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第二次世界大戦時にドイツが英領ジブラルタルを占領していれば?[第4回目]

~ 映画や書籍で考える歴史と時事 ~

前回の記事にて、ジブラルタル攻略後におけるドイツの進撃について述べた。史実とは異なり、地中海や北アフリカで快進撃を成し遂げたであろうことが予想される。

しかし、それだけではドイツが望むような形の終戦はありえない。

このときのイギリスはどのような状況になっているのであろうか。

おそらくイギリス本土はまだ健全な状態であろう。史実では独軍の英本土侵攻「アシカ作戦」が存在していたものの、制空権の戦いに失敗して未発動で終わっている。


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英本土航空決戦


このIF世界においても未発動もしくは、発動であったとしても散々たる結果になっていたであろう。かつて1974年のイギリスにおいて当時の英独関係者を集め、イギリス上陸作戦のシミュレーションが実施されたことがあり、そこでの結論は「侵攻失敗」であった。以下にウィキペディアの記事を掲載しておく。


大戦後1974年にイギリス陸軍のサンドハースト王立陸軍士官学校において、大戦当時のイギリスおよびドイツ両軍の関係者を集めてイギリス上陸作戦の模擬演習(シミュレーション)が行われた。ドイツ側参加者にはアドルフ・ガーランドもいた。ドイツ軍は制空権を確保できていないものの、イギリス海峡を機雷で封鎖することによってはしけの安全を確保し、最初の上陸が成功したという条件で行われた。シミュレーションの展開および結果は以下のようなものだった。

上陸成功後、ドイツ軍は海岸での橋頭堡を確保し、内陸部への侵攻を開始した。これに対し、イギリス軍はGHQライン(上陸を想定した防衛ライン)まで遅滞戦闘を行い、ドイツ軍の進軍速度の低下につとめた。ドイツ軍はイギリス空軍に海上輸送を妨害され、装甲部隊の不足から積極的に攻勢を仕掛けることが出来なかった。稼いだ時間を利用して、イギリス軍は第一次世界大戦に従軍した老人や子供から成る郷土防衛隊を動員し、防衛線を構築する。同時に初期攻勢で損害を受けた正規軍を再編成し、戦線に復帰させた。ドイツ軍が防衛線を突破できないまま、数日間対峙が続き、やがて機雷原を突破したスカパ・フローから出撃したイギリス海軍がイギリス海峡に到着する。ドイツ軍の海上輸送は破壊され、補給と増援が途絶えた。消耗していったドイツ軍は降伏を余儀なくされ、侵攻は失敗した。


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現実的にはドイツがイギリス海軍を上回る艦艇を有しないことには、英本土攻略の成功はまずもってありえない。海軍力というものは短期間では拡大できるものではなく、まして組織的運用や練度の向上まで含めると戦争期間中に間に合わせるのは不可能である。

そのようなことが可能なのは、世界最大の工業力と海軍の基盤が確立しているアメリカだけではなかろうか。

現実的にドイツがとりえる道としては、イギリスの海外領土や保護国等を逐次占領し、潜水艦等でシーレーンに打撃を与え、英本土を経済的・心理的に追い込むことである。その成果をもってイギリスとの和平もしくは休戦にもちこむしか方法がない。

とはいえ本土が健全なイギリスは、そう簡単には外交交渉には応じないであろう。特に戦争継続を掲げるチャーチル政権が続く限りにおいては。


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ウィストン・チャーチル


チャーチルが継戦に固執できる源泉には「アメリカを参戦させる」という目論見があるからであろう。しかし同時に、更に別の道も模索している可能性を見逃してはならない。(→ 続き


〇 参考映画等


〇 映画や書籍で考える歴史と時事


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