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幕末女

18歳、島根の田舎から広島に上京して
とくに都会でもないのに広島という土地がとても都会に感じていた。

そして散財していた。そんなに派手な使い方はしていないが普通に生活しているだけで金が吹き飛ぶということを当時の自分は知らなかった。
21歳、専門学校を卒業した頃にその壁にぶち当たる。
あらゆる税金の支払いでとにかく金がないのだ。
どういう事だ。
息をするだけで金が無くなるじゃないか。
と、当時の自分は思った。

無論。中学生くらいから周りと馴染むことが出来なかった私は「人間やめたいなぁ」と思いながら21歳まで生きてきてしまった。
それがここへきて住民税とやらまで払わされる。
益々人間やめたいに拍車がかかる。
日々家のポストを開けるのが怖くなる日々である。
国民健康保険、本当に怖い。
医者にかかるだけでこれだけ命懸けなのか、と思った。

その日暮らしではないが、職も安定せずまずまず周りから見れば大変な暮らしをしながらも音楽を続けていた21歳の頃、スタジオから帰ったら電気が止まっていた。
暗闇で悲しく光るガラケー。
冷蔵庫を開けるとカチカチに固まった塩。
野菜室にポツンと残るレタス。

今夜のディナーはこのレタスである。

重たいベースを下ろして、ケースからベースを取り出してスタジオの復習をしながらウイスキーを開けてレタスを1枚1枚剥がしながら齧る。美味しい。わけがあるかい。

明日になったら電気の復旧の電話をしようとかそんなことを考えて眠たくなるまでウイスキーしかないからウイスキー飲んでしょうがなく寝る。


別の日。

冷蔵庫。なにもない。

米びつ見たら米がない。

銀行の残高。785円。お金なんかおろせない。
これが私のメインバンク。


明日はどっちだ……。




「みたいな生活だったんすよ」

って、いう昔話を最近、昔をよく知る先輩と電話で話したんですがものすごく的確な言葉を貰いました。


その方の名前はありたさんと言うので以下ありたさんと表します。



ありた「くらっちゃん!(これは私のあだな)それ米がねぇって!(笑)幕末じゃが!!!!教科書でしか見んやつやで!!!!」


わたし「……あ。あぁ。確かに。食うもんなくてレタス食うたりもやし食うたりしてました。友達に米と納豆もらったりしてました」


ありた「やっぱり幕末じゃわ!!!(笑)教科書でしか見んやつやで!病院にもいけれんてあなた!!!(笑)」


わたし「今、毎日ごはんがちゃんと食べれることにたまにこんなに幸せでえーんかって不安になりますもん」


ありた「やめてくれやめてくれやめてくれ((笑))」



というわけで、幕末女の爆誕でございます。


え?みんな普通に生活できてたの?

ほんとう?

ご飯食べれてた?
まじで?

凄くない?


人間失格とか社会不適合って本当にこういうことだと思うんですよ。

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