見出し画像

仔猫の「そら」と「まめ」がやってきた。生後1ヵ月未満の“乳飲み猫”を育てる夫婦の話

2020年5月16日。その日は私の誕生日だった。

私と夫は数日前からこの日を心待ちにしていた。誕生日プレゼントやケーキ、豪華なディナーではない。

この日、我が家には猫がやってくるのだ。

不安と期待が混ざる、保護猫のお迎え

午前中に予定していた友人たちとのオンライン通話を早々に切り上げ、私達夫婦は予約していたレンタカーに乗り込む。横浜の家から1時間くらい、伊勢原までのドライブだ。

ここ数ヵ月間ずっと「猫を飼いたい」と夫に訴えていた。はじめは乗り気でなかった夫もだんだん猫を飼うことに賛成してくれて、夫はここ数週間はずっと猫の動画を見ている。夫婦でずっとこの日を心待ちにしていたのだ。

元々、動物は好きだった。でもちゃんとお世話をした経験はない。実家ではうさぎと犬を飼っていたことがあるが、気分が向いたときにだけ可愛がり、あとの世話は全て祖父の仕事だった。

そんな私がちゃんと育てられるのだろうか。そんな不安と期待の混ざった気持ちを抱えながら車に揺られる。

私たちが向かったのは保護猫ボランティア「Cattery BRANCHE」さんのお宅。生後1ヵ月に満たない、ミルクで育てる「乳飲み猫」を中心に保護・里親さんへの受け渡しを行うボランティア団体だ。

お宅に着くと、保護猫ボランティアさんが笑顔で出迎えてくれた。

瀕死の状態だった「そら」と「まめ」。仔猫の生命力を目の当たりに

ここ数日、ずっとお迎えしたいと思っていた子たちがいる。キジシロとクロの仔猫だ。

キジシロとクロの仔猫(のちの「そら」と「まめ」)は、生後2日程度で目が開いていない、へその緒が付いた状態で保護されたそう。保護当時は低体温・脱水・低血糖の状態で保護され、保護当初はミルクも飲めず虫の息だったと保護猫ボランティアさんから伺った。

保護当時の子猫の様子。(BRANCHEさんのブログより引用)

私たちが会った仔猫は、そんな状態だったとは思えないくらい元気だった。キジシロは大きい声で「ミーーー」と、腹が減ったと鳴いている。クロの仔猫は、細い手足を上手に使い寝床から脱走を試みている。

他の猫も見てみるが、やっぱりこの仔たちがいい。実際に会って心が決まった。

想像以上に大変な仔猫のお世話。それでも、この仔たちと過ごしたい気持ちは変わらない

保護猫ボランティアさんは、猫の授乳の仕方やお世話について詳しく説明してくれた。実際に猫たちにミルクをあげる練習をする。

まだ生後1ヵ月に満たない仔猫たちは、授乳から排泄まで人間の手でお世話をしてなければいけない。1日5回、決まった時間にミルクをあげ、歯が生えてきたら離乳食をあげる。ミルクの前後にはおしりをトントンして、排泄のお世話をする。人間の赤ちゃんと同じくらいのお世話が必要だ。

そして乳飲み猫の仔育ては注意が必要だ。授乳はうまく頭を押さえてあげないと、哺乳瓶を噛みちぎって飲み込んでしまう危険がある。あげ方を間違えると誤嚥(気管にミルクが入ってしまうこと)を引き起こしてしまう。

お世話はとても大変だけど、自分たちでミルクをあげて育てた仔猫は、どんな猫よりも飼い主に甘えん坊になるという。大変な思いをするからこそ、人一倍愛着も生まれる

保護猫ボランティアさんに「猫を生涯、責任を持って飼育する覚悟はありますか?」と聞かれる。私たちは自信を持って「はい」と答えた。

帰り道、不安はとうに消え去っていた。育てる不安よりも、この仔たちと一緒に過ごせる明日に胸が踊っている。

この記事が参加している募集

#猫のいるしあわせ

22,091件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?