#3 アニー・エルノー「シンプルな情熱」 2022年度ノーベル文学賞記念企画「♪制服の胸のボタンを」 の感想

※これはポッドキャスト番組「翻訳文学試食会」の感想です


今回の本

今回のキーワード

  • 小林明子とテレサ・テンが頭の中で流れる

  • 高級な姦通小説、すごく読ませる訳、読後感悪くない

  • ありふれた不倫、普通すぎて渡辺淳一なら許さない

  • 恋愛小説の見本帖のような小説

  • 他者に欲望する、欲望される究極の形、純愛の極北

  • ルソー『告白』、フローベール『ボヴァリー夫人』フランス文学の正当な流れの中で書かれている

  • 社会が書かれていない、物足りない、必然性が描かれていない、感情のスイッチを無理やり押して読む、固有性がどの程度なのか?

  • 私的に読めるかどうか(文庫解説にからめて)

  • シンデレラ効果のある男性、みんな日記を公開したら小説になるのか?

共感できるかで評価まっぷたつの小説=恋愛小説

解説によると、この小説は刊行された後、フランス国内でも賛否両論まっぷたつだったそうだ。面白いのは「可もなく不可もなく」のような中間的意見がほとんどなかったという点。これは女性が共感度高いんだろうなーと思いきや、男性読者からも「自分も激しい恋にのめり込んだことがある。自分が秘めていた体験に言葉を与えてくれて感謝する」というファンレターが届いたそうだ。
恋愛小説というのはいかに共感しながら読めるか、が醍醐味だと思うので、「わかる!」度合いが高ければ高いほどこの小説は刺さるんだと思う。(文庫版解説参照!)
そういう意味では山田詠美がお勧めしていたのもわかる。恋愛真っ最中というのは、今まで普通に聞き流していたラブソングが「私のことを歌っているようだ」と大いなる錯覚を起こすのが楽しいのだし、どれだけ他人からアホらしいと思われても「他人のことなど知るか」という状態なのだから。
私が笑ったのが自分が恋をしているAに似ている風貌の男性を憎む、と言っているところ。『彼(A)の特徴を、私がどうでもよく思っている別人が持っているのは、今や詐称行為のようなものだった。私はその男たちが相変わらずAに似ているのが気に入らなくて、彼らを憎んだ』ってずいぶんじゃないか。

「母の恋人たちなんて、母に夢を見させるのに役立っただけよ」それ以上に有益などんな役立ち方があるというのだろう?

本文より

映画化作品

Amazonプライムにあるな。見てみようかな。『ロシア大使館に勤めるアレクサンドル』って手の甲までタトゥーごりごりだけどどうなんだよ




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