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キャリコンのひとりごと

その方の電話での第一声に言葉を失った。

「母がご迷惑をおかけしてすみません。」


その前日に予約相談に来て、予定通りに進まなかったことについて、帰宅後に母親から電話が来たのだけど、その時には私は退勤していて、出た者がとばっちりを受けたという話を翌日出勤した途端に上司に言われた。

母親が言っていることと、その方と私の間で取り交わされたやりとりに相違がある。でも、まあきっと話も聞かずに激昂したんだろうなと考えて、前日電話を受けた同僚のメモには本人に電話せよとなっていたけれど、まずは本人がどこまで伝えられたのかについて確認しようと母親に電話をした。
一晩経って頭が冷えたらしい母親はいつものようにいろんなことをペラペラ喋り、昨日の人には悪いことしましたすみませんとまで言っていた。

ただ、昨日、どうして予定通りに進まなかったのか、それにはその方本人の希望が関係しているので、「ご本人の希望が〇〇だってことは、お母様、聞いていらっしゃいましたか?」と問うと、「えええええ?そうなんですか?いやだ、あの子ちっともそんなこと言わないから・・・」という。
うん、だろうね。きっと言う間も無かったよね。

その後に本人へ電話したら、第一声がこれだ。
私には、これまで数ヶ月関わってきて、初めて聞いたその方の心からの言葉だったように思えた。

療育手帳を持っているけど特別支援は受けて来ず、普通級から専門学校へ進学した方で、その専門学校から無理だと言われて私のところにきた方。(いや、ホントは私じゃないのよ。別な窓口があるのよ。)
対応しながらも、ものごとの理解の部分が少し難しいと思っていた。

毎回必ず今日の整理と次回までにすることを順序立ててメモを取らせ、母親に見せるように言ってきた。
けど、その順序を飛ばして最後だけやってきちゃうから不備が出てやり直しになることもあった。(母親と一緒にやっているはずなんだけどなあ)
それを再度いちからやってもらうことは、その方にはずいぶんと過酷な要求だったのかもしれない。「やったのにどうしてダメなんですか?」と電話をしてくる母親に手順を説明して、やり過ぎちゃっているところ、やれていないところをひとつずつ潰して行くという長い道のりを費やして来た。

いつも、その方に「どうする?」と聞くと「〇〇にしなさいって・・・」というので、「それは誰が言ったの(考えたの)?」と聞くとムキになって「自分です」と答える。多分、親がこうしなさいと言ったことを、対外的には自分の考えたこととして言ってきたんだろうな。
これまでの育ち方が端々に見える方だ。

「母がご迷惑をおかけしてすみません」
見てるんだよね、わかってるんだよね。きっとこれまで母親は、その方本人が所属している先と、いつも対決姿勢になっていたんだよね。
見てきたんだろうなぁ・・・と思うと切なくなった。

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