見出し画像

世界の終わり #3-5 ハンター

「明日はいよいよ商品搬入だ。といっても、港に到着するのは深夜だろうし、正確な時間はわからねぇから、明日の午前中は柵の点検と建物チェック。サビた箇所を見つけたらすぐ報告するように。港に向かうのは午後からの予定だ。わからないことはないか? あったら、いま、訊け」とカンバヤシ。
 三度目なんで、特に訊くことなどありませんけど。
 っていうか、明日が商品搬入ってこと、もっと早く教えて欲しかった。
「オーケー。それじゃぁ今日はこれまで。あとは各自好きにすごしてくれ」
 そういわれても、じきに辺りは闇に覆われる。懐中電灯と数本の蝋燭しか渡されてへんのに、好きにすごせはないやろ。できるこというたら、音の悪いラジオを聴くか、持参した雑誌を読むことくらい。いうても、雑誌は隅から隅まで読み倒してしもうとるからページを開くつもりなんてこれっぽっちもあらへん。そんなわけで、勝手に使わせてもらっとる宿泊施設の一室で横になって、アンテナを伸ばしてラジオを聴くことにした。九州ではなんも放送されてへんから、おのずと本州もしくは四国からの電波を探して聴くのやけど、必ずといっていいほど半島からの電波が入ってきて、朝鮮語の語り&音楽を聴くはめになる。おれ自身、生まれは韓国のソウルやったりするんやけど、朝鮮語は聞いても全然わからへん。物心ついたときには福岡へ移り住んどったし、中学を卒業してからは京都に引っ越した。身体に染みついた博多弁から、京都っぽい喋りかたになってきたかなって思ったころにまた引っ越して、いまは広島住まい。越してきたというよりは無理矢理引っ越しさせられたってのが正解なんやけど、封鎖された九州への上陸を果たすには広島からのルートを使うのがメジャーらしいんで、雇い主からの提案に同意しての広島生活一年目を満喫中なのである。いや、満喫なんてしてへんけどね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?