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庵野監督と俺の適切な距離感を探ってみる

シン仮面ライダーは好きだが、やっぱり歪だ。

庵野さんはハッピーエンドを描こうとするとぎこちない。

観客の観たいものを描こうとするが、その描き方は分からない。変な演出で緑川兄妹のバッドエンドを描くよりも、仲直りして平和に暮らす姿を描くほうが見てる人にとっては良いんだろうなという想像はできるが、その過程をどう描くべきかはよくわからない。なぜなら庵野さんの本性は「Air/まごころを、君に」だからだ。

庵野さんは関係性を健全に構築する姿を描けない。

だからミサトさんは破で「行きなさい、あなた自身の願いのために」と言ったあとにQで「碇シンジくん、あなたはもう何もしないで」と言う。ミサトさんはシンジくんの辛さに寄り添い、現状を丁寧に説明し、一緒に戦ってもらうなんてことができない。関係性を健全に構築できない。(それは庵野さんなりの「これが面白いでしょ!」なのかもしれない。)

庵野さんにとって敵とは処理すべき出来事でしかない。

だからオーグが爆速で昇天してしまう。エヴァやシンゴジラのような評判の良い作品ではそれがうまく効いている。使徒もゴジラも意思や悪意を見せない。そういう敵を相手する物語を描くと、庵野さんの特性が輝く。だが、オーグや外星人のような個性を持ち、意思を持っている敵が出てくる作品だと、物足りなさが出てしまう。つまり敵の個性を描き、それをストーリーの深みにすることなしに、倒してしまうから、観客としては「もっと見たい」と思ってしまう。

庵野さんには正義がない。

救うべき何かを持っていない。だから人命救助や市民の暮らしに興味がない。描かない。ただただ戦う姿を描くほうが得意だ。善意も悪意もない。だから官僚や政府や公安がただ仕事をする。権力批判や足の引っ張り合いを描くことはしない。内的動機が薄い。外に対する怒りの感情とその発露がない。そのためエヴァのような戦いたくない主人公が戦う物語の方が面白く描ける。内的な葛藤の方が外側との摩擦よりも庵野さんにとっては描きやすいのだろう。

総合すると、庵野さんは普通の良い話を作れなくて、外側への積極的な介入をする話を描けない。これは庵野監督批判ではなく、逆に庵野監督に寄り添った論考だ。


庵野監督が描くべきだったシン仮面ライダーを妄想してみる。これは庵野監督批判ではなく、逆に庵野監督に寄り添った行為だ。

本郷猛が暴力の加減をできずに悩むことにフォーカスするべきだった。ショッカーは本郷猛にとって悩みの種だ。それは何もショッカーがみんなにとって悪いことをするからではない。ショッカーが本郷を襲いに来るたびに本郷は何人もの人をなぶり殺さなければいけないからだ。彼の内的葛藤だ。善と悪の対立ではなく、戦いたくはないが、戦わざるを得ない仮面ライダーを描くべきだった。こちらからショッカーを倒しに行くのではなく、あちらからこちらにやってくる。それはすなわちエヴァであり、シンジくんでしかないけれど。

ただ、庵野さんが描けるのはそのレンジでしかないんじゃないかと思ってきた。内発的に動く正義の男は描けないから、本郷猛に心が惹かれない。

健全な関係性を描けないから本郷猛とルリ子との関係性もそれほど魅力的じゃない。もっとルリ子をツンデレにしたり、ヤンデレにしたり、言動不一致甚だしい支離滅裂キャラにして、歪な関係性にしたら良かった。そしたら見ごたえがあっただろう。

本郷に僕は人を守りたいとか言わせるべきじゃなかった。父の話もいらない。というか全てをギクシャクしたものにするべきだった。庵野さんに良い話は描けない。父が仕事一筋でクソ野郎だったけど、実は母さんを愛してて息子のことも考えてたとか、そういう話にすべてをチューニングするべきだった。庵野さんにそれ以外の心情描写はできないんじゃないだろうか。

とにかくシン仮面ライダーは庵野さんにとって最悪の条件が揃ってしまったと思う。庵野さんの不得意なことをやりまくったせいでこの映画が面白い庵野映画ではなかったのだと色々と考えた末、腹落ちした。そして庵野さんはこういう企画に不向きな人なのだとも気づいた。ユニバースっぽく色々なものを描かせてはいけない。エヴァとシンゴジの一点突破で作品を作るべきだ。

庵野さんはだいぶ得意不得意が分かれる監督だと自分に言い聞かせ、これからは庵野監督作品を見ようと思う。

エヴァンゲリオン最高!!!!

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