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メープル街道と感謝祭

 カナダのガイドブックや旅行案内を見る度に、いつかメープル街道と呼ばれる地域で紅葉を見てみたい、と思っていた。数年前に、念願かなって秋のカナダを旅することができた。「感謝祭」の時期と重なり、楽しい思い出ができた。

一度は行きたいナイアガラ

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 「メープル街道」と呼ばれる紅葉の名所は、カナダ東部のオンタリオ州とケベック州にまたがるエリア。ナイアガラからトロントを経由して、モントリオールを訪れるルートを選んだ。実はほぼ同じ季節に同じようなルートを旅した。一度目は母と、二度目は父と母と一緒だ。当然ながら観光する場所もほぼ同じなのだけれど、微妙に色づき具合の違う紅葉を眺めることができた。

 東部まで行くなら、有名なナイアガラの滝も見てみたい。トロント空港から迎えの車に乗って向かうと、街へ着く頃には辺りは暗くなっている。ホテルの部屋からもライトアップされた滝が見えて感動した。

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 翌朝、日が昇るにつれて、朝焼けが広がる。水煙が霧のように立ち上り、流れ落ちる水がよく見えないのは誤算だった。外へ出ると、空は青いのに小雨が降ってくる。天気雨かと思ったら、滝の水しぶきが降り注いでいたものだった。

 滝のそばまで行くと、またもや水しぶきが靄のように立ち込め、水の流れがよく見えない。でもその水しぶきのおかげで、きれいな虹が架かる様を見ることができた。

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 遊覧船で滝壺に近づき、ごうごうと鳴る水音を聞きながら、間近に滝を見上げる。赤いビニールのレインコートをかぶっていても、甲板にいたらびしょ濡れになりそうなので、船の中央部分から眺め、時々外へ出てみては写真を撮った。

 ツアーでは、ナイアガラ・オン・ザ・レイクというかわいらしい町を訪れる。19世紀のイギリス植民地時代に栄えた町で、イギリス風の建物が並んでいる。時計塔が立つメインストリートをのんびり歩き、お店を覗く。最初の旅でクリスマスのオーナメントを買ったのだが、家に帰って荷ほどきをした瞬間に取り落として割ってしまったので、買いなおそうと心に決めていた。父とはぐれかけて全然町歩きができなかったのだが、これだけはなんとか手に入れて帰った。

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紅葉巡りのハイライト、ロレンシャン高原

 カナダの紅葉ツアーのパンフレットに必ず登場するのが、ロレンシャン高原。モントリオールからツアーバスで向かうと、徐々に車窓から色づく木々が見え始める。途中のトイレ休憩でバスが停まった駐車場からの眺めが既に美しい。

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 ツアーバスが続々と向かうのは、モン・トランブランという町だ。冬はスキーを楽しめるリゾート地で、カラフルな建物が並ぶ坂道の先に広場があり、ゴンドラの前に列ができている。まずはゴンドラで標高875メートルのトランブラン山の山上へ。眼下に広がる紅葉に思わず声が上がる。ゴンドラが上へ進むにつれ、赤や黄色に色づいた木々と、街並みの向こうに広がる湖が見えてくる。山頂でひとしきり写真を撮ってから、再びゴンドラで麓の町へ降りた。

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 午後から、トランブラン湖を遊覧する船に乗った。湖から色づく木々を眺める。リゾート地なので、湖のほとりには別荘が建っている。船長が子どもたちを招いて、帽子を被らせてくれる。続いて大人も撮影タイム。帽子を被ってちゃっかり写真に収まるのは母。写真を撮るだけの父と私は似た者同士なのかもしれない。

 次第に雲が増えてきて、残念ながら紅葉も湖の色も少しくすんで見えたけれど、なんとか天気が持ちこたえてよかった。メープル街道の紅葉は、9月中旬から10月中旬くらいの時期だといわれる。その年の気候によっても色づき具合は違うので、見頃の時期に旅をできるとは限らない。紅葉のピークではなかったかもしれないが、美しい風景を見ることができた。

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少しだけ、ハロウィン気分

 10月に旅をしたのでハロウィンも近い。ホテルの前や店の前に、カボチャが飾ってあった。ナイアガラ・オン・ザ・レイクでは、ビクトリア調の古い建物とオレンジ色のカボチャ、色鮮やかな花がとてもきれいだった。

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 ケベック・シティという世界遺産の街も訪れた。この日は冷たい雨が降り、秋というよりも初冬のような寒さ。美しい街並みだったけれど、早めに引き揚げてしまった。

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 モントリオールの市場では、大小さまざまなカボチャがずらりと並んでいた。

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感謝祭の七面鳥

 メープル街道を後にして、飛行機でバンクーバーへ。東から西へ、5時間近いフライトだ。バンクーバーに住む伯父一家を訪ねるためだ。ちょうど感謝祭(Thanksgiving day)の時期だった。

 感謝祭はカナダでは10月の第2月曜日、アメリカでは11月の第4木曜日。この日は祝日で、家族で集まって七面鳥の丸焼きを食べて祝う。いとこたちに「会社も学校もお休みなのでちょうどよかった」と言われた。みんなが集まるお祝いの席に私たちも加わった。

 旅立つ前に、料理上手の従姉から「ローストビーフとターキー、どっちがいい?」と連絡があった。父は「ビーフ」と言っていたのだが、母に珍しいから七面鳥にした方がいいと言われ、七面鳥をリクエストした。でも肉好きの父は、本当はビーフが食べたかったのかもしれない。

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 七面鳥のまる焼きがオーブンから出てくる。かなり大きい。食べやすく切り分けられて、テーブルに並ぶ。グレービーソースやクランベリーソースを添えて食べる。従姉はクランベリーにグラニュー糖をまぶしたものもたくさん作っていた。酸っぱいベリーと甘い砂糖の取り合わせを母は気に入っていた。余ったターキーは翌日、サンドイッチにするのだと聞いた。それもまたおいしそうだ。みんなでわいわい話ししながらの楽しい時間だった。

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 感謝祭が終わると、少しずつ冬の気配が近づいてくる。メープル街道よりも暖かいバンクーバーでも、街路樹が赤く色づき始めていた。少し寒くなってきた街を後に、日本への帰路についた。秋になると、この時の旅を懐かしく思い出す。

▼なにかと大変だった二度目の旅についての記事はこちら。

(text & photos : Shoko)©︎elia

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