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世界の終わり #3-7 ハンター

 港に着いたら午後六時をすぎとった。四時間で着くはずが、思いのほか時間がかかってもうた。でもまだ待ちあわせの相手はきてへんのやからノープロブレム。おれはトラックに給油して、ウディは港で見張りをやって、カンバヤシはこれから到着する雇い主――イーダさんをのせるワンボックスカーの整備に取りかかった。ワンボックスカーは、港のそばに建つ『甲斐』って人ん家の駐車場にとめとった、っていうか、隠しとったものや。ワンボックスカーも元はといえば『甲斐』って人の持ちものやったらしいけど、まぁ、九州はほぼ無人なんやから、文句をいう者などおらんのやし、気にすることなんてないけどね。
 で、待つこと八時間。商品をのせた船が港へ入ってきたが、雇い主であるイーダさんは乗船してへんかった。船員に訊いてみると、後日ツアー参加者らと一緒に上陸しはるとのこと。なんやそれ。連絡なしの変更は勘弁して欲しい。どうしますカンバヤシさん予定と違うやないですかいうて相談&同意を求めたつもりが、あほう、お前らはこれまでどおり準備進めんかい。ウディを連れて、トラックに商品をのせて、汚染エリア回ったらすぐに施設へ戻れいわれた。それから、なにかあったらすぐ電話しろいわれて携帯端末を手渡された。えぇかファン、端末、私用で使うなよ。肝心なときに充電切れとったらお前どうなるかわかっとるやろな。とカンバヤシ。そんなんいわれんでもわかっとるわ。おれもそこまでアホやない。しかしウディと二人でドライブせなあかんのは心細いいうか、不安ではある。船員の「おらおらとっとと歩かんかいッ」ってな声を背中で聞きながら、トラックに近づいて、荷台に取りつけられとる檻の扉を開いた。おれらはこれから商品を運ぶ――虚ろな目をした二〇人ほどの外国人不法入国者を。

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