リップクリームの話
リップの蓋がなくなった。最悪だ。携帯と一緒にぶら下げていた薬用リップ。いつだって手の届くところにないと不安になる。リップと携帯。どんなときも手元にあってほしい。「携帯の使い過ぎはよくない」とか「リップの塗り過ぎはよくない」とか、そういう野暮なことは言わないでほしい。そんなことはわかっている。わかってて携帯をいじりまくっているし、わかっていてリップを塗りたくっている。他人から見ればどうしようもなくどうでもいい話だ。私だってどうでもいい話だと思いながら、つらつらと書き連ねている。だけど誰にだって常に手元にないと落ち着かない物はあるのではなかろうか。……ないのか?誰かに聞いたことないからわからないけれども、とにかく私にはそういう物がある。それは携帯、リップ、そしてティッシュ。この3点セットが手元にないと落ち着かない。
私は幼い頃から鼻炎で悩んでいた。鼻をかみ続ける毎日。ポケットティッシュは予備を持ち歩くほど重症だった。くしゃみも止まらないし、酷い日には鼻を取ってやろうかと思うほどかみ続けていた。数年前に何故か急に鼻炎症状に我慢できなくなった私は病院に通うことに。本格的な治療が始まる。まずはアレルギーの種類を知るために血液検査を行うことになった。ならばとついでに血液型も調べてもらうことにした。
私はAB型だ。……と言われて育った。二面性があって少しミステリアスな部分がABっぽいなと自分でも思っていたし、クラスに5人程度しかいない超少数なところがいいじゃないかと、ちょっとした自慢でもあった。ミステリアスで孤高のAB型。うっとり要素しかない。そんな孤高に影が落ち始めたのはつい最近、母子手帳を見つけたときから。何気なく見てみるとB型と書かれている。親に問うてみると笑ってごまかされた。AB型の父と兄。B型の母。まぁ、Bの可能性もある。でも私はミステリアスでいたいのだ。少数派でいたいのだ。だからABであることは重要なことなのだ。
……A型だった。私は多数派のベタな血液型だった。今までの人生の中でノーマークだったA。衝撃過ぎてその後のアレルギーの発表は雑に聞いてしまった。何の植物がだめなんだったっけ?唯一覚えているのは猫アレルギーじゃなかったことくらいだ。誰だってその人の中の性格をかき集めりゃ二面性な部分なんてあるだろうし、ミステリアスというか謎な部分があったって不思議ではないだろう。めんどくさい性格とか鬼ネガティブなところとか、なかなか人に心を開かないところとかをABの特徴の中に押し込み過ぎていた。それらを全部称して二面性とかミステリアスとか思い込んでいたのだろう。変えることのできない「仕方のないもの」の中に入れることで直そうとしなかったのか。それは血液型じゃなくても何でもいい。変えることが難しい「仕方がないもの」の押し込めればなんでもいい。目をそらすことができれば何でもいいのだ。だから性格のだめな部分がずっとだめなままなのだ。直した方がいいけど仕方ない。そうやって自分に言い聞かせる。非常によくない。
だらだらと血液型の話をしたけど、実はめちゃくちゃ興味がない。血液型別の特徴とか占いとかもさっぱり興味がない。本当は別にどうでもいい。だけど、手元に携帯とリップとティッシュがないと落ち着かない。だらだらとつらつらとさんざん書いたどうでもいい話。リップの蓋はすごく大切だよねっていう話。
頑張ります!一生懸命頑張ります!!