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「瑠璃の雫」の感想文

伊岡瞬さんのミステリー作品です。主人公は杉原美緒という小6の女の子ですが、家庭環境に苦しみどう生きて行っていいのか苦しんでいます。そのころ元検事の永瀬丈太郎と知り合い、二人の間には確かな心の交流が生まれました。

丈太郎の娘の瑠璃は4歳のころに誘拐され消息不明で犯人も捕まりませんでしたが、丈太郎は真実を知っていたようです。自分の気持ちとどう折り合いをつけていたのでしょうか。娘と会えない、今どうしているのかわからないというのは耐え難いことです。

美緒の家庭の問題と丈太郎の不幸な事件が描かれているので明るい話ではなかったのですが、最後は希望が見いだせるものでした。美緒と丈太郎はまるで新しい家族のようで、2人の幸せそうな場面が印象に残ります。

美緒はこれからも家族のことで悩んでいくしかないのですが、丈太郎に与えられた幸せな時間や教えられたことがあるので、嫌な人間にはならないと思います。美緒の弟もずっとつらかっただろうけれど、真実を知った後の態度で、彼がいい子だということがよくわかります。

丈太郎は娘の瑠璃にはしてあげられなかったことがたくさんあったのですが、美緒と一緒に色々なことをするうちに、美緒と瑠璃を混同したこともあったかもしれません。悲しい経験をした人ですが、美緒との数年間は娘の瑠璃と一緒にいるような気持ちになったのではないでしょうか。

暗い出来事の中にも、美緒と丈太郎の穏やかな幸せが心に残りました。伊岡さんの作品は初めてでしたが、他の作品も読みたいです。




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