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先生にかけてもらって1番嬉しかった言葉

たしか、大学生になる息子が
小学5年生くらいのことだったと思う。
その言葉を聞いて、私は泣き崩れた。

4歳で軽度の自閉症と診断を受けた息子は
小学校では支援学級に在籍していた。

息子の担当は、ベテランのA先生。
生活や学習面のサポートはもちろん
担任とのパイプ役、保護者との連携など
「かゆいところに手が届く気配り」
の出来る先生だった。


前任校でも厚い信頼を得ていたため
「転任させないでください」という
署名が集まった伝説の先生である。


ぽっちゃりなA先生だが
運動神経は抜群!
(先生、ごめんね)


「A先生な、おデブりんやけど
バレーボールがめっちゃうまいねん!」
息子が嬉しそうに教えてくれた。
(重ね重ね、ごめんなさい)


人が多く集まる場所や
コミュニケーションが苦手な息子は
学校生活で苦労することが多い。

林間学校へと出発する日の朝
「行かない」と部屋にたてこもり
バスの出発時刻ギリギリに
家まで迎えに来てもらったこともある。


ある日、放課後に懇談があった。

先生の手を煩わせることが心苦しく
「お手数をおかけしてすみません。」
と頭を下げた。すると、
A先生は笑顔でこう言ったのだ。


「だって可愛いもん!」


只々、嬉しかった。
「頑張ってますね」とか
「大丈夫ですよ」とか…
どんな言葉もかすんでしまうほどに。


それは、全てを受け入れた人にしか
言えない言葉だから。

「もう〜泣いちゃうやん!」と
おどけて笑おうとしたが、うつむいたまま
膝の上にポタポタ落ちる雫を眺めるのが
精一杯だった。


あれから時は流れ、子ども達に
教える立場になった私。
時々、胸に手を当てて自らに問うてみる。


全ての子ども達に、保護者達に
胸を張って言えるだろうか。

「だって可愛いもん!」


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