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キューバに行った話をしよう(10)

ベーシスト、キューバでパーカッションを習う

「パーカッションをやるとベースが上手くなる」を検証する企画。ベーシストがいきなりキューバでパーカッションレッスンを受ける話。
渡航前から「受けられそうならレッスン受けたい」くらいの気持ちで考えてました。そこでサンティアゴでの宿が決定した際、宿主にそのことをメールで相談。パーカッションの経験者、或いはスペイン語で交渉できるスキルがあれば、現地でライブを観てから「この人!」というプレイヤーに教えを乞う手もあるのですが、私にはどちらもなかったのでもう丸投げです。それで紹介してもらったのがGiraldo先生でした。初回、しっかり道を覚えてねと、連れられて歩くこと7、8分。行ってみると軒先に看板が掲げてあるという、至極真っ当なパーカッション教室。先生は学校現場でも指導されている方で、恐らく宿主のケイトさんとアベルさんが、私が全くの初心者だということを踏まえて紹介してくれたのではないかと思います。

 レッスンはコンガを中心に、ボンゴ、グィロ、マラカスの4点セット。案の定コンガやボンゴなんてまともに音が出るわけもなく、躍起になって叩いてリムに親指ぶつけまくって、これは帰国するまでに骨折れるか見えるかするんちゃうかと本気で思いました。「ぺしょっ」って情けない音を出してると先生は「もっと大きな音でっ!」ってクリクリの目をさらに見開いて仰います。ふえぇっ…
結局1回行ってみて、先生からレッスン回数を増やしてはどうかと提案が。当初の予定回数ではコイツはどうにもならんとバレたに違いない。もちろんご名答。私自身もこのままではお遊びで終わってしまうと思ったので、思い切って月〜金曜で通うことにしました。平日毎日2時間のレッスン。カサ(宿)に帰ったらしっかり復習。学生か…。

 それでもコンガの各リズムにおける基本パターンはなかなか記憶できなくて、日を追うごとにあらゆるパターンがごっちゃごちゃになり、叩き損じる度に先生は「違うっ。エミ、違うよっ。」と、やはり大きな目をさらにクリクリさせて仰るのでした。出音にも大変厳しくて、微妙に不必要な倍音が鳴ると、その度にすかさず「No!」と言われ、そのおかげで音色のきっちりとした使い分けが大切だということを嫌という程叩き込まれました。私はバス、ペガード、オープン、スラップと、本当に基本的な4つの音だけを扱いましたが、教則本などを見るにコンガ奏者はこの倍ほどの音色を使い分けているとかいないとか。凄いな。

 グィロもかなり苦戦。1時間基本パターンを繰り返し練習しても、納得のいくストロークは2、3回あればいいところ。どんだけ下手クソやねん…。グィロの奏者は演奏中ずっと安定してその音楽をスィングさせているというのだから大したものです。そんなわけでレッスンでも先生はどうしたもんかと渋い顔をして私を見守っていたのでした。日本に戻ってからもギチョギチョやってますがなかなかです。ベースに現実逃避しようとするくらいになかなかです。

 合計34時間のパーカッションレッスン。それで初心者が何か十分にできるようになるかというと、一握りの天才か器用な人を除けば当たり前の話そんなはずはありません。ですが、帰国してベースに触れてみると、無意識のうちにベーシストとしてはステップアップの種を多く持ち帰っている気がします。
よって、ちょっと成果が出たかもしれない「パーカッションをやるとベースが上手くなる説」実証実験、今後もまだまだ続きます。
(2019年4月24日のfacebookより転載)

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Giraldo先生との思い出

 Giraldo先生は、おそらくキューバで最も長い時間を一緒に過ごした人。スペイン語がさっぱりわからない私に、伝えたいけど伝えられないことが山ほどあってもどかしい思いをされていたことは想像に難くないわけですが、知っている数少ない英語と私が理解できそうなスペイン語、そして微妙な翻訳をしてくれるアプリを駆使して、毎日毎日根気よくコミュニケーションを取ってくださいました。陽気なラテン系というよりどちらかというと真面目な印象の先生は、「日本語では何て言うんだ?」と私に問うて「オハヨウゴセマス」「アリガトゴサイマス」と、レッスンの最初と最後に照れ笑いしながら言ってくれるお茶目さんでもあります。縦に長い玄関ドアをノックするといつも満面の笑みで私を見下ろして「Hola!」と迎えてくれて、体調も気遣ってくれて。最後のレッスンではコンガ叩きながら目に涙を浮かべ、それを見て私も泣いてしまって、結局2人で泣きながら何も言わずにコンガ叩いてました。
 
 かーらーのー、先生御一家との記念撮影。
ちびっ子達は本当に可愛くてもうメロメロでした。超恥ずかしがり屋のお兄ちゃんは、いつの頃からかレッスン中にちょっかい出してきたりして。せっかくだから最後に何かプレゼントしたいと思ったけどそれらしいものが何にもなく、仕方ないから残ってた梱包用の新聞紙で兜折って持って行ったら被ってくれました。市原悦子があしらわれた兜…。写真の通り、ご家族みんな温かく接してくれて、教室を後にするのが大変名残惜しかったことは言うまでもありません。

