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アニメの適切な『長さ』について、漫画の単行本に置き換えて考えてみた。

今現在、テレビアニメはオリジナルも原作付きもほぼほぼ1クールが主流になっていますが、アニメってどれくらいの密度や長さが適切なのか、今回は漫画の単行本を一つの物差しに考えてみようと思います。

アニメ1クールは大まかに言って漫画の単行本4~5巻分が目安と言われてるそうですが、これを具体的にすると、

  • 週刊連載の漫画なら20ページで1話。単行本は10話前後掲載されて200ページが1巻。

  • 1年は50週程度なので、4~5巻であればほぼ週刊誌1年分の連載を1クールで消化する

  • 50話/13話=3.8話なので、アニメ1話あたりなら連載3~4話分の話を1話で消化する

漫画にしたら1年かかるものを、1クールで消費するというのは、すなわち、アニメという媒体は1話あたり漫画の3~4倍の情報量があるということになります。

3倍の情報量があるということは、1話完結の漫画ならオリジナルの展開を入れて間をもたせたりします。一番端的でわかりやすいのはドラえもんで、例えばのび太がひみつ道具の実験をする描写を増やしたりしていますね。

さて、コミカライズという逆にアニメから漫画にする手法もありますが、オリジナルアニメ1話の密度というのは、漫画4~50ページくらいあれば一話分の情報量が過不足なく収まってしまうように思います。となると、大体1クールあたり2巻ちょいくらいとなりますか。

例えば以下に列挙するアニメはいずれも1クールなのですが、例えば『かみちゅ』のコミカライズは1巻あたり196ページ×2巻で終わっていますし、『宇宙よりも遠い場所』は1巻あたり140ページ×3巻で一般的な週刊雑誌の単行本なら2巻よりやや多いくらい、『Do It Yourself!!』は1巻あたり178ページ×3巻で週刊誌なら2巻は軽く超えますが、3巻に行かない程度です。

逆に『超級!機動武闘伝Gガンダム』はアニメ1話=1話100ページとかいうとてつもない量で執筆していたので、26巻というケースもあります。

もっとも、島本先生は大ゴマを多用する作風なので、1話4~50ページくらいに収めたら一般的なコミカライズの1クールあたり2~3巻程度(4クールなので13巻)には収まるのでしょう。

漫画からアニメは80ページ使うのに、アニメ1話から漫画にするのは50ページで事足りるというのは、漫画をアニメにする作業はコマとコマの間を補完する作業であるに対し、アニメを漫画にするのは動いているもののシャッターを切るような取捨選択をする作業ということであり、さらに厳格に本編の長さが21分というタイムリミットがあることを念頭に脚本を書いているからなのだと思います。

と、これまでの話を総合すると、「漫画4~5巻→アニメ1クール程度、アニメ1クール→漫画2~3巻程度」という方程式が浮かび上がってきます。

さて、私の知っているある編集者の方が「1部構成にするなら10~12巻構成が良い」「20巻続いて面白さが維持できた『のだめカンタービレ』は実質二部構成の作品だ」という持論をお持ちで、「『北斗の拳』はレイが死んだのが8巻でラオウが死んだのが12巻で、後はもう勢いがなくなってしまう」などと実例を上げています。

この10巻前後のボリュームが、作中の人物がなにかの目的を成し遂げたり、作者も創作へのモチベーションを保ち、読者の集中力や関心を切らさないのに充分な長さなのかもしれません。

さて、上の方程式を鑑みれば、漫画10巻の長さというのはアニメで言えば大体アニメ4クールということになります。

例えば『装甲騎兵ボトムズ』は4クール52話。『エウレカセブン』が50話、52話の予定が玩具の売上で短縮された『機動戦士ガンダム』は43話構成なのですが、どれも充分にその世界観に引き込まれる見ごたえがある作品ですし、逆に4クールを超えるオリジナルアニメは『太陽の牙ダグラム』くらいでしょうか。

逆に短くするとなると、映画の2時間という尺が一つの目安になるかと思いますし、人間の集中力の限界もそのくらいと聞いたことがあるのですが、アニメの1クールは21分×13話として計算したら=273分となります。確かにそのくらいの尺のある映画はなくはないですが、『風と共に去りぬ』でも222分ということを考えたらかなりの長尺です。

続編ができても困らないような脚本にするというのは良くあるにしても、最初から300分近くの映画とか、続編前提の二部構成というのはあまり聞きません。ヒットすれば続編を作ろうという方が圧倒的に多いでしょう。

となると現状の1クールアニメって帯に短し襷に長しという感じなのかなと思ってしまうのです。

実際のところ1クールのアニメが終わったら続編は映画というのはよくあるわけですし、それは制作体力が落ちているということもあるのでしょうが、1クールアニメが本来、中途半端な長さであるということにも由来するのです。

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