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散髪をしただけの話

髪を切った。
胸まであった髪を、顎まで切った。

昨今の情勢上、若干の後ろめたさを持ちつつ美容院へ。何も今日でなくても良かったけれど、両親にいい加減切れ切れと言われ連れられた。
切りたくないわけではなかったが、なんとなしにいろいろな理由をつけて先延ばしにしていた。伸ばすのも癪、切るのも癪という心理状態に陥る出来事があったからである。


車に乗せられ美容院へ。一回切るのに6千円するところに連れられた。まあ結構な長さだし、こういうところで切っても… と思っていたが、中にいる人を見て一気に怖気づいた。店員さん全員がいかしたいかつい兄ちゃんなのである。

いかしたいかつい兄ちゃんもたしかな学びや経験を経て一回切るのに6千円する美容院にいるのだろうが、以前別のいかしたいかつい兄ちゃんにかなりの長さを散髪していただいた際、「どうしてこんなに!?!!!?なにがあったの!?!え!?いいの!?!なんで!?!どうしたの!?!!」と聞かれまくりかなり辟易した経験があり、それ以来いかしたいかつい兄ちゃんに髪を切ってもらうことに若干の怯えがある。

もちろん、いかしたいかつい兄ちゃんすべてがそんな風に問答してくる訳ではないと思う。今回の散髪はあの問答に耐えられるような背景ではなく、それを少し思い返して心がダメになってしまった。それだけなのだ。いかしたいかつい兄ちゃん、ごめんなさい。

そんなこんなで、行ってきなさいと母に促された瞬間、ごめん千円のとこがいい!!と踵を返し、隣接された千円カットの店へ向かった。ガランガランだった。フェイスシールドをした清楚で綺麗なお姉さんがお席にご案内してくれた。
対人コミュニケーションがド下手くそなので、お姉さんからのすべての要請(座ってください〜、眼鏡を外してください〜等)に一切声を出さず返事をした。それは返事ではない。
そしてついに声を出さざるを得ない例の質問をされる。

「髪型はどうされますか?」

マジで全く考えていなかった。日常を普通に生きられる程度に切ってもらおう以外のことを考えていなかった。なりたい自分とかも特にない。もともと崩れているものをどうこうするみたいな気持ち、湧かない。

そういうかんじで苦し紛れに出た発言、
「いいかんじに………」
いい加減にしろよ!と自分で思ったが、マジでそれ以外の感情がなかった。 髪型の名前とかも全部忘れてしまったので、無難な髪型の名前すらいえなかった。
どこまで切りますか〜?の問いに顎をさしてこのへんまで〜と言うと、お姉さんめちゃくちゃびっくり。私でいいんですか…?と不安そうにしていた。いいんです。
ボブを提案されたので、じゃあそれで〜〜と流されるままにお返事。ごめんなさいお姉さん。この度はこんな私を担当してくれてどうもありがとう。30分強よろしくね。

お姉さんに髪をそいそいととかれ、世間話をされる。
「ここまで伸ばしたのには何か目的があったんですか〜?」と、お姉さん。
あったけど、頓挫しました。…とは言えないので、「いや〜、切ろう切ろうと思いつつも状況が状況なので〜」と誤魔化した。どう考えても状況が状況で伸びる長さではない気はしたが、お姉さんはそれ以上突っ込まなかった。

先にざっくりバッサリいきますね、とはさみを髪にかまえられる。ちょっと緊張。見るのが怖くて、目を閉じた。

さく、ざく、さく、ざく、と髪が切れていく音がする。結構な毛髪量なので、音がすごい。
うっすら聞こえる音楽と、髪を切る音。頭が少しずつ軽くなる。
縛った髪を掴むの、結構好きだったけどな… と若干の後悔。縛っていようといなかろうと、何かあれば髪をわっさー掴んでいじくり回していた。自分や親しい人に髪を触られるとなんとなしに安心するので、癖づいてしまっていた。もう掴めないなあ。

これくらいでいいですか〜?とお姉さんの声。目を開けると、鏡の中のお姉さんがわたしの背後で横長の鏡をかまえていた。結構切ったな〜、と他人事のように思いつつ、大丈夫です〜とお返事。下を向くと、傷んだ髪が沼底のように広がっていた。

そこからはもう、覚えていない。ずっと目を閉じて、たまに目を開けて、ちょっと話して。
伸ばしっぱなしの前髪も切ってもらって、視界が開けた。

いいかんじになった。

つょつょギャルになるためにデザイン・ クリエイティブ関連のお勉強や環境構築に充てさせてもらいます……😭😭