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虫たちの午後 3

文:谷口江里也
画:海藤春樹
©️Elia Taniguchi & Haruki Kaito

君がもし
自分のことを嫌いになりそうになったら
とりあえず、この虫たちを見てほしい

そして、君がもし
誰かを好きになったら
いつかどこかで、この虫たちを思い出してほしい

ヒトはいろいろ
ムシもいろいろ

それぞれみんな一つの命
それぞれみんな一つの心

目次
1:ダンベル虫
2:感化虫
3:風船虫
4:カンパリ虫
5:キッチン虫
6:ハタシテ虫


13:ダンベル虫

1 ダンベル虫

ダンベル虫には野心があった
それはいつの日にか鉄腕ダンベル虫になるのだという
そういう野心だった
もちろんそれを夢と呼んでもよいが
しかしダンベル虫が思うには
それを夢と言ってしまったのでは
彼がそれにかけている度外れた熱情のようなものが
うまく他人に伝わらないような気がするのだ

それに自分自身にとっても
夢と言うのと野心と言うのとでは
日々の鍛錬を行うときの心構えからして
明らかに違ってくるような気がするのだ

なにしろダンベル虫は
毎日毎日なんと18時間も
ダンベルを上げたり下ろしたりするのだ
そのへんの誰かがちょっと思いついて
それで出来るような
そんな生やさしいものではないのだ

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