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no.32 発案 ― コミュニケート(アイディアの伝達)II

コンポーズ(構成)とコミュニケートの段階で必要な能力

発案/プレゼンテーションの2つの段階(コンポーズ&コミュニケート)で、プロデューサーが人間性に優れ、チームメンバーや利害関係者から信頼され、崇拝されていれば、それは理想的だ。しかし、そのような人はあまり多くない。よってそのような性格をプロデューサーに求めることは意味がない。
 
ここで申し上げておきたいのは、プレゼンテーションに必要な能力は、一般的に、基本的な教育を受け、物事を地に足を付けて考えることができさえすれば、誰にでも備わっているということだ。あなたは自信を持っていい。
 
パスカルは「人間は考える葦である」と言った。思考能力の根底にあるのは、人間特有の言語能力である。すべての動物は何らかの言語とコミュニケーション能力を持っているが、ユヴァル・ノア・ハラリが著書「サピエンス全史」(㊴)で述べているように、人間は約7万年から3万年前に「認知的能力(学習、記憶、意思疎通の能力)」と呼ばれる能力を発達させた。
 
この能力により、人間は基本的なニーズを相互に知らせるだけでなく、周りの世界に関する情報をも共有することができるのだ。これは、物語を語り、人々を信じ込ませるための言語スキルである。それはフィクション(嘘ではなく、可能な限り信じられるもの)を作成し、伝える力として説明されている。
この力によって、人間のグループ、組織、社会、国家が存在するようになった。言語能力とは、言葉を話すだけではなく、物語を作り、それを裏付ける証拠を示し、人々に信じてもらう能力である。この言語能力が発揮されたとき、サピエンスは途方もない力を手に入れた。そしてその力があるからこそ、目的や信念を共有し、さまざまなネットワークを作ることができるというのだ。
 
この人間特有の能力は、プロデューサーがアイデアを国際市場に提示したい場合、英語が必須の選択になるだろうが、日本市場に提示したい場合は日本語の能力である。そして、日本は江戸時代から識字率が著しく高く、今でも世界屈指のそれを誇っている。
 
一方、会社を退職して10年ほど大学で教鞭をとった結果、現在の大学生の語学力は50年前の中学生とほぼ同レベルであるように思った。語学力の低下が進み、社会にとって脅威となっている。教えた経験を経て、私は「日本人が自分のアイデアを提示できるように訓練する」ことの緊急性を感じている.
 
人間が持っていた古代の力を大切にする必要がある。
読解力と作文力を強化する必要があるのだ。可能であれば、古典文学と現代文学の傑作を読んでほしい。
頭の中の現実を創造する能力を活用するために努力する必要がある。テレビよりも新聞を近くに置き、レポートを書き、日記を書き、メールやSNSよりも手紙を書く。
 
もちろん、高い能力を維持できたとしても、最初にアイデアがなければならない。
そして、プレゼンテーションを準備する意欲がなかったり、アイデアの内容を組み立てる方法や、コミュニケーションの方法を知らないと、プロデュースはかなり困難だ。
 
23週目から31週目の間で提示したアイデアを自分なりに整理して、効果的なプレゼンテーションができるように準備しておいてほしい。
 
 
 
 
 
 
 
 
参考文献:
㊴: 「サピエンス全史・上・下」ユヴァル・ノア・ハラリ著(河出書房新社)