人生初のクラブが地獄みたいだった話 中篇
前回までのあらすじ
平凡な日常を送っていた私にある一声がかかり、これまで無縁だった「クラブ」へ急遽行くことに。私を含めた5人組は文化祭の打ち上げ後、自信満々で到着。しかし到着後様々なハプニング発生。
受付のその先に待っていたのは・・・
登場人物のおさらい
A・・・サークルの後輩。唯一のクラブ経験者。今までで三回参戦していた。イケメン。面白い。酒は一滴も飲めない下戸にも関わらず多くの飲みコール、流行りのk-pop・EDMを網羅している。
B・・・サークルの後輩。顔が濃くイケメン。話すとめちゃ面白い。目を見て話すのが苦手という絶望的なハンディキャップあり。到着と同時にカーディガンを肩にかけるだけのスタイルに変更。
C・・・サークルの同期。普通にイケメン。面白い。考えることが好き。それ故に優柔不断な一面も目立つ。
D・・・サークルの同期。手がでかい。荷物が多くシャンプーとリンスで身体検査に引っかかった男。心折れた。
私・・・顔微妙。相手の様子を1秒単位で常に伺うので表情言動仕草で相手の気持ちを決めつけ引いてしまうことが多い。積極的に見えて1番の奥手。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さて私達は身体検査を終え一度集合し班行動をすることになった。
1班はAとD
2班はBとCと私であった。
とにかく人が多かった。常に人と接触する地下ライブハウスのような状態をイメージしていただきたい。建物は5階建のビルでありそれぞれの階でDJが前に立ち音楽を鳴らしそれに合わせて客は踊ったり酒を飲んだりナンパしたりナンパしたりナンパしたりする。中にはナンパする者や、ナンパさえする者さえいた。
館内は常に何人ものセキュリティが怖い顔をして常に周りを見渡し誘導、防犯対策をしている。鼻くそもほじれないほどの緊張感である。
そして館内の音楽はパピプペポで全部作れるんじゃないかとさえ思うEDMが鳴り響く。Aは網羅しているので普通に楽しんでいた。聞いておけばよかった。実際かっこいい音楽もたくさんあった。明日から聞こうと思った。(現在2020年1月8日)
とりあえず私達は全ての階を見回ることになった。まず始めに敵を知る事は大切である。弱点も全て知り確実に仕留める。そう考えた。
2班の中では普段引っ張って行くキャラは私くらいだったので私が必然的に一番前で歩いた。人が多すぎるので列になって三人で進んだ。階段に登るとCが「お前班長みたいだな」とか言ってきたので階段から突き飛ばそうと思ったがグッと堪えた。Cは性格上余計な一言が多い。仮に私が班長でここが戦場なら必ずお前を殿(しんがり)に任命してやるからなと心の中で呟きながらCを無視した。次は無いと思え。
そう言えば忘れてはいけないことが一つあった。
我々はクラブに向かう電車で何度も確認しあったことがあった。
ぼくたちがクラブ行くの初めてな事、バレないようにしようね
である。絶対に舐められてはいけない。私たちは常連であり余裕である。不安な顔もしないことに決めた。この誓いを読者の皆さんも常に意識して「誓いを胸に鋭意努力する私達」として見守って欲しい。
話を戻そう、2班の私達は1階から5階まで全ての階を周った。クラブ初心者であることをバレないように私は常に周りを見渡しながらたまに何度か軽く頷き「ほうほう、今日はこんな感じね〜」とか「あ〜なんか今日人いつもより多いなぁ〜」という顔を各階で毎回行った。
そして誰とも話さず只々無言でひたすらに歩き我々2班はまた1階に戻ってきた。
そして私は思った。
ダンジョンかよ
皆さんはドラゴンク○ストやポ◯モン不思議のダンジョンをプレイしたことがあるだろうか。RPGでは仲間を連れ洞窟を冒険したり何階もある塔に挑戦したりするシーンが多く存在する。一列に並び各階を進んでゆく姿はまさにRPGのダンジョンであった。
加えて私は思った。
セキュリティかよ
無言で人混みをかき分けキョロキョロする姿はもうセキュリティそのものだった。
実際本当何もできない。なんかみんな慣れすぎてるしこの環境が気持ち悪い。喋れない。声をかけれない。ていうか目見れない。あと人混みが凄い。人と人が近い。ライブハウスの近さは全然良い。なんなら近い方がいい。ここの人は自分の性欲しか考えてない。あと近い。ウイルス性の感染症(インフル)とかあったらどうすんだとか悶々と考えていた。
私達の行動は常に無言で人混みの中をかき分け進み、ある程度中の方に進むと、DJの近くに行くのは恥ずかしいので
「じゃあ、行こっか」
と班員に声をかけ次の階に行くのだった。
ち が う だ ろ
「じゃあ、行こっか」
は良い雰囲気になった女性に、お持ち帰らせて頂く時に喰らわせる最後のトドメの一撃である。これをかます事でこれまで駆け引きをしていた男女の冷戦のような長丁場の戦いが幕を閉じるのである。
(多分そうですよね?知らないですけど、少なくともドラマとか同人誌とかではそうですよね?)
