見出し画像

no.34 実現 ― コーディネート(適応)

「コーディネート」の段階は、具体的な計画;プロデュースを実現するための実行戦略、を作成する段階だ。
 
「コーディネート」とは、パーツを組み合わせて調整し、全体として必要な調和を生み出すことだ。ファッションでは、モードや季節、シーンに合わせて、さまざまな衣服が機能的、視覚的に組み合わされている。色、質感、柄、型、サイズ、イメージなどに合わせて、パーツごとにコーディネートされる。
洋服だけでなく、バッグ、シューズ、アクセサリーまでトータルにコーディネートされるわけだ。
 
ビジネスにおいても、ノウハウ、時間、スペース、そして特に人的資源を調和させて目的を完遂することは偶然には起こらない。
 
コーディネートでは、プロデューサーは、必要な目標を1つずつ達成しながら、目的を達成するためのロードマップを描く必要がある。彼/彼女は詳細を計画しなければならないのだ。
 
コーディネートという言葉は、利害関係者の間を行き来してその関係を調整するというイメージがあるかもしれないが、それは特殊なケースだ。プロデュースの目的がしっかりと確立され、投資戦略、管理戦略、および利害関係者の Wins を考慮して目標が設定されている場合は、まず具体的な実行戦略を策定する。
 
ここで、その策定・企画の内容をいろいろな角度から説明していくが、その前に、今までの本文の流れとは少し異なるが、まずここでコーディネートに重要な能力について話させてほしい。
 


能力について コーディネートのための「集中力」


管理戦略;「どこで戦うか」、「どのように勝つか」に従って、さまざまな目標を達成するための実行戦略を作成する必要がある時、そのためにプロデューサーには「集中力」が必要になる。
 
計画を立てることは、プロデューサーだけではできないほど難しいことではない。しかし、ここでは、特定の期間または日数、この活動にフォーカス、集中する必要がある。データとロジックに基づいて、思考を繰り返す必要があるのだ。そして、慣れていない人にとっては、考えるのが苦痛になることもある。この痛みを乗り越えるには、強い情熱が必要であり、プロデューサーの執念が必須だ。
 
コーディネート、計画の作成は、数時間または数日かかる数学の問題を解くようなものだ。
著書「日本人の矜持」で、数学者・藤原正彦がタレントのビートたけしと、数学の天才・岡潔について語る場面がある。岡潔は歴史的な「世界三大数学問題」を自力で解いたが、その前に松尾芭蕉の俳句をすべて調べる必要があると言って、これらの歌を2年間 徹底的に研究した。その結果、岡潔は、問題解決に向けた独自の視点に自信を持ち、10年をかけてこの3大課題に挑むことができた。(㊶) 芭蕉研究の過程で、培われた彼の自信は間違いなく彼を助けたのだ。普段のプロデュースではそこまでする必要はないだろうが、それだけの熱意を持って計画に臨む必要はある。
また、プロデューサーが挑戦に対して楽観的であることも、集中力に加えて必要だ。達成は可能であり、難しくないと考えるべきなのだ。先ほど触れた著書の中で、藤原は数学者にふさわしい性格は粘り強さと楽観主義だと言っている。
 
現代は集中するのが難しい時代なのだろうか?
今日では、人間の思考を刺激するさまざまなデバイスに簡単にアクセスできることから、簡単に思考が分散してしまう。日常生活の中では、多くの企業が、衣食住や娯楽などのサービスや商品で人を惹きつけようとしているから、集中力を妨げる刺激が多すぎる。
消費するのに集中は必要はないが、しかし、計画を立て、リーダーシップを確立するためのコーディネートには、集中力が不可欠だ。
 
今日、多くの人々が消費に関心を持たざるを得なくなってしまっている。
プロデュースしたいと思っていても、多くの人は、コンポーズ、コミュニケート、またはコミットすることができない。もしこれらをしたとしても、集中できず、アイデアを実行する計画をあきらめてしまう。ほとんどの場合、これが現状ではないだろうか。
 
日本では「断捨離」が流行っているが、この「断捨離」とは、意識を乱す雑多な身の回りのものを排除し、シンプルな、生活に本当に必要なものだけで生活スタイルを整えることを意味する
このような生活スタイルは積極的な生活を多少なりとも保障してくれる。 「断捨離」やミニマリズムは、圧倒的な情報量と消耗品の現状を考えると、ある意味必要になるのかもしれない。
シンプルな生活は、重要なことを段階的に完了するための集中力を育ててくれるからだ。
 
