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11G【イレブンジー】

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【仮想空間にサッカークラブを作る】 サッカーとテクノロジーが融合した新感覚のサッカー小説
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#大学

#7-3  初対面

#7-3  初対面

 20席ほど椅子が並んでいるが、中岡の言う通り、まだ誰もいない。拓真は窓側の前から2列目の席に腰を下ろした。学校の授業でも可能な限りこの場所を選ぶようにしている。感覚的ではあるが、話し手の様子と聞き手の反応が客観視できるように思えるからだった。

 開始の15分ほど前には、ポツポツと入出してくる人が増えた。どの人とも目が合って会釈はかわすが、互いに離れた席に座ることを選ぶ。受験の時みたいだな、拓真

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#7-2  合宿初日

#7-2  合宿初日

 金丸は、エレベーターの「閉」のあと、続けざまに「2」のボタンを押した。平沼の研究室がある本館からG館へは、2階で降りて渡り廊下を使う方が便利だ。G館の奥まで進み、階段を下りれば目的の場所はすぐ近くだからだ。

 扉が開き、金丸と中岡は、奥まで延びる長い廊下を進んだ。土曜日の午前中だからか、学生はまばらだ。何人かの学生とすれ違ったが、みんなスマホか音楽に夢中だ。金丸健二の存在に気付く者はいない。授

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#7-1  所有

#7-1  所有

 平沼は、手にした数冊の本をダンボール箱にしまった。以前は、自分の背丈よりも高いこの本棚いっぱいに、文献が敷き詰められていた。

 平沼は、2年ほど前に、すべてをデータ化することに決めた。文献に囲まれた部屋は権威や威光を示すことはできるかもしれないが、そんなものに興味はない。学生と素早くその一部を共有したり、論文の参考資料として持ち運ぶうえでも、データにしてしまうのが便利なのだ。ダンボールに詰めた

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