見出し画像

親指の「勇気」

RSGT2023に参加してきました。

今年も最高でした。
去年は帰国直後でホテル隔離中だったのでアパホテルからの参加でしたが、今年はしっかり3日間現地参加してきました。
会場での熱量を感じ、他の参加者の優しさと勇気にふれ、一年分のMPと思いやりの心と勇気をしっかり補給することができました。本当に、あの場を保ち続け、さらに良くしていこうとしてくれる運営の皆さんと、一緒に参加しセッションや雑談の中で知恵を共有してくれるスピーカーや参加者の皆さんに感謝です。

現地では、セッションの話もしたし、普段の仕事で出会う困りごとの話、コミュニティ活動をしていく上での家族との向き合い方の話など、本当にさまざまな話を、たくさんの方とすることができました。

今回は、楽しい話ももちろんしたいところですが、モヤモヤが少し晴れて一歩前に進む準備ができた話をシェアしたいと思います。

実はここ最近、私の中でモヤモヤしていることがありました。それは、スクラムがチームの持っているアイデンティティに合わない時、どうすればいいのかについてです。

去年の9月から、人類学のゼミに入り学び始めました。人類学の活動は、簡単に表現してしまうと「わかろうとする」活動です。
このゼミでは、実際にゼミ生それぞれが研究テーマを定め、2月末の展示発表会に向けて参与観察を通して対象に向かいます。
私が研究テーマとして取り上げたのは、「ベトナムの人々の暮らしと、働く」です。
私が今、最も分かりたい人たち、それが一緒に働いているベトナムメンバーたちだからです。
人類学を始めるまで私はずっと、チーム内でフィードバックが回りやすくなるように一生懸命チーム内のヒエラルキーを取り除こうとしていました。それが、いいプロダクトを作るための本当に必要なフィードバックを包み隠さず伝え合う上で一番の近道だと信じていたからです。ところが、研究を始め彼らと仕事以外の場面でも向き合う機会を通し、ヒエラルキーが彼らの文化の一部であることに気づいたのでした。取り除けるようなものではなく、彼らの一部なのです。これには結構愕然としました。どれだけ自分が彼らに向き合っていなかったのか、どれだけ狭い範囲でしか相手を理解していなかったのかを反省すると共に、もしかしたら彼らの文化を否定するような形に映っていなかっただろうか、傷つけてはいなかっただろうか、と。

「あー、どっから始めればいいんだ。。」そんな状態で年末を迎え、引っ越しで忙しいのを理由に向き合わないまま迎えたRSGTのDay2、Lyssaのセッションの序盤で、「組織は熱帯雨林のようであり、コントロールしたりリードできるものではない」という言葉で引き戻されました。この一言はとてもパワフルで、その後数分間講演の内容が入ってこないほどでした。この内容が入ってこない数分間、私がみていたのは、熱帯雨林を訪れ、鬱蒼と生い茂る背の高い木の間に生えているふかふかの苔の上に、一生懸命サボテンを植えている自分の姿でした。圧倒的に気候が合っていないのに、サボテンを育てることだけしか考えていなかった。サボテンが育つような気候では熱帯雨林のエコシステムは機能しなくなってしまうのに。

その事実を受け止めるのに一杯一杯だったので、その後の思考が全く進まず迎えたDay3、Lyssaに聞いてみることにします。クロージングキーノートの直前、エレベーターホールでLyssaを見かけ声をかけてみました。「ベトナム文化を知れば知るほど、自分がやろうとしていることはまるで、熱帯雨林にサボテンを植えようとしているようなもので、どこからやり直せばいいのかわからない。。」彼女が伝えてくれたのは、以下のような言葉でした。
「まず、あなたは一人ではない。あなたがやりたいこと、目指していることを書き出してチームと共有して。透明性を持って共有するのよ。もちろん、簡単なことじゃない、とても勇気のいることよね。スクラムの価値基準に勇気があるのには、ちゃんと意味があるの。」そう言って自分の親指を見せてくれました。そこには「勇気」のネイルシール!写真も撮らせてくれました!

Lyssaの親指, "You should take a picture of this ;)"

「シェアしたらそこからはどう感じるのか、どうしたいのかを話し合っていく。目指す先にはどんなポジティブなことが待っているのかシェアしていくの。」
緊張していたのでばばばーっと話し始めてしまう私の話を優しく聞き、共感し、できそうなことから道を照らしてくれる。感無量でした。最後に二人で写真をとり10分ほどの会話を終えました。会話の最後には、Coaching Agile Teamsの中の言葉(自宅のデスクにポストイットで貼ってあります)がどれだけ私の助けになってきたか、今回翻訳本が日本で出版され、より多くの日本Agilistを助けてくれることが嬉しいかを伝えました。この時間を思い出すたびに、自分の親指にも「勇気」のネイルシールが見えるような気がします。まだうっっすらですが。

少し冷静になって今思うと、今私が働いているyamanecoに入るきっかけとなったイベントは、彼女の本「Coaching Agile Teams」をみんなで翻訳するモブ翻訳会でした。
そこにはぜんぶ今日に繋がっていたのかなー、、なんて考えながらこのブログを書いています。

はー、エモい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?