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「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」展へ

東京オペラシティ アートギャラリーで開催されている「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」を鑑賞してきました。

写真家・川内倫子(1972–)は、柔らかい光をはらんだ淡い色調を特徴とし、初期から一貫して人間や動物、あらゆる生命がもつ神秘や輝き、儚さ、力強さを撮り続けています。
本個展 公式より

国内では約6年ぶりとなる大規模個展。
きっかけになった写真がこちら。

《無題》 シリーズM/Eより 2020

淡い光に照らされた子どもたちの姿に、文字通り釘づけになったのです。
川内倫子さんのまなざしを追体験したいと思いまして、個展に向かいました。

思いがけず生と死を直視する機会となったのです。
また写真以上に映像作品からうけた印象が大きく、内省するよい機会となりました。

本展示の一部を、かんたんにご紹介しますね。

〈4%〉

球体や宇宙をイメージさせる被写体が、白を貴重とした空間に展示されています。

球体とは?
あえてearthではなくsphereとの表記されているのは?
疑問をもったまま、私たちは展示の先へすすむだけなのです。
のちの《M/E》へのイントロダクション。

《無題》 シリーズ4%より 2011
《無題》 シリーズ4%より 2011~2012


〈 An interlinking〉

6×6の正方形フォーマットで撮られた作品。
プリントのサイズは大きく、真正面から向き合うことができます。

 〈 An interlinking 〉展示室内

そこに展示されているのは、ちいさな生命の姿。おだやかな日常の景色。

《無題》 シリーズ  An interlinking より 2019


〈Illuminance〉~映像作品~

二つの画面で『Illuminance』の映像作品を同時に鑑賞できます。まるで写真集のページをめくるかのような錯覚。
少しずつ再生時間をずらしており、その再生時間はおよそ1時間!

展示される度に新しく映像を追加していくことをコンセプトとした作品。
本個展 公式より

映像を見て、はっとしました。

ついさっき鑑賞したシリーズ〈 An interlinking〉の作品は、めんめんと続く日常のいとなみをきりとったものだと気づくのです。

例えば、女の子が道を下方へと歩いて行く写真。

《無題》 シリーズ  An interlinking より 2015

同じ構図の映像作品の中で、女の子が下方へと消え去る姿を再確認するのです。残されたのは、道路だけ。

写真には前後には「物語」がある、という気づきでした。
この映像作品を鑑賞したあと、もう一度入口に戻って本個展を鑑賞しなおしたことは言うまでもありません。

もう一度、ついさっきみた映像の景色を追体験するために。
めんめんと流れていってしまう日常を、もう一度目にやきつけるために。

切り取られたモチーフ〈Illuminance〉より

ゆらめくカーテン
雲にかかる虹
逆光に光るすすき
揺れる木々 

打ち上げ花火
ランニング大会のランナー
蝉やカマキリの亡きがら
川のせせらぎ

たなびく雲と満月
ドライブの車窓
地面に降りそそがれるあられ
空高くのびる、ひこうき雲

さばかれる魚
 空に放たれたシャボン玉
木々とこもれ陽
寄せてはかえす波

 《無題》 シリーズ  An interlinking より 2012~2014

皆既日食の一部始終
しんしんと降る雪
スクランブル交差点
満開の桜

雨とマーガレット
金魚すくいの屋台
飛び立つ鳥
料理人の手さばき

揺れる洗濯物
海遊する魚
わたあめ
空に舞うゴミ袋

新生児の寝顔
蝉の抜け殻
きえゆく花火
ろうそくの炎

 《無題》 シリーズ  An interlinking より 2012~2015

〈M/E〉

大自然の原風景と、日常の風景が交差する空間。
どちらも母なる地球上でのできごとであることを思い出させてくれます。

〈M/E》展示室内
〈M/E〉とは、「母(Mother)」、「地球(Earth)」の頭文字であり、続けて読むと「母なる大地(Mother Earth)」、そして「私(Me)」でもあります。
本個展 公式より
《無題》 シリーズ  M/Eより 2021~2022
《無題》 シリーズ  M/Eより 2021~2022
《無題》 シリーズ  M/Eより 2019

映像作品〈Illuminance〉を鑑賞したあとだったので、すでに日常と非日常を行き来している錯覚。

そこにあったのは、たえることのない人間のいとなみと大自然のいとなみ。
ささやかな子どものしぐさから、何万年もの年月をかけてつくられた氷河まで。

分けへだてられることなく、そこに存在していました。
同じ生命のいとなみとして、私たちの意識のなかでつながっていきます。

まとめ

すてきな写真やインスタレーションが数多く展示されていました。
身近なモチーフが多く、感情移入しやすかったです。

撮影者の母親としてのまなざしはとてもあたたかく、子どもを映した作品は幸せそのものでした。十二分にあやかれます。

《無題》 シリーズ  M/Eより 2019

たわいもない日常のありがたさ。
帰宅してからも続く日々のいとなみに、希望を見い出すよい機会になりました。ありがとうございました。

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2022年12月18日(日)まで開催中。
事前予約は不要です。
当日に直接東京オペラシティ アートギャラリーへどうぞ。

アート鑑賞を通して、リフレッシュできますように。

たわいもない日常への見方が変わり、多くを受け取ることができます。
生と死、日常生活と大自然、めぐる生命の偉大さをも内包できる機会に感謝して。


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