2020年に読んだ本ベスト11(順不同・マンガ含)
他の方のブログを読んでいて、年ごとにまとめるのいいな、と思ったので選んでみます。私が今年読んだ本ですので、今年刊行ではないものが複数含まれています。
ジャンルもごちゃまぜ、後半はマンガ、独断と偏見です!書き始めたら11個になっちゃったけどどれも削れないからベスト11で行きます!自由!
居るのはつらいよ
一時期少し暇な部署にいたことがあったのだけれど、暇なんて最高、と思っていたはずなのに意外と辛かった。
暇なところに「ただ居る」のは辛い。でもそれなら、「すること」がたくさんあったらいいのか? というとそういうわけでもない。「ただ居る」ことを目的とするケアの場面に立ち会い、その意味を問い直していく本だけれど、語り口は平易でとても面白く読める。
保健室のアン・ウニョン先生
これに限らず今年は韓国人作家の本をよく読んだけれど、とりわけチョン・セランを好きになった。まずエンタメとして楽しい。バランスがいい。そして説教くさいのとはまったく違う、だけどその倫理に打たれる。「屋上で会いましょう」や「フィフティ・ピープル」もよかった。
韓国の女性作家さんの、「後の世代のために女性差別を放っておいてはいけない」という姿勢は本当に素晴らしいと思う。私のことはいい。だけど、次の世代のために。
あの子はもういない
韓国文学からもうひとつ、最近はSFなども少し翻訳されてきているけれど、エンタメ寄りな作品は日本での紹介はまだ少ない。これは完全にごりごりのスリラー。
リアリティ番組に出たことで人生がめちゃくちゃになった家族、という魅力的なテーマを扱い、韓国映画によくあるようなどす黒い事件と、ままならない姉妹愛の両方が描かれる。意外に読後感がいいところも韓国映画に似ている。
「国語」から旅立って
私は当たり前に日本語を母語として、日本語で書いている。バイリンガルの人がいたりすると、「うらやましい!」と素朴に思ったりする。だけどそれは、どちらの言語にも完全には属さない宙ぶらりんさと地続きでもある。
うらやましい、と思っていた側の苦悩を全然想像できていなかったことに気づかされた。母語でない言語で書く、ということについては韓国で生まれた作家が大人になってから習得したフランス語で書いたというハン・ガン「砂漠が街に入り込んだ日」も面白かった。
羆風
矢口高雄先生の訃報を機に手に取った本。ゴールデンカムイを読んでいるので、羆はやばいということは知ってはいたつもりだけれど、サスペンスかミステリかというような形で平穏な村の情景とそこに生きていた人たちのリアルな姿が描かれ、そして残酷な死が起こるのではらはらしながら読了した。
後になってみればこういう事件、として客観的に捕らえられるけれど、当時は本当に恐ろしい、天災みたいなことだったのだろうなと思う。細かくリアルな自然描写がすごい。
鬼才 五社英雄の生涯
力強く、血しぶきがとびかい、女優がはったりを効かせ、大変人気を博しながらも映画評論家からは見下された五社英雄の映画。
今年は家に籠もることが多かったので映画をよく見ていたけれど、どうしても静謐な文芸作品なんかは見る気になれなくて血しぶき多めな映画に惹かれがちだった。そこには映画そのものの見世物としての魅力と、やっぱりパワフルさがある。
理由のない場所
母親と、自殺してまもない16歳の息子との架空の会話で綴られる物語。作者はもういない息子との対話をくり返していく。
あらすじを読んだときにそんなの辛すぎる、と思ったのだけれど読んでいると意外に悲壮感はない。だけど切実な物語であることは確かで、フィクションが必要とされる根源のようなものがある気がする。
新写真論 スマホと顔
時代がうつっても変わらないものもある。だけどベストセラー『FACTFULLNESS』などにもあるように、30年経てばすっかり世界は変わっている。
今の写真、というのはもちろんスマホとともにあるので、それを抜きにして一眼レフの世界だけでは考えられない。当たり前だけれど、この本ではその前提がちゃんと考慮されている。
たとえば今のマンガ論を書くならアプリやサイトでの閲覧や、SNSのバズと切り離して語ることはできない。今の小説だって、文芸誌や本屋だけ見ていてもしょうがない。今の当たり前は30年前とは違う、そこからちゃんと始めたい。
セクシー田中さん
タイトルがちょっとハードルが高いけれど、とても真面目な内容。恋愛に命をかけていた女の子が、ちょっと年上の恋愛に無縁な女性の生き方に触れて、彼女のファンになっていく。
今年出た3巻では傲慢だった男も、やっぱり彼女に触れて少し変わっていく。それを見て、恋愛命の女の子が「こんな風に誰も変わってはくれなかった」と呟くのが胸に響く。
エンタメとして楽しくて王道で、かつシスターフッドと救いの物語でもあるところがめちゃめちゃ好き。
バクちゃん
リアルな東京、だけどファンタジー。東京にやってきた「バクちゃん」を主人公に移民としての困難や人とのふれ合いを描く。
東京に住んでいても、東京に来た移民のリアリティがわかるかといったらまったくわからない。でも本当は身近にいるはずだし、ここが彼らにとって決して理想の社会ではないことは、少しは想像できる。正確に言えばこのマンガを読んで初めて、そうできるようになった。
君の銀のあし
事故で片足を失った義足のアスリートと、事故で弾けなくなった元ピアニストのBL。パラスノーボーダーや義足に関してのリアリティがちゃんとしているし、オランダなど海外を舞台のメインとしていて、今に合わせてBLマンガも常識がアップデートされているのを感じる。
スノーボーダーの方が受で190cm以上あり、攻めの元ピアニストの方が黒髪でかわいらしい容姿なところもいい。10年前ならたぶん逆しか許されなかった気がする。
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BL編を始めるともっと色々あるのだけれど切りが無くなるのでこのへんで!来年も最高な本にたくさん出会えますように!
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