ニュージーランドの中絶

はじめに

この記事はニュージーランドの中絶について情報提供をしていますが、中絶を勧める記事でも、反対する記事でもありません。
良し悪しの議論もあるとは思いますが、それは各個人の価値観によるものであり、本人の選択の自由です。中絶しなければいけない状況もあり、ある特定の観点から判断して、「良い」「悪い」とは言い切れません。

アフターピルと避妊オプションについての記事でも触れましたが、「知らないこと」が自分の選択肢を狭めている可能性があり、知識があることが、自分で自分の身を守ることにもつながると考えています。中絶は日本でも法律上認められていますが、ニュージーランドの中絶は選択肢が日本のそれとは少し違います。

ニュージーランドの中絶方法

early medical abortion (EMA) 初期内服中絶surgical abortion外科的中絶があり、双方いくつかの事前テストが必要。

EMA 初期内服中絶とは?

妊娠9週(63日)以下の妊婦が対象で、内服により自然流産に似た流産を引き起こします。2種類の薬を時間をあけて内服し、通常は2日間に渡ります。妊娠7週以下の場合は同日に内服できる場合も。内服が完了したら自宅へ戻ります。重い出血と腹痛が起こりがちで、緊急事に医療機関に電話できるようサポートする人が必要です。2回目の内服を終えて4〜6時間後から強い腹痛が起こる場合が多いです。妊娠週数によるが97〜99%の確率で妊娠は中断されます。失敗した場合は外科的手術の適応。前後2回の血液検査が必要です。

Stage 1 - First medicine and blood test (day one).
 1回目の内服と採血(1日目)
Stage 2 - Second medicine (may be same day or 24 to 48 hours later).
 2回目の内服(同日か、24〜48時間後)
Stage 3 - Blood test one week later.
 1週間後に再採血

EMA 初期内服中絶のメリット
流産に似ており自然な方法
早い段階から実施可能
自宅で人のサポートを受けながら実施できる
(失敗しない限りは)手術ではない

EMA 初期内服中絶のデメリット
数日を要し、数回病院に足を運ぶ必要がある
流産にどのぐらいかかるか予測できない
腹痛が非常に強く長時間にわたる可能性あり
妊娠週数によるが、失敗する確率がわずかに高い

外科的中絶とは?

通常は妊娠12週と6日までの場合に適応。病院を訪問回数はEMAより少なくて済むが、中絶処置後2週間後に採血する必要があります。処置の所要時間は3〜5分ですが、病院には1〜3時間滞在することになります。処置後の出血はEMAより軽く、少ないことが多いです。何も苦痛を感じない人がいる一方、腹痛や腹部不快感を示す人もいます。通常99%成功し、失敗した場合は再処置となります。EMAと比較して外科的中絶の方が予測可能であり、ほとんどの人が同じ効果を得ます。

外科的中絶のメリット
早い、数分で終わる
処置中、処置後とも腹痛や出血が少ない
高確率で成功する

外科的中絶のデメリット
妊娠初期にはできないかもしれない
外科的処置である
手順を主体的にはコントロールしにくい(受動的)

中絶に関する法律

ニュージーランドで中絶は合法妊娠20週以下の場合可能。
妊娠20週を過ぎてからは専門医が臨床的に適切だと判断した場合のみ可能。その場合専門医は少なくてももう一人の専門医にコンサルトする必要があり、法律、専門性、倫理、妊婦の身体・精神・全体的なwell-being、胎児の状況を考慮する必要がある。
中絶に関わる法律は多数ある。
中絶は専門医によって実施される場合のみ合法で、個人輸入した薬での中絶は違法。

中絶の年齢制限はなし
何歳であっても中絶のコンサルトができ、中絶を実施することも妊娠を継続することもできます。そして、誰にこのことを伝えるかもあなたが決めることができます。それにはパートナーや両親も含まれます。10代の場合は親や信頼できる大人に相談することが良いと思います。中絶を考慮している場合は親からのサポートがあると良いと思います。カウンセリングもオファーできます。

Conscientious objection(良心的な反対)って何?
良心的な反対とは、避妊や中絶を良しとしない人がいる状況のことです。
彼らが避妊や中絶に反対や助言することは法律上要求されていません。彼らは即座に反対してきますが、それについては法律上規制があります。
中絶に対し身元保証人は必要か? 不要。

相談の窓口

ニュージーランド保健省の中絶ライン
You can phone the Ministry of Health’s Abortion Line on 0800 499 500. This is available 8am to 5pm on weekdays and 10am to 2pm on weekends.

ヘルスライン(通訳サポートあり)
You can call Healthline on 0800 611 116. This is available 24 hours a day, 7 days a week. They have interpreters available.

