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no.29 発案 ― コンポーズ(構築)Ⅱ


さまざまな利害関係者への対応と目標設定

すでに説明したように、利害関係者にはそれぞれのWin:願望、そして解決すべき問題がある。
彼らにプロデュースのためのリソースを提供し続けてもらうためには、彼らにとってプラスになるストーリーを伝える必要がある。つまり、利害関係者が望んでいる何かをより明確な目標として述べる必要が出てくるわけだ。そして、それらを手に入れるための指針となる管理戦略は、彼らが理解できるストーリーで説明されるべきである。
イケアを例に挙げて説明しよう。
 

オリジナルな目的


善:優れた家具を手ごろな価格で供給。
 
真:高品質で機能的な北欧スタイルの家具や雑貨の大量生産とセルフショッピングシステム。
 
美:巨大なウエアハウス型ショールームと店舗。現代のライフスタイルにあった美しい家具や雑貨を低価格で提供する。それで、働くメンバーも社会貢献が実感できる。
 
Story : 社会の経済発展とともに生活(衣・食・住)を豊かにしようとする一般大衆に、高品質な家具や雑貨を低価格で提供。その仕組みを構築することで社会に貢献し、働くメンバーのモチベーションを高く保つ。
 
管理戦略をうまく実現するためには、どのように目標を設定する必要があるだろうか? 利害関係者に関する様々な目標をひとまとめにし、以下のような2~3の明確な目標として設定する必要がある。
ここでは最終的な戦略的目標に行き着くために、3つの角度:社会性、実質性、経済性、からそれらを検討。目標設定の詳細を示す。


社会性

目標の社会性とは、プロデュースがどのような顧客とその欲求に応えるのかを特定し、明らかにすることである。
 
イケアの場合、それは、「平等な社会」における「民主的な消費者」、地球上のさまざまな地域から戦略的に選ばれた大衆だ。この市場の選択が利害関係者の観点から妥当であることが重要だ。
 
優れた素材と時代に合ったデザインを用いて、選択された市場に低コストで機能性の高い家具や生活必需品を届けることを使命としている。
 
創業者カンプラードは、このターゲット セグメントの生活水準を向上させ、貢献と創造を結び付け、生活改善をテーマとする強力な推進力を持つストーリーを作成した。
 

実質性

ゴールの実質性とは、プロデューサーがそれぞれの市場で目指すことができるポジションを特定し、信頼できるデータに基づいて「結果の可能性」を示すことである。
 
元イケアCEO、アンダッシュ ダルヴィグは有能な幹部であり、イケアの店舗数を 130 から 270 に増やし、会社の売上高を 73 億ユーロから 213 億ユーロに増やした。 1999年にCEOに就任して間もなく、10年計画を発表。新戦略は「10年で10の取り組み(10/10)」と名付けられた。同社の長期ビジョン…… 「より快適な毎日を、より多くの人に」……は会社の各部門の短期経営計画と強く関係しているべきだ、彼はこの2つを結び付けたいと考えた。彼の10年計画の方向性を、戦略目標の発表から引用しよう。
 
イケアは成長しなければならない
私たちのビジョンは、より多くの人々の生活を改善することですが、これまでのところ、一部の人々だけが生活を改善しています。私たちはビジョンを実現し、新たな可能性を解き放ち、急速に変化するビジネス環境で競合他社の一歩先を行くために成長しなければなりません。
 
これまでの成長は、ビジネスの「広範で浅い」開発によって推進されてきました。 イケアは 29 か国に店舗を構えていますが、ほとんどの市場でのシェアは限られています。新しい段階に入った今、私たちはビジネスを深め、既存の市場に焦点を当てなければなりません。お客様との絆を深め、選ばれるお店を目指します。各市場で家具インテリア業界のトップ企業を目指します。
私たちの目標は、2010 年までにヨーロッパと北アメリカの既存市場で大きなシェアを獲得し、われわれのビジョンを認めてもらい、大多数の人々にとっての真にアクセスしやすい会社にすることです。できるだけ前に前に進むこと。
 
われわれはアジア・パシフィック地域で販売量の大幅な増加を維持し、10 年間 (既存店平均) 年間 10% の増加を維持せねばなりません。すでに進出している市場(中国、豪州、日本)でしっかりとした基盤を築き、黒字化することが大きな課題です。新しく重要な市場であるロシアにも同じことが言えます。
目標を達成するには、2010 年までに 100 店舗以上をオープンし、グループ全体の売上高を3倍にして 2,000 億 SEK 以上にする必要があるのです。 (㊱)
 
これらは実質性の良い例である。

経済性

経済的な目標とは、利益目標のことである。
 
アンダッシュ・ダルヴィグの声明の背後にある考え方では、IKEAには経済基盤の強化が必要であり、成長のための資金は自らの収益から調達する必要があると述べている。
10年後への飛躍的な成長に対応するためには、高い利益水準が求められる。イケアは増え続ける店舗、倉庫、工場に資金を提供する必要があるため、この 10 年間で営業利益率が売上高の 10% を下回らないようにすることが目標になった。
彼はこの数値目標を イケアの全従業員と共有した。それは単に売上を上げるだけでなく、コストを節約して利益を最大化することでもあったのだ。
 
プロデューサーは、視覚的なプレゼンテーションと信頼できるストーリーに要約して、人々が参加したいと思うような、理解しやすく好感の持てる目標を準備する必要がある。
 
 







 
参考文献:
㊱: 「IKEAモデル」アンダッシュ・ダルヴィッグ著(゙㈱集英社クリエイティブ)