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計算論的神経科学 第2章-3

「計算論的神経科学」(田中宏和)の第2章についてメモ書きする(part3, p52〜)。身体運動は目的に対し最適化がなされ、規則性が生じている。本章では身体運動における規則性を説明する最適化モデルについて議論している。

リンク系のモデル化

躍度とは加速度の一階時間微分で、躍度最小モデルは外力の滑らかな変化を想定し軌道をモデリングしている、すなわちキネマティクスにおける滑らかさの指標となっている。一方、上腕などリンク系の運動方程式を考慮しておらず、キネマティクスだけで説明できない事象がある。そこで、それらの事象に対しダイナミクスを適用し、位置だけでなく角度を考慮することで説明が可能になる場合がある。躍度最小モデルの力学版として、関節トルク(質点の外力)の時間微分の二乗の時間積分の最小を検討するトルク変化最小モデル(2.24, 2.25, (1.6))が提案された。(2.25)式の最適化問題については前回のnoteで説明したポントリャーギンの最小原理を適応することがでいる。

滑らかさの指標

躍度最小モデル及びトルク変化最小モデルはどちらも滑らかさを追求、最適化するが、滑らかな運動は滑らかさの基準のみから生じるわけではない。これより、滑らかな軌道が見られても脳が用いる最適化の評価関数が何かは定まらない。
ただし、例えば上腕到達運動において2つのうちどちらのモデルを評価しているかを検証した研究がある。具体的な研究方法は本noteでは省くが、結果は感覚フィードバックではなく視覚フィードバックの変化を打ち消すように変化し、これは躍度最小モデルを支持した。ただし、感覚フィードバック(力学的)は視覚フィードバックが用いられない場合に用いられる可能性があり、一概に躍度最小モデルがベターとは限らないかもしれない。



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