ライブの話

　私はライブに行くのが好きだ。できれば毎日行きたい。昼も夜もライブに行きたい。朝は寝たい。休みの日はライブに使う。それ以外で使うなんてもったいない。それくらい好きだっていうだけの話をします。

　そもそもは友人が授業中にこっそりチケットを取ってくれたことから始まる。武道の行事以外で初めて行った武道館は楽しくて、自分みたいな薄暗くて寂しい人生でも、こんなに明るくて楽しい催し物に出くわすことがあるのかと。とてつもない衝撃を受けた。それからはチケットを取って、足繁くライブに通う日々。それが大学生の頃から今現在まで続いている。もっと他に楽しいことがあるだろうと思う人もいるかもしれないが、これしかないのだから仕方がない。

　苦労して取ったチケット。公演が近くなればほんのり思いを馳せることもあるし、前日とか当日になったらそれはもうわくわくしちゃうし、日々に大した楽しみなんてほぼない私にはそれはもうたまらないことなのだ。だからライブがあるその日まで健康でいたいし、絶望しないでいたいと思う。あらゆることに。ネガティブ思考だから、それはわりと難しいことだったりもする。そんなときはヘッドフォンの音量をいつもより大きくしてみる。周りの音なんて聞こえなくなって、お気に入りの音だけが埋め尽くしてくれる。そうやって、少しだけ元気を取り戻す、みたいなことを思ってやってみるけども、聴力が下がったらどうしようとか考えて、すぐ音量を下げてしまう。お気に入りの音だけが埋め尽くすことなんてこないのだ。いつも通りの何も変わらない、色んな音が溢れる毎日を送る。結果、お菓子とか食べたり、寝たりして自力で元気にならなくてはならないのだ。全てはライブに行くために。

　ライブでの一番の心配事は前の席に身長大きい人がくるか問題。平均よりやや身長の低い私にとってはとてつもなく大きな問題である。あと10cm大きくなりたい。何で身長伸びなかったのか……。子どもの頃もっと早く寝ていればよかった。給食のジャンケンで勝ちまくって余った牛乳多めに飲んでカルシウム激取ってたし、ご飯も人並みに食べてたし。あっ、バスケとかバレーとかやってたら何か違ってたのかも。でも、歩きながらドリブルなんてできないし、レシーブを手首で受け止めることもできない。もう一度人生やり直しても私の身長はたぶん今と変わらない。あー、運動神経よくなりたい。

　何回もライブに行くことに「また行くの？」的なことを言われたこともあったけど、うるせぇと。こんなにもどうしようもないほどの多幸感を得られているんだから、元気でいられるんだからいいじゃないかと。たぶん、もっと楽しいことも世の中にはいっぱいあるんだろうけど、これを上回るものにはまだ出合えていない。だから私はライブに行く。明日も行く。わくわくしている。やっぱり毎日行きたい。昼も夜も行きたい。それでも朝は寝ていたいのだけれども。