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こんな源氏物語あります

大河ドラマ放送前に投稿するつもりが、だいぶ遅くなってしまった。
遅刻にめげず、私が今まで読んだ源氏物語を2つ布教したい。


1.女人(にょにん)源氏物語 瀬戸内寂聴


光源氏を取り巻く女性たちのモノローグ。
源氏の妻や愛人、乳母や女房(侍女)の視点で語られる。


まずその人が語るという形式なので、登場人物や人間関係がわかりやすい。
中学生だった私も源氏の世界にすんなりと入れた。


人物の心をかなり奥まで想像していて、あっそうか、と思う描写が多かった。
例えば光源氏の最愛の妻で、ヒロインと言われる紫の上。
スパダリを極めた源氏の妻なら人生安泰、と思うけど、彼女は実家とほぼ絶縁状態。

源氏と別れても帰る家がないのだ。
頼りの夫は浮気しまくりで、妻の座がいつ奪われるかわからない。

紫の上が、ライバル・明石の上と自分を比べて
「少しくらい身分が低くても両親のいる人と、親はありながら孤児同然の自分と、どちらがわびしい身の上だろうか」と語るシーンはハッとした。


それぞれの嫉妬、愛情、生きている苦しみがストレートに伝わってくる。
例えるなら、語り手の女性の香りや体温まで移った衣装。


2.窯変(ようへん)源氏物語 橋本治


帯にある通り「絢爛豪華な日本語」
まさしくこれ。


見たことのない日本語が次々に出てきて、その一文一文がこれでもかと言うほど磨かれている。
螺鈿や蒔絵の工芸品に見とれていたら、それが源氏物語の形をしていたという感じ。

女人源氏物語と反対に、光源氏の視点で語られていく。


この源氏は、すべてを手に入れているのに、ずっと何かを諦めているように思える。
感情の描写はあってもその温度までは伝わってこない。
光源氏の視点と同時に、源氏物語の世界を外から眺めている視点を感じる。


例えるなら、日が落ちて薄暗くなった部屋に、ひっそり置いてある豪華な調度品。
単行本に載っている妖しいモノクロ写真がすごくいい。

2つとも現代語訳というよりフィクションの入った作品だけど、そのおかげで読みやすかった。
源氏物語はとっつきにくいとか長すぎるとか思わず、ぜひ読んでほしい。

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