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杏仁豆腐の話

 中華行ったらほとんどの確率で食べるやつ。中華行かずとも食べちゃうやつ。あの白い甘いやつ。杏仁豆腐。子どもの頃はあんまり好きじゃなかったのに気付いたら好きになっていた。何がきっかけだったのかは全然覚えていない。嫌いな食べものも大人になったら食べられるようになるのは舌の感覚が鈍くなっていくからと聞いた。(別にその後調べたわけじゃないから本当かどうかは知らないけれど。)うーん、だったら嫌いなものは嫌いなままでいいのか。いや、食べられるものが増えた方がたぶんきっと楽しさみたいなものは増していくはず。だから杏仁豆腐を好きになってよかった。食後の楽しみとして杏仁豆腐を買った。どデカイサイズの3個入りパック。……すごく不味かった。食感も味も全部酷くてショックを受けた。絶望した。このどデカサイズ3個入りをどうするべきか。食後用の杏仁豆腐のことですら、ちゃんとショックを受けて絶望しているのだから私の人生はそれなりに忙しい。

 子どもの頃は苦手なものも嫌いなものもいっぱいあった。怖いものだっていっぱいあった。大人になった今でもそれらはやっぱりたくさんあって、克服したものもあるし、逆に新たに追加されたものだってある。克服できたもの……。何だろうか。今でも高い所、狭い所は怖いし、梅も納豆もずっと嫌いだし、英語は当時のままから色褪せることなく苦手だ。思いつかない。さっぱり思いつかない。何かあるはずだと思うけれど何も思いつかない。新たに追加されたものはある。丸の集合体。ある日、突然苦手なことに気付いてしまった。苦手だということを知りたくなかった。気付かずにいたかった。

 救いようがないネガティブな考え方も、明るい考え方なんて掬うほどしか存在しない。昔から変わらない。変えたいと思っているのに。もしかしたら、克服できたり改善できたりできるものって、実はあまりないのかもしれない。それは仕方のないことなのかもしれない。仕方がないことだから努力はしない。好きになるとか克服するとか。私はたぶんずっと高い所も狭い所も嫌いだし、英語もわからないままだ。そして梅も納豆も食べられずに過ごすのだろう。別に無理することはないのだ。(英語はできた方がいいことは十分よくわかっている。)仕方がないことだから。丸の集合体を見て気持ち悪いと思って、ぞわっとし続けるのだ。何でかはわからないけれど、ぞわっとするのだから仕方ない。それなら好きなもの、楽しいことになるべく触れる努力をした方が、きっとテンションが上がる。

 不味い杏仁豆腐を食べたせいでテンションが下がってしまった。だから、代わりに美味しいプリンでも食べよう。できればどデカくて3個入りのものを。どこで売っているんだろう。探さないと。食後用のプリンを探さないといけないのだから、やっぱり私の人生は忙しい。

頑張ります!一生懸命頑張ります!!