1994年に公開され、アカデミー賞7部門にノミネートされた「ショーシャンクの空に」という映画がある。(㊷) 30年近く経った今でも、この映画は古さを感じさせない名作だ。
アンディ・デュフレーン;ある銀行の若い頭取がショーシャンク刑務所に送られた。彼は犯罪を犯していないにもかかわらず、刑務所に入れられる。裁判所は彼が妻と彼女のボーイフレンドを殺したとし、彼は無実を証明できなかったのだ。アンディ;刑務所に隔離された当初は、ひ弱な平凡なインテリだったが、受刑から3年後のある日、彼は刑務所職員のために相続税の納税問題を解決する…。
報酬として、彼は仲間の囚人のためにビールを獲得することができ、周囲の人々から徐々に尊敬と協力を勝ち得ていく。
しかし、刑務所の環境は過酷で、常に刑務所長から辱めを受けていたアンディは、それらにめげず「自由」をテーマに、さまざまな環境要因を統合した。このテーマに沿って、彼は計画し、仲間の囚人とのコラボレーションを作りあげる。
アンディのこれらの段階での集中力が、この映画を素晴らしいクライマックスへと導いていくのだ。


アーティストの集中力


音楽や絵画でも、それらを実現するには集中力が必要だ。 聴く人や見る人に感動を与える芸術では、 アーティストの集中力が、それを特別な高みへと導く。
集中力は、アーティストが想像力をどれだけ広げられるかを決めるのだ。
 
たとえば、マティスは、絵を描いたり塗ったりするのにあまり時間をかけなかったと言ったが、自分の仕事には集中していた。鑑賞者が経験したことも、知ることもなかった感情や気分を視覚的に表現するために、彼は集中してそれらに生命をあたえたのだ。(㊸)
 
このテキストの冒頭で述べたように、想像力はアイデア化に不可欠であり、想像力を最大限に広げるにも、プロデューサーの集中力が必要。
 
同じ資質が実現段階でのコーディネートにも必須になるのだ。
 


集中力を使って計画を立てる


コーディネート過程で目標を達成するためには、 二兎を追わないことを勧める。器用な人は、複数のプロデュースを進めようとするかもしれないが、実行計画の作成に関してはお勧めしない。最初に 1 つのプロジェクトの全体的な戦略作成を完了してから、次のプロジェクトに進む必要がある。集中力が切れるからである。
 
最後に、この集中力を何に使うかを再確認しよう。
目標を一つ一つクリアしながら、目的を達成するための実行戦略を策定していくために必要なのだ。
 
 


リーダーシップを取って戦略を実行するための調整


プロデュースを達成するには、さまざまなレベルでの多くのアクションが必要だ。
また、明確な目標と目的を達成する上で、これらの行動が互いに関連性を欠くように見える場合もある。それぞれのアクションが必要な結果を生み出し、全体的な目的を達成させるためには、プロデューサーがプロデュースを身近な全体として把握するための巨視的かつ全体的な視点を持つことが有効になる。
 
先ほど説明したように、最初は複雑かもしれない計画を人々が実行できる単純なアクションにするには、プロデューサーがこのロードマップを身近なものとして視覚化し把握しておくことをお勧めしたい。機能性をもったエンティティとしてプロデュースのイメージを作成すると、調整を成功させるのに役立つというわけだ。
あとはそのメカニズムをテストして、それが機能している場所と機能していない場所とを確認できる。
 
この全体的な視点を維持するには、プロデューサーの意識に、プロデュースの全体を使い慣れたフレームワークをもったモデルとしておくことが役立つ。
 
このモデルは、循環器系、筋肉、骨格、神経系など、さまざまな機能を持つ人間の体と考えてもよいだろう。または、種子が水、太陽、土、または空気の恵みによって発芽して成長する植物。あるいは、エンジン、シャシー、ハンドル、タイヤ、ブレーキ、アクセルなど、さまざまな部品で構成され、ガソリンを入れて発動し目的地に到着できる自動車。または、管楽器、弦楽器、打楽器等で構成されるオーケストラとピアノ等のソリストによる協奏曲、等々さまざまなモデルで説明できるだろう。