「片頭痛とは」
コロナで絶賛ニートDr.のEmmaです。せっかく医師免許を持っていることを思い出したので(笑)、これから、少しずつ、皆さんの身近な疾患について、医学知識をシェアできたらと思いました。第一回は、「片頭痛」です。
1、片頭痛は治らない!
私の周囲にも、片頭痛持ちはかなり多いのですが、皆さん意外と正しい治療方法を知る機会がないようです。かくいう私も、医療者のくせに、「頭痛外来」で勤務をするようになって初めて、自分が片頭痛だと知ったほど。
片頭痛は、大人になって発症すると、基本的に治ることはありません。従って、上手にお薬と付き合っていくことがとても大切になります。
しかしながら、頭痛には複数の種類があり、片頭痛持ちの患者さんのほとんどが、他の原因での頭痛も合併しています。
これが、片頭痛に対する「治療意識」を低下させている一つの要因になってしまっています。
そこで、まずは、頭痛の種類から解説しましょう。
2、頭痛の種類
頭痛には、検査で異常が出ず、、原因となる病気がないにも関わらず繰り返し起こる「一時性頭痛」と、時に生命に関わるような重大な病気が原因で起こる「二次性頭痛」とがあります。
(単なる風邪や二日酔いに伴う頭痛など、ごく一般的な日常生活に伴う頭痛は、原因が解消されれば自然に治るので、ここでは割愛しますね)
片頭痛は、多くの場合、肩こりや眼精疲労などから来る「緊張性頭痛」とを合併しているケースがほとんどです。頭痛が起きた時、「どちらか分からない」ということも珍しくはありませんが、片頭痛は多くの場合、寝込んでしまい、生活に多大な支障を来す為、正確に特徴を掴み、区別を知っておく必要があります。
3、片頭痛の症状・疫学
頭の片側や、両側がズキンズキン・ガンガン・・・。医学的には「拍動性頭痛」と呼びますが、片頭痛の症状は、平たく言うと、頭の中で「スーパーマリオ」が走り回っているか、ハンマー持ってる亀みたいなやつ(息子によると、ハンマーブロスと呼ぶらしい)が、頭の中掘ってるとしか思えない「あの痛み」です。
発作を起こす前に、光がチカチカする発作(閃輝暗点と呼びます)という前兆がある方や、嘔吐・吐き気を伴う患者さんも一定数おられます。
私自身は、片頭痛に対する治療薬の存在を知る前は、頭痛がひどくなってくると、もう頭を1ミクロも動かすことが出来ずにひたすら直立不動で横になって、音を遮断し、ひたすら眠ることに徹底していました。
片頭痛の患者さんには、もちろん男性の方もいらっしゃいますが、外来をしていた時の感覚では、女性が非常に多かった印象があります(疫学的にも、女性の罹患率がかなり高いことが分かっています)
片頭痛を引き起こす要因は、気圧の変化(季節が変化する時・梅雨どき・台風が近づく等)・寝不足・疲労・入浴など、人により様々ですが、女性の場合は月経前や月経不順など、女性ホルモンに関連して発症する方が多いようです。
4、片頭痛の治療法
片頭痛の治療としては、ごく一般的な「ロキソニン」や「カロナール(=アセトアミノフェン。いわゆる、小児用バファリンですね)」をサクッと内服して改善する場合もありますが、これらは片頭痛専用のお薬ではない上、市販でも入手可能な為、強い片頭痛にはなかなか効果が得られず、うっかり飲みすぎてしまい、知らない間に、「薬物乱用頭痛」に陥ってしまっているケースも少なくありません。
薬物乱用頭痛
「薬物乱用頭痛」とは、もともと片頭痛などの頭痛を持っている人が、頭痛薬の飲み過ぎにより、かえってほぼ毎日頭痛が起こるようになった状態を指します。市販鎮痛薬の飲み過ぎによるものが多いですが、医師から処方された薬によっても起こります。
(目安としては、月に10回以上頭痛薬を内服している、薬をいくら飲んでも頭痛が改善しない、などがあります)
トリプタン製剤
頭痛専用の痛み止めとして「マクサルト」や「イミグラン」・「アマージ」といった、トリプタン製剤と呼ばれるお薬群があります。マクサルトは、お口の中で溶ける錠剤(OD錠)、イミグランは点鼻薬、アマージは長時間の薬効がある錠剤になります。
これらトリプタン製剤の重要なポイントは、「頭の中でマリオの突貫工事、始まったか?!」という、片頭痛が始まってすぐに使用するという点にあります。このタイミングで内服すると、マリオ達を頭から追い出すことに成功しますし、光や音過敏・吐き気も改善しますが、タイミングを失すると、絶望的な片頭痛へのコースまっしぐらです。
ちなみに、「片頭痛発作が起きた後、ぐっすり眠ったら良く治った!」という経験をされた方も多いと思います。
実はこのトリプタン製剤、平たく言うと炎症の放出を抑えると共に、異常に拡張した脳の血管を収縮させる作用によって頭痛を改善させるメカニズムなんですね。よって、トリプタン製剤を使用すると、副作用として、大抵の場合、眠くなります。
「眠ることによって、異常に拡張してしまった脳血管を(収縮し)元に戻す」という観点から言えば、眠ることで片頭痛を改善させるというのは、医学的に理にかなっているわけです。
まずは頭痛外来を受診
頭痛外来の先生であれば、問診で片頭痛か否かを診断できます。片頭痛に悩んでいらっしゃる方は、まずはきちんと頭痛外来を受診し、自分に合ったトリプタン製剤を手元に常に持ち(最大、1回の受診で10個まで処方可能です)、自分で内服ないし点鼻するタイミングを見つけ出すことが、うまく付き合っていくコツなのです。
また、頭痛外来では、片頭痛の予防薬も処方してもらえます。いくつか種類があるので、自分に合う予防薬が見つかれば、片頭痛発作そのものをかなり抑制する事も可能です。
次回は、他の頭痛について解説していきましょう!
(注:お薬の詳しい作用機序や専門用語は、読みづらくなる為、敢えて言及致しませんでした。頭痛専門のドクターの観点から見て、内容に万が一誤っている部分があれば、ご教示頂ければ幸いです)
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