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4月9日/心のなかの、はこのようなもの

あなたのみたものは、どこへいきますか。


わたしのみたものや きいたことは
心のなかをすうっと通って、

あるものは 音楽のように
またあるものは ちいさな物語のように
わたしのなかに うっすらと積もっていきます。

心に積もった、儚くていとおしいものたちを
あなたにみせたい、と
わたしはときどき思います。


だからわたしは、表現することがすきです。

絵を描いたり、文章を書いたり、写真を撮ったり。
いろいろな方法で、わたしは表現していきます。


陽の透けた すみれの花びらのうつくしさや
やさしい だれかの心遣いや
かなしい、と区別のつかなくなるような よろこびや、
世界には ほんとうにたくさん、
心をふるわせるものがあります。


わたしは、すみれを摘んで
あなたにみせたいのではないのです。

すみれを透かしていた あの陽ごと
かがんでふれた あの地面の温度や 草のにおいごと
あの 天気のよい春の朝、
両親と一緒に歩いていた気持ちごと、
あなたに ほらみて、といいたいのです。

ほらみて、こんなにすてきだったの、と。
ほらみて、わたしはとっても愛しているの、と。


わたしはきょうも絵を描き、
そしてこの文章を書いています。
いま描いているのは、
心を痛めるくらいに愛している猫の絵です。

その猫は もうここにはいないけれど、
それでもわたしが彼を愛しているのは いまだから
けっして「愛していた猫」などではありません。

いまも、これからもずっと「愛している猫」です。


山のほうは まだほんのすこし、
桜の花がのこっています。
きょうは彼の、30回目の誕生日です。

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