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【中学3年生】放物線の学び方【放物線定規】

「放物線とはどのような曲線ですか?」

 二次関数のグラフの形状は放物線です。みなさんは放物線のグラフをどのように書いていましたか?それらしく書いていませんでしたか?

 今回は曖昧な教え方となっている放物線について,放物線定規を作って,実際に使ってみることで,放物線の性質を実感する授業をデザインしました。

1.授業計画

 中等教育で最初に学ぶ2次曲線は中学3年生で習う放物線です。y=ax^2の一般形で放物線を学びますが,グラフの作図方法の多くが,一般形を満たすxとyの組を求め,その点をグラフ用紙にプロットし,滑らかにそれらしく曲線で結ぶ方法です。つまり,数学Ⅲで2次曲線を学ぶまで,理由もわからず,それとなく放物線を描き続けることとなるのが現状です。本来は学ばない焦点と準線を紹介することを通じて放物線の定義を理解し,作図定規を作成することで放物線の理解を深めることを目指します。
 この授業は,教科書に沿って関数y=ax^2とそのグラフを学んだ後に,その発展の時間として設定しました。

1時間目:身の回りにある放物線を見つける。

 噴水やホームラン,パラボラアンテナなど身のまわりにある曲線から放物線を見つけることで,自分自身が放物線かどうかをどのように判別しているのかを客観的に知ることができる。

2時間目:それが放物線である根拠と必要性を明らかにする。

 放物線の判断基準を明確にし,一般化していくことで,放物線の定義を見つけることができる。

3時間目:放物線の定義から,放物線を描ける定規を作る。

 焦点からの距離と準線からの距離が等しいことを利用した定規を作り,放物線を作図することで,放物線が規則的な曲線であることを実感する。

2.授業の様子

 1時間目はグループごとに校内を歩き回り,放物線を探しました。また,インターネットでも探し,Jamboardにまとめました。下の画像は最も多くの候補を挙げたグループの1枚ですが,曲線があるものを選んでいることがわかります。

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 2時間目は各グループに共通して挙げられていた候補を中心に15種類の候補について,放物線だと思うか,またその理由をGoogle form経由で個人に回答してもらいました。放物線の例として有名なパラボラアンテナは高い正答率ですが,判断した理由には興味深い回答も含まれています。また,懸垂曲線である吊り橋のアーチに関しても面白い回答が見て取れます。この結果を踏まえ,なぜパラボラアンテナは放物線なのか,放物線とはどのような曲線なのか,焦点と準線の言葉も紹介しながら説明しました。

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 3時間目はいよいよ放物線定規の作成です。生徒には材料と接着剤,作り方の動画を用意しました。貼り付け位置や接着剤の固定に四苦八苦はしたものの,無事に作ることができました。

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 作成した後は用意しておいた放物線定規の使い方と一緒にノートに実際に書いてみました。強力なネオジム磁石でも固定が難しかったので,絶妙な力加減で使わなければいけなかったのですが,なんとか放物線らしく書くことができました。生徒からは「本当に書ける!」といった感想を得ることができました。動画ではオンラインで授業を受けている生徒向けに,家でも作れる放物線定規も紹介しました。

 1次関数の直線は定規で書き,円はコンパスで書けるように,放物線にも定規があることで,ある規則に従った曲線であることを実感したようです。授業前のアンケートでは放物線についてU字型楕円型といった表現が目立ちましたが,授業後のアンケートではこの割合がグッと減りました。この点からも一定の効果があったのかなと思いました。

3.最後に

 この授業で最も大変だったことは材料の準備でした。生徒に材料の切り出しからさせてしまっては日が暮れそうだったので,事前に約100セットを用意しました。下にリンクしている作り方の動画の後半に材料の作り方も紹介しています。よろしければご覧ください。

 ただ,放物線定規の遊び方の動画でも紹介しているように,定規2つと紐,テープがあれば実践することができます。一から専用の定規を作ることは難しくとも,放物線の定義を実感する授業を行うことは簡単です。ぜひ試してみてください。

 この授業実践は公益財団法人日本教育科学研究所令和3年度研究実践校として行いました。詳しい内容は日本教育科学研究所で発行予定の「教育研究情報」をご覧ください。

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