#ヒップホップ
interview Jun Iida - Evergreen:日系アメリカ人トランぺッターとNujabesとの出会い(2,900字)
新譜をチェックしていたら、このアートワークが目に飛び込んできた。 和服の若者がトランペットを持っている写真なのだが、なんとなく写真の感じも含めて日本で作ったアートワークじゃない予感がした。そこで、はっと思い出した。「あ、この人、会ったことあるな…」 僕はイイダ・ジュンさんと東京で会っていた。オーブリー・ジョンソンというジャズ・ヴォーカリストが日本に来た時に彼女たちと食事をしたのだが、その時に彼女の友人のひとりとしてその場にいたのがイイダさんだった。 普通に「はじめまして
interview Makaya McCraven:時を経て形を何度も変えた楽曲の断片を繋ぎ合わせて作る”時間を超えた”作曲法
マカヤ・マクレイヴンの『In These Time』は新たな金字塔だ。 これまで「生演奏」と「ポストプロダクション」を巧みに共存させてきたマカヤが、そこに更に「作曲」「編曲」を加え、その四つのプロセスの境界がわからなくなるほどに溶かしてしまった『In These Time』には誰もが驚いた。どこからどこまでが作編曲された楽曲を生演奏したものなのか、どこからどこまでが解体再構築されたものなのか、ちょっと聴き込んでもさっぱりわからない。すべては滑らかに混ざり合っているが、ところ
interview Àbáse - Laroyê: カンドンブレからバイレファンキまで。ブラジルの今を捉えた音によるドキュメンタリー
Abaseは謎のプロジェクトだった。 僕は2019年にリリースされた『Invocation』で知った。アフロビートへの造詣の深さが聴こえてくるし、演奏もプロダクションもクオリティが高く、すぐに愛聴盤になった。ただ、Abaseを主宰するSzabolcs Bognárの活動拠点がUSでもUKでもなく、ハンガリーってこともあり、彼がどんなミュージシャンなのかの情報はほとんどなく、よくわからないままだった。 2021年には『Laroye』をリリースする。アフロビート系のプロジェク
interview Andrea Motis & Stephan Kondert:about『Loopholes』
スペインのトランペット奏者でヴォーカリストのアンドレア・モティスはオーセンティックなジャズとボサノバのコンビネーションで人気を得ていました。1作目の『Emotional Dance』はジャズが多め、2作目の『Do Outro Lado Do Azul』はかなりブラジル音楽に寄った作品と言った感じ。 オーセンティックなジャズとボサノバの組み合わせの洗練されたサウンドとそのキュートな声が彼女の特徴。そんな音楽性だけにボサノバ人気が高い日本ではかなりファンも多く、何度も来日してい
Review:Robert Glasper - Black Radio 3:前2作とは異なる制作プロセスと、シグニチャーを利用した連続性
本作はロバート・グラスパーの大ヒット・シリーズ『Black Radio』の3作目。これまで2作の延長にありながら、同時にこれまでの2作とは決定的に異なる作品でもある。 なぜなら過去2作はロバート・グラスパー・エクスペリメントのメンバーのケイシー・ベンジャミン、デリック・ホッジ、クリス・デイヴ or マーク・コレンバーグの四人とともにスタジオにこもって“バンド”で作っていた。『Black Radio』が1週間くらいで一気に作られたことはよく知られている。 本作は過去の2作と
HERITAGE ORCHESTRA - The Breaks:カマシ・ワシントンやスナーキー・パピー人脈が参加したブレイクビーツ・クラシックス集
The Heritage Orchestraによる『The Breaks』というアルバムが自分の中で大ヒットで、友人にも送ったらけっこう盛り上がったんで、ここでも紹介しようかなと。 ◉ヘリテイジ・オーケストラとはヘリテイジ・オーケストラはUKで結成されたオーケストラ。創設者はクリス・ウィーラーとジュール・バックリー。 まずはメトロポール・オーケストラの首席指揮者です。ジェイコブ・コリアーやスナーキー・パピー、ローラ・マヴーラ、ジェイムスズーなどなど、ジャンルを超えたコラボ
interview THEO CROKER『BLK2LIFE || A FUTURE PAST』:過去と現在が繋がるブラックネスの円環
シオ・クローカーはずっと注目されているトランぺッターだった。ただ、そのキャリアも音楽性もあまりに独特で、よくわからないところがあった。 そもそもそのキャリアを見てみると、レジェンドのドク・チータムの孫という出自のサラブレッドだが、アメリカの大学でジャズを学んで以降、キャリアの多くを上海で過ごし、そこでディーディー・ブリッジウォーターに発見され、再びアメリカはNYに拠点を移し、近年はさらにLAへと移住したという紆余曲折がある。 しかし、アメリカへの帰国後はすぐに頭角を現し、
interview BIGYUKI『2099』:今、こんな終末っぽい雰囲気の中でネガティブなものを出す意味はないと思った
2020年のアメリカは激動の1年だった。新型コロナウィルスによるパンデミックが起きた中で、大統領選があり、Black Lives Matterが大きくなった。トランプ政権の醜悪な新型コロナウィルス対策により世界でも類を見ない甚大な被害が発生した上に、国内情勢は常に不安定。選挙ではバイデンが勝ったが、陰謀論が蔓延し、差別も加速した。アメリカはまるで内戦のようだった。 そんな状況下でリリースされたのが『2099』だった。ATCQ『We Got It from Here... T