 余談。涙のお別れをした先生とは、その翌日(サンティアゴを発つ日)に街中でばったり出会い、今度は笑顔でお別れしました。
Giraldo,gracias de corazón.
(2019年5月1日のfacebookより転載)

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あれからはや1年以上

 もしキューバ行きを1年先延ばししていたら新型コロナの影響でてんやわんやになっていたな、なんて思いながら、同時にキューバの状況はどうなんだろうと心配もする。マスクをした専門家らしき人が話すキューバの生配信をインターネットで観てみるものの、ちっとも言葉がわからない。だけどキューバは高度医療先進国だ。きっと大丈夫。どうしようもないから、そんなふうに祈ることしか私にはできない。だからGiraldo先生からの「大丈夫か?」という短いメッセージが重要な判断材料の一つとなっている。こちらの方が気遣われているではないか。現にキューバは封じ込めに成功しているという記事がインターネット上にもあがっていた。先生だけでなく他の知り合った人たちも元気そうでなによりである。

パーカッションからベースを知る

 随分と長い時間が経過する中で、ベースほどではないがパーカッションの練習も続けている。が、その練習内容はキューバで習ったことの反復練習がほとんどで、特にコンガは教えてもらったリズムパターンを今でもずっと飽きずに叩いている。というか満足できないから飽きるところまでいかない。もともとラテンリズムに対する理解を深めるためにやり始めたパーカッションなので、高速で叩くことも、複雑なパターンを叩くことも目指してはいない。ただ気持ちのいいリズムをベースで奏でたいがための勉強。今のところその勉強材料としてはノートに手書きされたいくつかのリズムパターンで十分だし、正直まだまだ気持ちよくは叩けない。気持ちよく叩けるようになったとき"conga y bajo ,unidos(コンガとベースは一つ)"がはっきりと理解できるんじゃないかと思う。だからまだぼんやりとしか掴めていないのだろうとも。
 
 私が出会ったキューバのミュージシャンは、皆が口々に「ベーシストがパーカッションを勉強することはとてもいいことだ」と言っていた。日本でもラテン音楽に理解のある人たちはそう言った。だけど一部の人は、色んな楽器に手を出すなんてロクなことないとか、一体なにがしたいのなんて心ないことを言う。じゃあベーシストはベースだけ弾いていればいいのだろうか。私はそれは返って遠回りだと思う。ラテンの場合は特に。

 最近つくづく思うのが、ラテンだとベースはとても打楽器に近い。もちろん属性としてはリズム楽器なのだが、ロックやポップスなどでは旋律とリズムの中間にいるという感覚だった。それがラテンだとグッと打楽器寄りに感じるのだ。もはやベースは打楽器だと言い切っている人もいる。ラテンのほかにもファンク、スィング、ディスコなども打楽器寄りかなという意識はあるのだが、ラテンほど強くはそれを感じない。ところがラテンでは強烈に打楽器寄りだと感じるのである(ただしこれはあくまで私の感性なので、これを間違った音楽の捉え方だと理詰めで訂正するのはご容赦ください)。それならばパーカッションが一体何を意図して何を演奏しようとしているのかを察知できたほうが絶対にいい。そのためには自分がパーカッションをやってみるのが一番の近道だ。

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 こちらは最近だいぶ楽しくなってきたボンゴ。よく間違われるけど、樽みたいなのがコンガで、この小さくて2つくっついているのがボンゴです。

それで肝心のベースは上手くなったのか

 それは周りの人に判断していただくとして・・・。「上手い」という言葉をどう定義するかにもよるのだが、少なくとも音楽をする上での視野は広がったし、パーカッションとベースを行き来することで、気付くことが単純に2倍になった。ドラムがいない演奏に不安を感じなくなった(やっとリズム楽器として自立できたっぽい)。音の瞬発力が上がった(気がする)。不思議なのだが、パーカッションをやり出してからの方がベースに触れる時間も増えた。これは、なんでだろ。わからない。

 まだまだまだまだまだまだ道半ば。でも何かしら意味を考えながら続けていれば、あるときふわっとステップアップしていたりするもの。今はキューバから持ち帰ったたくさんのステップアップの種を蒔いて、せっせと水遣りをしている最中。花が咲くか実が成るか、現実にはそこまで到達できないかもしれないけれど、どんな花か実かを想像しながらずっと育て続けるのもそれはそれでまたよろし。

 そしてまた、エミは今こんなだよーってGiraldo先生に報告しに行かないとね。

おまけ。キューバでレッスンを受けるなら

 ライブを観てから気に入ったミュージシャンに突撃してレッスン交渉するのももちろんアリです。中、上級者ならその方がいいかもしれません。ただ、パーカッションを勉強しに来たって言うと「コンガ教えてあげるよ」って声掛けてくる怪しいおじさんもいるので(ダンスと一緒ですね)、初心者やスペイン語に不安のある人はGiraldo先生みたいにきちんと教室の体をなしているところへ行く方が圧倒的に精神的にラクです。画像4

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Giraldo先生の教室パンフ。

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ベーシスト、音楽療法士、ドラムサークルファシリテーター、ラテンパーカッション愛好家、茶華道家、時々凧の糸が切れたバイク乗り。

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