・・・。そうだ!ドラマ『3年B組金八先生』に出てきた風景でした。オープニングに出てくる、だだっ広い堤防沿いの風景・・・。

そこから少し行ったところに、工場がありました。

堀田製作所は、ご主人と奥さんで切り盛りしている小さな町工場で、下町の雰囲気が残る街の中にそれはありました。

堀田さんご夫婦は、飛騨からはるばる訪れた私たちを温かく迎えて下さり、いろいろお話をしました。そして、工場にあるいくつかのサンプル自転車に試乗させてもらいました。

堀田さんの作る自転車は、健常者である私たちにはすごく扱いにくい仕様なのですが、麻痺がある息子にはとても運転しやすいようで、息子は嬉々として自転車に乗っていました。なんたってこれが生まれて初めての自転車体験です。昔、まだ保育園児の頃、子供用の補助輪がついた自転車に乗せたことがありましたが、麻痺がある方へハンドルを切ってしまうため、進路が左に傾いてしまうのです。真っ直ぐに走ることが難しくて、そこで自転車に乗ることは諦めました。

でも、今回、こうして堀田さんと出会い、堀田さんの自転車に乗せていただいて、真っ直ぐ進んでいる様子を見て、これはすごいと感激しました。

細部にわたり障害者の身体のことを考えて、なおかつ安全性についてもきめ細かく配慮した作りになっていることに、私も夫も驚きました。

いろいろ試し乗りをして、息子の自転車をどれにするのか決めました。いくつかあるなかで「回転式三輪の自力」にしました。息子の身体に合ったブレーキやペダルのタイプを決め、身体のサイズを測り、サドルやペダルの位置をどうするのかも確認しました。

こうして、堀田さんに息子の自転車を作ってもらうことになりました。

全て手作りなので時間がかかるとのこと・・・。でもありがたさで胸は一杯でした。ワクワクしながら出来上がるのを待ちました。

◇◇◇

数ヶ月後、大きな段ボール箱に入った自転車が届けられました。

開けた瞬間、わぁー!となりました。

三輪自転車で安定性はバッチリ。全てが息子仕様になっていて、息子の身体にピッタリです。

家の近くの空き地で夫と少し練習をして、その後、一人で近くのお店に買い物に出かけていきました。

後ろ姿を見ながら、「良かった」と思いました。

それまでは、「徒歩」か「親の車」が移動手段でした。肢体不自由だけど自立歩行ができるので、足の筋力を衰えさせないために、車椅子は利用していません。でも、足に麻痺があったり股関節に不具合があるため、ちょっとした距離を歩くとなると、足に負担がかかります。そこで外出するときは、どうしても車での移動が主になり、息子が一人でお出かけすることは、安全上、なかなか出来ませんでした。

でも、自転車が我が家にきたお陰で、私や夫が車で送迎しなくても、1㎞くらいの距離なら自転車でサッと一人で出かけられるようになったのです。

健常者には何でもないちょっとした距離でも、足に障害があると途方もなく高いハードルになります。しかも無理ができない体なので、どこまでやらせてよいものか…その匙加減も難しく、いつも悩んでいました。

しかし、そのハードルを堀田さんの自転車がクリアにしてくれたのです。
介助がなくても移動できることは、そのまま自立に繋がります。

これは息子にとっても、また私たちにとっても、大きな前進でした。

そして大きな自信に繋がりました。

その後、中学・高校と、ちょっとしたお出かけに自分の足代わりにして自転車に乗り、大学時代は実家に自転車を置いて帰省したときにこっちで乗り、今は一人暮らしをしているアパートから職場まで600~700メートルの距離を自転車で通勤しています。

大学在学中に自動車の普通免許証は取得したものの、安全面で不安を感じ、結局、自分で車を運転することは諦めました。ですので社会人になった今も、「自転車」が唯一の移動手段です。

そんななか、突然、我が家にNHKさんから電話があり、今度、堀田製作所の自転車を紹介する報道動画を作るので、(昔、堀田さんに私たちが送った)お礼状の写真を使わせてもらえませんか?と依頼がありました。

たくさんの御礼のお手紙と写真の中から、うちの息子が選ばれたそうです。満面の笑みの笑顔が決め手だったとか・・・。

担当のMさんは、(電話でのお声の感じで)とても物腰の柔らかい優しい雰囲気の方でした。Mさん曰く、「堀田さんの自転車をより多くの人に知ってもらいたい」という願いのもと、この動画を作ることになったそうです。

そのお話を聞き、堀田さんのあの優しい笑顔を思い出し、とても懐かしく感じました。私たちの写真で良かったらどうぞ使って下さい・・・とお願いし、電話を通して軽く取材も受けました。

私たちのように、肢体不自由で移動手段に困っている方へ、堀田さんの素敵な自転車のことが伝わりますように・・・。本当に必要な人のところへ、大事な情報が届けられますように・・・。そんな願いも込めて、私たちは承諾させてもらったのでした。

こうして出来上がった記事が、こちら↓です。本日12月25日に公開されました。(Mさんから朝一番で連絡をいただきました♡)

※今、この記事の動画は期限切れで見ることができなくなりました。

1分13秒のという短い動画ですが、この中に、中学生だった頃の息子が、写真でちょこっと紹介されています。良かったら見てみて下さい。

うちの息子の他に2人の方が紹介されていますが、皆さんが仰るように、この自転車のお陰で、「行きたいところに自由に行ける喜び」を得ました。

この動画を通して、約10年ぶりくらいに堀田さんにお目にかかりましたが、昔と変わらずお元気そうで、とても嬉しかったです。

また、最近、堀田さんを紹介する本も出版されたそうですよ。

思わぬ突然の電話から、ふと思い出した自転車のエピソード。

そして堀田さんとの出会い。

たくさんの出会いに恵まれて、私たちは元気に生きています。

ありがとう。そして、感謝。

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Emiko (シモハタエミコ)

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Emiko (シモハタエミコ)
本州の真ん中・山の町に在住。子育てを卒業して、今は束の間の自由を満喫中。書くことと散歩とかわいいものが好き。【2021年大日本市】カタリベ /【noteコンテスト受賞歴】2020年「♯私が応援する会社」審査員特別賞・2021年「♯やさしさにふれて」Panasonic賞 。