もしくはFamily Planningかかりつけ医

費用

ニュージーランドでは、ほとんどの中絶サービスと関連するカウンセリングサービスは、公的医療費の対象となる妊娠中の人は無料で受けられます。ただし、超音波検査の費用が必要な場合があります。

ニュージーランドに居住権がある場合は無料のようです。
居住権がない場合(学生VISA、ワーキングホリデーVISA、他)はどの程度費用がかかるのでしょうか?それ以前に、受け入れてくれる病院はあるのでしょうか?

居住権がない人の中絶を受け入れていない病院もあり、Abortion Services in New Zealand の居住権がない人の中絶コストによると、ニュージーランド国内で対応している病院は17箇所。「EMA初期内服中絶」「外科的中絶(局所麻酔)」「外科的中絶(全身麻酔)」全てを受け入れてくれるところは1箇所しかなく、他はそのうちの1つ、2つは受けているようです。住んでいる地域に対象となる病院がない可能性もあるかもしれません。

EMA 初期内服中絶:$840〜2,340
外科的中絶(局所麻酔):$950〜2,340
外科的中絶(全身麻酔):$1,991〜3,158
費用は病院によって大きく差があり、診察費・超音波検査費を含む/別途必要か等も病院によって様々でした。

最後に

妊娠が発覚し、中絶を選択するとなると、身体的な変化だけでなく精神的にも非常に大きなストレスがのしかかります。さらに、居住権がないと高額な中絶費用を負担しなければなりません。
自分の体のことを第一に考えて、妊娠を望まない場合は避妊をしましょう。性感染症防止のためにコンドームも使用しましょう。もし避妊に失敗してしまうことがあってもアフターピルを内服できる可能性があります。

性生活は、自分とパートナー間の大切で親密なものです。
アフターピルや避妊のオプションついて知識をもち、自分の体を守る方法としてみんなが正しく使用できるようにと切に願っています。
中絶に関しては「ちゃんと避妊してるし大丈夫」と思ってる人もいるかもしれませんが、成功率100%の避妊方法はありません!!!確率はとても少ないかもしれませんが、避妊していても、アフターピルを飲んでも、妊娠してしまう可能性はあります。そういう状況がもし、もし、自分や周りの人に訪れた時に、日本語の情報が少しでもあったら助けになるかもしれないな、と思ってnoteに書きました。中絶が自分の身に訪れることがなくても、知っておいて損にはならない情報だと思います。
わたしもまだまだ勉強中ですが、正しい知識をしっかりと身につけて、自分の身を守る選択や行動が取れたらいいなと思っています。
現時点での情報ですので、今後変更されることもあると思います。この情報だけが全てではないので、最後はしっかり一次情報を確認して対応していただきたいです。

あれやこれや

今回の記事を書くにあたって、保健省やFamily Planning、Abortion Services in New Zealand のウェブサイトを読み漁りましたが、わたし自身も大変勉強になりました。EMA 初期内服中絶は今のところ日本では未認可で、日本で中絶というと必然的に外科的中絶を指すのですが、その際、基本的には手術の同意書には当事者とパートナーのサインが必要です。
日本での中絶は「母体保護法」に基づいて行われる必要があり、「第14条 〜略〜 本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる」と定められています。日本で中絶をする際には基本的には双方の同意が必要。しかし、妊娠が発覚した途端音信不通になった、認知してくれない、国外に行った、死亡した、性的暴力を受けた、などの場合は当事者の同意のみで手術を受けることができるとのことでした。ただし、パートナーが中絶に同意せずに反対している場合は中絶はできない。(え!?!?)未成年の場合は保護者の同意が必要です。

先日のアフターピルや避妊の記事にも今回の記事にも「自分の身を自分で守るために」と書いたけど、だからって女性だけを対象にしてるつもりはない。男性にも正しい知識を知ってもらいたい。ふたりのことやから、お互い話し合って避妊方法考えたり、性感染症の検査受けたり、もし中絶することになったらどうなるか一緒に勉強したりできたら理想なのかなって思う。
一方、妊娠は生物学上の女性にのみ起こりうることで、身体も精神もすごく影響されるし、色んなリスクを背負わなければいけないのは女性だけ。なのに「原則両方の同意が必要」「わたしは中絶したい、でもパートナーは認知しているが中絶には反対しているという状況で原則中絶できない」という法律・・・。深堀は控えますが、なんでやねんって思いました。安易に中絶に賛成しているわけではもちろん無い。身体的にも、精神的にも、金銭的にも、もしかしたら社会的にも(そんなことはあってはならないしそうでは無いと望むけど)大きな負担を背負うことになるかもしれないし、しなくていいならしない方がいい。でもいざという時の女性の人権は・・・?って思ってしまいました。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

引用部分は全てFamily Planning Associationより

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