2022年11月9日

非常に精神が優れない。割り切って言えば甘えなのだろう。やらなければならないことを頭にぼんやり思い浮かべるだけで、眠気のような何かがその上に覆いかぶさって、重くのしかかる。
今は気晴らしが容易な時代だ。こんな深夜にでも、テレビを付けたら何万もの映像コンテンツを好き放題見られる。サブスクリプションは多くの人を瀕死に至らすが、同時に僕みたいなどうしようもない有象無象の人間を多数生き存えさせる。別に死にそうにもなってなんかいないのに、今日も生かされているとか、大袈裟なことを思えてしまう。
映画「糸」を観た。最近Netflixに追加されたからなのか、週間ランキングで上位に来ていたから目に止まった。僕は邦画なんて普段滅多に観ないが、先日観た「何者」での菅田将暉がとても好きだったので、菅田将暉観たさに再生した。この映画は中島みゆきの「糸」から着想を得た映画だということが公言されている。その言葉通り、主題歌は「糸」だし、劇中でもありとあらゆる「良いシーン」で「糸」が流れた。さすがにワンパターンだなと感じた。他にも主人公たちのバックボーンや十数年の間で起きている出来事のスケールが無駄に大きかったり、端役の扱いが雑だったりと、相当粗い作りになっていてあまり感動しなかった。こんなに分かりやすく「感動しろよ」を押し付けられているのに全く心が動かされず、暗い気持ちがいっそう暗くなってしまった。
ただ当初の目的は達成した。菅田将暉が本当に良い役者だった。「何者」でも感じたが、動きで感情を表すのが本当に様になっている。下を向いてフラフラしてみたり、顔を引き攣らせてみたりするシーンは観ていてスっと心に入ってくる。あと小松菜奈の顔が想像以上に良くてびっくりした。この2人を観るためだけの映画です、と割り切っていれば間違いなく傑作だった。「糸」が執拗に絡んでいたり、妙に話が尊大だったりしたせいで純粋な良さが陰ってしまった印象だ。
おかげで早朝から気分が悪い。はぁ。


14時間ほど寝ていた。大学の授業が非同期オンラインだと、こういうことが普通に起きてしまう。精神的に参っているのが自分でもよく分かる。寝ている途中震度4程度の地震があったそうだが、夢の中で地震があった程度で目を覚ますことはなかった。それぐらいに現実との距離を置いてしまっている。
結局起きたのは夜の10時。こういう時、普通食事は喉を通らないのが定石だと思っているが、反対に過食気味になってしまっている。作り置きだけではもの足りず、冷凍のかしわ天を2つ食べてしまった。どんどん不健康が蓄積されていく。
朝から大して良くもない映画を観て気落ちしてしまったが、懲りずにサブスクで映像作品を探す。久々に「言の葉の庭」でも観ようと思った。たった45分程度の短い映画。話の規模は小さく、ラジカルな起承転結がある訳でもないこの話が、僕はとても好きだ。話の小ささを大事にするかのような絵の美しさが、主人公たちの何とも言えない人間性を上手に象っているような気がする。「すずめの戸締まり」のような壮大さとは真反対だが、こういう小さな映画も素敵だと感じる。
水を得た魚、とはいかないが、少しだけ心に潤いが戻ったような気がした。やる気は回復しないが、まぁ、うん、そうだな。ちょっと外の空気を吸いたい気分だ。月なんかどうでも良くて、自分を感じるために外に出る。

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