近年、オーセンティックなジャズを面白く聴かせる若手がどんどん出てきている。グラミーをとったヴォーカリストのサマラ・ジョイが大きく話題になったが、器楽奏者だとエメット・コーエンはその筆頭だろう。
1990年生まれのピアニストは近年、オーセンティックなジャズの世界を刺激し続けている。ニューオーリンズやラグタイムからコンテンポラリーまでジャズの100年を奏でるようなエメットの演奏は自由でフレッシュ、そして、音楽を奏でる喜びにあふれている。アルバムに『Future Stride』と名付ける彼の音楽は100年前のスタイルに未来を見出すような伝統的かつ挑戦的なもので、ジャズがダンスミュージックだった時代の躍動感や、ジャズがポップミュージックだった時代の華やかさが、現代のジャズの技術と共存している。
その音楽をエメットはインターネットにも積極的に持ち込んでいる。彼はコロナ禍、YouTubeで『エメット・プレイス』というプロジェクトを立ち上げた。ライブが消えた時期に配信でジャズの醍醐味でもあるライブの喜びを伝えるこの企画は大きな反響を得た。その場で起こるハプニング性も含めたライブミュージックとしてのジャズの魅力をリスナーに届けるだけでなく、手元が見えるように工夫された映像によりジャズミュージシャンを目指す若いプレイヤーへのインスピレーションにもなっていた。コロナ禍に最も話題になったジャズ配信は間違いなくエメット・プレイスだった。
ちなみにエメットの日本語でのインタビュー記事はまだほとんどない。ここではエメットについての基本的な話も含めて語ってもらったので、エメット・コーエン入門的なものになっている。エメット・コーエンのジャズへの愛の深さと尋常じゃない知識をお楽しみいただければ。
取材・編集:柳樂光隆 | 通訳:丸山京子 | 協力:ブルーノート東京
◉ジャズを始めたきっかけ
――まずはジャズをやり始めたころの話も教えてください。
――お父さんがモンティ・アレキサンダーのコンサートに連れて行ってくれるなんて、お父さんも相当なジャズ・マニアなのでは?
――ニュージャージー育ちですが、それはジャズ・ミュージシャンとして自分の音楽性に影響していますか?
◉夢中になったジャズピアニストたち
――エメットさんはジャズの長い歴史を網羅するような音楽を奏でていると僕は思っています。そんなあなたが最初に夢中になったジャズ・ピアニストは誰ですか?
◉モンティ・アレキサンダーのこと
――最初に名前が出たモンティ・アレキサンダーはどんなところが好き?
――一緒にスウィングしてハピネスを分け合うって、いまエメットさんがやっていることそのものですよね。
◉オスカー・ピーターソンのこと
――名前が挙がったオスカー・ピーターソンのサウンドについては?
――では、オスカーを入り口にその次に行ったところは?
◉1920年代にインスパイされた”Live from Emmet’s Place”
――たとえばアート・テイタム時代のスタイルってエメットさんの得意にしているところだと思うけど、その時代のジャズの魅力はなんですか?
――エメット・プレイスはインターネット時代のレント・パーティだったんですね。しかも、コロナ禍に家賃を稼ぐための。
◉ストライドピアノの魅力
――それは素敵ですね。ストライド・ピアノやビ・バップ以前のスタイルを美しく取り入れているミュージシャンが今、多くて、エメットさんもそのひとりだと思います。あなたはあらゆる時代のスタイルを取り入れていますが、『Future Stride』なんてタイトルをつけるくらいなので、ストライド・ピアノには特別な思い入れがあるんじゃないかと思います。その時代の良さ、魅力を聞かせてもらえますか?
――ラグタイムやストライド・ピアノを発見するきっかけは何だったのでしょう。
◉ライヴで体験することの意義
――先ほどシダー・ウォルトンのクリスマス公演に行っていたって話が出ましたが、どういうところが好きでしたか?
――実際にライヴで観たことの違いってなんだと思いますか?
◉レジェンドたちとの交流
――いろんなレジェンドと共演していますが、実際に会って話したり、一緒に演奏したりすることにもこだわりがあるのでは?