それをどうして私達は
誰とも喋れず次の階なら次の階ならと環境のせいにして戦いから逃げる合図のように使用しているのであろうか。恥ずかしさで全身に血が駆け巡る。何もしていないのに体が火照る。
私の焦燥の表情を見兼ねたCが打開策として飲酒を提案した。名案である。2階にはバーがある。ほろ酔いだと色んな人と話せるかもしれないゾ!!!!お前にはあとで班長から褒美を与えよう。
そうして2階にやってきた私達は人混みの中、バーの注文カウンターに縦に並んだ。今回は私が一番後ろであった。
するとBとCは各々の酒を受け取り颯爽と後方へ下がった。
ちょ待っ・・・早・・
私の声に反応することもなく二人は人混みの中へ姿を消した。
これはマズイ。近くの強面のセキュリティを「顔が怖っ」と思いながら見ていて、飲み物の種類を把握していなかった。
ぼくたちがクラブ行くの初めてな事、バレないようにしようね
私はクラブ常連の客である。上のメニューをみてはいけない。上のメニューをみて頼んだり長々とメニューを見て選んでたらそれはもう
マクド○ルドで注文する時
と同じである。絶対嫌だ。絶対初心者だとバレる。もう一か八かで私は
ジンバック(をお願いします小声)
を注文した。無愛想な店員が何も言わず作り始めたので安心した。しかし待つ時間がもどかしい。店員が飲み物を作る姿を見つめることは野暮である。「となりのトトロ」でサツキが弁当を作っているのを嬉しそうに見ているメイの様な姿になる訳にはいかない。無愛想なスタイルで来られたのだから無愛想なスタイルで待つのである。
待つときはカウンターに肘を起き、足の先をトントンと地面に打ち付けながら流れている音楽に合わせまるでその音楽を知っているかのように首を縦に振ってノリながら待った。
もういっそ誰か私を殺して欲しかった
そして最後の難関「飲み物の受け取り」である。店員から無愛想に何も言わず差し出されたジンバックを丁寧に両手で受け取るならばそれは
タピオカを受け取る時
と同じであるので私は片手でスッと受け取った。顔ももう次の女性に向かうような方角に向け、スッと受け取った。ちょっとこぼれた。
こうして2班は飲酒をするのだが結局何も変わらなかった。当時の状況は男6割女4割くらいだった。
女性は壁際で水槽に張り付くタニシように好みの男性が訪れるのを待ち男性はそれに近づいて話す。女性はその男性が気に入らないと無視し男性は諦めまた他の女性を探すのである。
そんな光景を何度も目の当たりにし、人間は自然界の生き物であり、動物であることを再認識することができた。
中にはしっかりうろうろする女性もいたが、多くの女性が壁側に張り付いていた。ここで私がDJのマイクを奪い取り
自分らタニシと同じやで〜〜!!!!(メガホンみたいな声)
↓
やでやでやでやででででででででででででででででででででーん(EDMのサビの前の特有のヤツ)
↓
(消音)
↓
ドュンズンパピッピ〜ドムドム
とかやったらどんなに気持ちの良いことだろう。みんな恥ずかしくなってポロポロ剥がれるんだろうなとか思った。伝わるかなこれ。
後編のつもりだったのだが疲れたのでここで中編として終わりにしようと思う。
長々と読んでいただいた皆様ありがとうございました。次回で最終回です。お楽しみに。
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