【短編】月が綺麗だったね。

僕は文学が嫌いだから
多くの言葉を知らなくて
ごめんねごめんね
美しい言葉なんて
何も知らないから

好きとか嫌いとか
美味しいとか不味いとか
暗いとか明るいとか
そんな言葉でしか
この世界を計れないよ。

今日の真ん丸なお月様を
君も見ていたのなら
今日の月は綺麗だったねって
同じ言葉を言えるのかな。

いくつになっても
何年経っても
僕は僕のまま
ずっと変わりはなくて
でも歳ばかりは重ねてしまって
他人に期待なんかしなくなって
だから人に優しくなって
でも、言葉は
いくつになっても増えないから

好きと嫌いとでしか
この世界を計れないよ。

ここからそこへは
何キロなんだろう
Googleマップを開けば
きっと分かるんだろうけど
君の住所は知らないけれど
でも
実際の距離よりも
きっとずっと離れてるから
少しでも近づきたいけれど
終電は無くなっちゃったから
タクシーに乗れるだけの
お金もなければ
車も免許も持ってないから

今日の月は綺麗だったねって
言葉だけで
この距離が埋まるといいななんて
そんなことを願うんだ。