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地震大国日本 - 本当に危険な場所と安全な場所とは?-100年間のデータを正確に分析してみた

皆さん、こんにちは。地震大国と呼ばれる日本ですが、実際のところ地域によって地震の発生頻度や危険度は大きく異なることをご存知でしょうか?今回は、100年の統計データ(1920年~2019年)を基に、日本の地震事情について深掘りしていきたいと思います。


1920~2019年までの県別地震発生回数と100km²当たりの発生件数

意外な事実:東京都と長野県の異常な地震発生数

まず、驚くべき事実からお伝えします。1920年から2019年までの統計を見ると、面積当たりの地震発生数が突出して多い地域があります。それが東京都と長野県なのです。

  • 長野県:1960年代に約6万3千回の地震を記録

  • 東京都:2000年代に約1万6千回の地震を記録

これらの数字がどれほど異常かというと、1920年代から1950年代の全国での地震発生数が1万3千回から1万8千回程度だったことを考えると、一目瞭然です。長野県に至っては、全国合計の4倍近い数を記録しているのです。

異常値の理由:群発地震と観測技術の進歩

では、なぜこれほどまでに異常な数値が出たのでしょうか?

長野県の場合:群発地震の影響

長野県で1960年代に記録された膨大な地震回数は、「群発地震」と呼ばれる現象が原因です。群発地震とは、比較的狭い範囲で短期間に多数の地震が発生する現象のことを指します。長野県では1960年代に松代群発地震(まつしろぐんぱつじしん)とよばれる世界的にも稀にみる5年間にわたる群発地震が続き、その結果、長野県の年代別の中央値の486.5回に対して62,951回という驚異的な数を記録したのです。

長野県の年代別地震の数

東京都の場合:離島での群発地震と観測技術の向上

東京都の場合は、2000年代の三宅島の火山活動による群発地震が大きく影響しています。また、2000年代のデータは阪神淡路大震災による改定による影響から、地震の検出数増加に寄与しています。

実は、離島での地震を除外して計算すると、東京都の地震発生数は大幅に減少し、100平方キロメートル当たりの発生数は232.6回となります。これは全国で5番目に高い値ではあるが、4位茨城県が294.7回でその下の神奈川県が202.1回となっていて、高い数字ではあるがそこまで異常な値とはいえないでしょう。

東京都の地震発生件数と離島が占める割合。1960年代からも上がってるが詳細は不明だが、1960年のチリ地震津波から日本でも遠地津波への対応体制が整備された事から、その動きに呼応した可能性がある。
各県での平均と標準偏差値から標準化して、その値を地方別に分けた。

本当に地震が多い地域とは?

では、実際に地震が多い地域はどこなのでしょうか?平均や適当な10年間をとっても誤差が大きいので、その対策として10年単位の年代別で見て、その中での中央値を取り出します。その中央値と面積当たりの地震発生数で見ると、以下のような順位になります:

各都道府県の10年単位で取った値の中央値で面積当たりで並べ替えた。なお、東京は離島分を除いていない。除いたら315.5回の100km²当たりで17.6回である。

地震が多い地域

100km²当たりでの地震発生回数が多い県

この順位を見ると、太平洋側の県や関東地方に地震が多い傾向があることがわかります。これには主に3つの理由があります:

1.プレートの境界線:これらの地域には、プレートの境界線が多く存在します。特に関東地方や東海地方の東付近には境界線の中でも特に多くの地震を誘発しやすい大陸プレートと海洋プレートの組み合わせがあるため地震が発生しやすい。

2.活断層の存在:多数の活断層が存在し、これらがプレート運動によって刺激されることで地震を引き起こしやすくなっています。

3.地盤の緩さ:特に沿岸部や関東地方では、地盤が緩い地域が多く、地震動が増幅されやすいです。地盤の緩さによって地震の影響が大きくなるため、被害が拡大することが多いです。

地震が少ない地域

一方で、地震が比較的少ない地域もあります。順に並べると以下のようになります:

100km²当たりでの地震発生回数が少ない県

北陸地方や中国地方が地震の少ない地域として挙げられていることがわかります。
 理由としては、日本海側から九州付近まではユーラシアプレートという大陸プレートのみしかないか他にあっても北アメリカプレートという大陸プレートとのしか接していないため地震が少ない傾向があります。

地震の回数と被害の関係

地震の発生回数と実際の被害には、強い相関関係があることがわかっています。東京都と長野県を除いた45都道府県で分析を行ったところ、地震の回数と震度5弱以上の地震発生には0.80台の相関係数が見られました。つまり、地震が多い地域ほど、大きな被害をもたらす強い地震も起こりやすい傾向にあるということです。

地震の発生件数と震度5以上の発生件数
回帰係数関連


予測値と残差

「安全な場所」を考える際の注意点

ここまでの情報を踏まえると、地震の少ない地域が安全だと結論付けたくなりますが、そう単純ではありません。地震に対する安全性を考える上で、以下の点に注意が必要です:

  1. 地盤の固さ:和歌山県は地震が多いが大きな地震は少ないです。ここは地盤が固い地域だからです。このように地盤が固い地域ならば地震が起きても大きな揺れにつながりにくいことがあります。

  2. 震源の深さ:浅い地震は震度を観測しやすいですが、必ずしも被害が大きいとは限りません。

  3. 過去の統計だけでは予測できない:熊本県や石川県のように、過去に地震が少なかった地域でも、突然大地震が起こる可能性があります。両者の場合は断層活動が影響を与えたためである。断層は全てを確認し切れているわけでは無くどの様に影響を及ぼすのかも詳しく分かっておりません。なので、過去の統計だけでは予測は出来ません。

まとめ

日本の地震事情は、一見単純そうで実は複雑です。地震の発生回数が多い地域が必ずしも危険とは限らず、逆に少ない地域が安全とも言い切れません。大切なのは、自分の住む地域の特性を理解し、適切な備えをすることです。

地震大国日本に住む私たちにとって、地震はいつでもどこでも起こりうるものだと認識し、日頃から防災意識を高めておくことが重要です。自然の力を完全に予測し制御することはできませんが、知識と備えがあれば、その影響を最小限に抑えることができるはずです。

皆さんも、この機会に自分の住む地域の地震リスクについて調べてみてはいかがでしょうか?知ることが、安全への第一歩となります。

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