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樹木を担ぐ

言ってしまうと、私の持っているベースは決して安くはない。

安くない理由のひとつには「使用する材木の価値」がある。多くの木製楽器が貴重な地球資源を伐採して作られているのは事実だ。そんなものを買って使うなんて、と思う環境保護活動家の方もいたりするのだろうか。希少な木を音楽家の欲望のために切るなんて……などと思われたりするのだろうか。

私だって森林が猛スピードで減少していることにも、多くの樹種が存続危機に瀕していることにも、それによって行き場を失う生物がいることにも心が痛む。それは嘘じゃない。

でも切っちゃったものはどうしようもない。
もう楽器になっちゃったものはどうしようもない。

ならば、私も含めて誰かの心を豊かにする資源となるよう、楽器に形を変えて生きるこれらの木々に感謝をしながら腕を磨こうではないか。心が豊かになったら地球も豊かになるかもしれないじゃないか。風から桶屋くらい遠いけど。

そんなどうでもいいことを考えながら、今日も私は樹木を担ぐ。

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